冷蔵庫の扉にくっ付けてあるブロック

この、冷蔵庫の扉にくっ付けてある2×3×2.4cmの小さな木製ブロックは何・・・?

正解は「パンスライサー」。
一枚目の画像で大体はわかるかもしれないが、正確に言うとパンをスライスする時に使う補助具で、自家製の立派なキッチングッズです…。

以前から我が家では、丸のままの食パンを好きな厚さにする時にはガイドなどは使わずにパン切り包丁だけでカットしていた。
集中してカットするとまあまあ平行にスライス出来るが、調子の悪い時は厚い部分と薄い部分が出来てしまい、たまにガッカリなことがある…。
まあ、自宅で消費する分なのでそれでも全然問題はないが。それでも時々スライス専用のパン切り機が欲しい時もあった。

ただ、電動の立派なものを買うほどでもないし、もしあったとしてもちょっと邪魔。
また、電動以外のパンスライサーでは、
「包丁がグラグラしないようにするためのガイド(直線の隙間)があってそこに包丁を差し込んでパンをスライスするタイプ」。そして、「パン切り包丁を横向きの水平状態にして、その高さをキープするため補助器具」なども市販はされているが、個人的にはキッチンにプラスチック製の道具が沢山あるというのはあまり好きではない。
我が家では、どうしてもそれしかないというものであるとか、そのデザインがシンプルであるとかだったらプラスチック製でも使っているが、出来る限り金属・木・ガラス・磁気・陶器などで作られたもので揃えるようにしているので…。

ということで、木で作ることにした。
作るのは、「パン切り包丁に取り付けて、刃の高さをキープしながらパンをスライスする方式」である補助器具タイプの簡易的なパンスライサーです。

市販の食パンの厚さの表

市販の食パンには、どのような厚さがあるのか?

まず、パンスライサーを作る前に、それで何枚切りのスライスが出来るかを決めておく。

現在流通している大手製パンメーカーの一般的な食パンでは、4枚切りから10枚切りまでがよく見られる。それぞれの1枚の厚さは、4枚切りが30㎜、5枚切りが24㎜、6枚切りが20㎜、8枚切りが15㎜、10枚切りが12㎜である。
ちなみにですが、3枚や12枚と書いた袋もあるけど、よく見ると○枚“切り”ではなく○枚“入り”ということが多い。

トーストした時に、もっちりと食べたい場合は4枚切りの30㎜で、そこから段々と薄くしていくにつれサクサク感はアップしていくので、そこは好みに合わせて…。
また、8枚切りや10枚切りのような薄い切り方では、カリカリに焼いてラスクに近いようなトーストにしても良いが、サンドイッチ用として使われることが多くなる。
なおサンドイッチ用でも、中の具材によっては6枚切りやさらに厚めのパンにした方が合う場合もある。そこは好みによってそれぞれ厚さを変えるのも楽しい。

今回は、この中でもトースト用としてよく使うであろう「4・5・6枚切り」の厚さにスライス出来るタイプのパンスライサーをまず作ることにする。
そして、使い勝手が良ければ「8・10枚切り」のタイプもあとから作る。
また、今回は木で作るのですが、下部には木以外で作る方法も記載してあります。


■収納も便利なパン切り包丁ガイド「4・5・6枚切り」用を作る。

まずは「4枚切り・5枚切り・6枚切り」と、3通りの厚さにスライス出来るタイプのパンスライサー(パン切り包丁ガイド)を作ります。
小さいので引き出しに入れても邪魔になりにくいし、磁石が付いているので冷蔵庫の表面に貼り付けておくことも出来て収納場所には困らない。

なお、このスライサーは磁石でくっ付けて使用するのでセラミック製などの磁石が付かない包丁では使えません。また、刃物用ステンレス鋼の場合はほぼ間違いなくくっ付くとは思いますが、使用している包丁が磁石に付くかどうかは確認したほうが良いかも…。ちなみに、我が家にあるステンレス製のパン切り包丁は3本ともすべてバッチリ付きました。

■材料
【木片】
【ネオジム磁石】
【接着剤】

【ネオジム磁石】径6mm程度の小さい磁石の場合は12個でワンセット。径12mm程度の多少大き目の磁石の場合は6個でワンセット。
今回は小さい磁石を使うので12個用意した。
磁石の形は平面が円形のものを使います。
【接着剤】は、出来るだけ「充填剤としても使えるエポキシ2液混合接着剤」を使う。もちろん金属と木がOKのタイプ。

■作り方


木で作った直方体が2個

.まず同じ直方体を2個作ります。

この直方体の3つの高さは、それぞれ食パンの4枚切り・5枚切り・6枚切りの厚さと同じにします。
食パンの4枚切りは30mm・5枚切りは24mm・6枚切りは20mmなので、30mm×24mm×20mmの木の直方体ブロックを作る。

※なお、このように木を加工することが難しい場合は、下部に「その他のアレンジ」として代替案も記載してありますのでご参考まで…。

直方体の寸法と穴の位置

.磁石取り付け用の穴を開けます。

6面の内の3面に磁石取り付け用の穴を開けます。
この時、穴を開けた裏面は絶対に穴を開けないようにする。3種類の大きさの面が2面ずつあるので、それぞれの大きさの面に対して1面のみに穴を開けることになります。

今回は、小さめの磁石を一面に2個取り付けることにしたので、一面に2カ所の穴を開けます。
ちなみに、大きめの磁石を使用して1面に1個だけの取り付けにしてもいいのですが、このあとで作る「8枚切り・10枚切り」用(ブロックの幅が狭い)のタイプとデザインを合わせるために小さい磁石を2個にしました。
ただそれだけけのことですので、ここは大きめの磁石を1個だけにしても別に良い…。
とにかく磁石のサイズと個数は、それぞれの面の中に入る範囲内でのお好みで…。
なお、同じ種類で同じ体積の磁石では、接地面の面積が広くなるほど吸着力は強くなります。なので、強力に吸着させたい場合は接地面の面積が大きいほど有利ではあります。

ちなみに、今回は小さい磁石(径6mm高さ3mm)を使いたかったので、前もって1面に1個のパターンと4個のパターンも作って磁力を試してみた…。
1個でも全然使えるがちょっと心もとない。4個の場合は確かに磁力は上がるが2個でもいいかなという感じ。
しかし、これは磁石の品質にもよるとおもう。
今回まったく同じものを2回に分けて購入したら、それらのロットによってあきらかに吸着力の強い弱いがあったので…。

磁石取り付け用の穴の断面図

磁石取り付け用の穴は…

平面が円形の磁石を使うので、ドリルを使って穴を開ける。穴の径は磁石と同じ大きさにする。これが1段目の穴。
今回は6mm径の磁石に対して、6mm径のドリルで穴を開けました。とにかく磁石がピッタリとおさまるようにする。ゆるいと次の工程で接着剤が漏れてしまうので…。
その深さは、磁石の厚さよりも0.1~0.2mmほど深め(例えば、磁石の厚さが3㎜の場合は3.1㎜~3.2mm程の深さ)です。
しかし、ついつい深く掘り過ぎてしまうこともあるとはおもう…。その時は使用する接着剤で補う。
詳しくは下記の工程4にて。

そしてその奥に2段目の穴を開ける。今回は3mm径のドリルで深さ5㎜にした(1段目の底から)
この2段目の穴は、接着剤の逃げ道(接着剤溜まり)となる。

穴を開けたあとの直方体

.角を面取り。

穴を開けたあと、すべての角は面取りしておいた。

穴に接着剤を入れて磁石をはめるイラスト

.穴に接着剤を入れて磁石をかるくはめる。

接着剤は程よい量を入れる。
もし、2段目の穴が満杯になるほど接着剤を入れると、磁石で押さえた時に内圧が強くなり過ぎて磁石が奥に入らなくなる。もしくは隙間から接着剤が漏れ出してくる。なので、入れ過ぎはNG。
程よい量だと、イラスト右側のように余分な接着剤が2段目の穴に押しまれても、磁石と木の外面がフラット(面一)になるように収めることが出来る。
もちろん少なすぎは磁石が取れやすくなるのでNG。

使用する接着剤は、出来るだけ「充填剤(パテ)としても使えるエポキシ2液混合タイプ」のものを使う。※粘土のようなエポキシパテとは違う。
それだと、固まったあと収縮しにくいので1段目の穴を深く掘り過ぎた場合にも最適です。
もし「成分が揮発もしくは蒸発して固まるタイプ」の接着剤を使用した場合、接着剤が固まると確実に収縮するので、1段目の穴が深すぎた場合には磁石が奥に引っ張られて吸着面が木の外側面よりも奥に入り込んでしまったり傾いてしまったりすることもあるので…。

ステンレス定規で2個同時に押し込む様子

.磁石を嵌めたあとは、鉄板などで押し込む。

穴に接着剤を入れて磁石をかるくはめたあとは、磁石を1個ずつ指で押し込むことはしないで、完全にフラットな硬い鉄板や磁石のくっつくステンレス板などで2個同時に押し込む。
この、フラットな鉄板や磁石のくっつくステンレス板で押し込むというのは、磁石がその板にピタッと吸着するので、2個の磁石の吸着面が同一面状でフラットであるのをキープ出来るから。
そして、磁石の吸着面が木の外面よりも奥に入らないようにするため。

今回は磁石のくっつくステンレスの定規を使って押し込みました。

はまり方がNGのイラスト

1個ずつ指で押さえると、2つの磁石の吸着面がフラットになりにくい。
例えば、強く押し過ぎて磁石の吸着面が木の面よりも奥にへこんでしまったり、逆に押さえるのが弱過ぎたり、また、磁石が傾いてしまうこともある。

そうなると、取り付けた時にガタガタしてしまったり、また、磁力が100%発揮出来なくもなる。

ステンレス定規で押し込んだ断面図

こうやって鉄板などを使って磁石を2個同時に押し込むことによって、2つの磁石の吸着面が同一面上でフラットになる。
さらには、磁石の吸着面と木の外面をつらいち(段差が無くフラット)にすることも出来る。
※これは、1つの面に大きい磁石を1個だけにした場合でも同じです…。

テンレスの定規に付けたまま放置しているところ

.鉄板などにくっつけたまま接着剤を硬化させる。

そのあと、接着剤が固まるまでステンレスの定規に付けたまま放置する。
これは、接着剤がまだ軟らかいうちに板を外してしまうと、その拍子に磁石が上下したり傾いたりするかもしれないのでそれを防止するため。
とにかく接着剤が硬化した時点で、2つの磁石の吸着面と木の外面が同一面状でつらいち(段差が無くフラット)であるようにするためです。
この時、上下からクランプでギュッと挟んで固定しておくとより完璧。
※磁石を1個だけにした場合でもここは同じ…。

3面あるので硬化させる時間が3倍になってしまうけど、あとで吸着させたときにガタガタするほうがストレスなのでそこは辛抱…。
ちなみにエポキシ2液混合タイプは固まるのがそこそこ早いものが多い。固まったかどうかは2液を混ぜた時の余った分を触ると大体わかる。

接着剤が固まって完成したところ

.接着剤が固まったら完成。

シミや汚れを付きにくくしたいときには、アマニ油やエゴマ油のような乾性油を使ってオイルフィニシュで仕上げておくといいかも…。
なお、画像はまだ無垢のままです。

磁石の部分で包丁にくっつけた様子

使い方は…

使い方は簡単。
まずこのブロック状のスライス補助具は2個でワンセット。そしてそれらが同じ高さになるようにして磁石の部分でパン切り包丁にくっつける。
1つは握り部ギリギリに、もう一つは先端辺りに。
その状態でまな板の上に置くと包丁が横方向で空に浮いていることとなる。そして、その状態でパンを切ることによって均一な厚さでスライス出来る。

画像上側のように一番低くして包丁に取り付けた場合、包丁とまな板の間が20mmとなるので6枚切りの厚さでスライス出来る。
そして、画像下側のように一番高くした場合は、間が30mmなので4枚切りとなる。
また、中間の高さでは24mmなので5枚切り。
このように、高さを使い分けることによって3通りの厚さのスライスパンが出来ることになる。
もちろんスポンジケーキのスライスにも使える。

刃を横にスライドさせている様子

なお切るときに、グリップの手前端を下げ過ぎると刃の先端側に付けたブロックが浮き上がってしまい、まな板と刃が平行でなくなってしまう。また、包丁のグリップ手前端を上に持ち上げ過ぎると刃が弓なりになってしまう。
なので、グリップを握る手には過剰に力を入れ過ぎないようにしながら刃を横にスライドさせる。

とにかく刃が水平でないと、磁石の吸着面が包丁の刃にピッタリと付かなくなってブロックがクルクルと回って外れそうになることもあるので、グリップは前後左右に常に平行であった方がよい。

また、包丁が片刃の場合、その刃の付き方によっては、下側に進もうとしたり(パンが段々と薄くなっていく)、上側に進もうとしたり(パンが段々と厚くなっていく)し易くなります。これは右利き(刃が左向き)か左利き(刃が右向き)かによっても変わります。

以上のように、多少は慣れる必要があるかもしれないけど、この補助具を使わない包丁だけの場合と比べると全然平行にスライス出来るはずです。

食パンがスライスされたところ

使い終わって包丁から取り外すときは、スライドさせて外すと包丁の表面にキズが付く恐れもあるので、ひねる(横に倒すようにして、てこの原理で吸着面を持ち上げる)ような感じにして外す。

そして使い終わったあとは、冷蔵庫の扉などにくっつけて収納しておくと、使いたいときにサッと取り出せて便利です。
その場合も、取り外すときはスライドさせないでひねるような感じにして外す。


8枚切り10枚切りタイプ

「8枚切り・10枚切り」タイプは…

上記で作ったものは主にトースト用。このタイプはサンドイッチ用に最適。特に12㎜の部分…。
15㎜の部分が8枚切りで、12㎜が10枚切りです。
もちろん両方ともトースト用としても使っても全然いい。ラスクのようなカリカリパンが好きな場合にはピッタリ。

作り方は上記で作ったものとほぼ同じです。
違うのはそれぞれのサイズ。そして、上記は3面に磁石をはめるけど、こちらは2面だけ…。
15㎜の高さと12㎜の高さがある直方体を2つ作り、図面のように穴を開けてそこに磁石を嵌め込む。
そして、使い方も上記と同様です。


■その他のアレンジ

丸棒を輪切りにして作ったパンスライサー

これは、径30mmの丸棒を任意の高さで輪切りにし、その上下の周囲の角を面取りしたあと、2面ある平面の内の1面に穴を開けてそこに接着剤をさして磁石をはめたものです。
ここでの磁石は、上記で使ったものよりも大きめのサイズのものを1個だけにしてあります。
また、これは丸棒をカットしてあるので平面は円形になるけど、角棒をカットして平面を正方形にするのもいいとおもう…。

磁石の付け方と、完成したものの使い方は上記とほぼ同じです…。
ただし、1セットの厚さはそれぞれ1つに決まっているので沢山の種類が欲しいときは、その種類の数だけ作る必要がある。
なので、よく使う厚さの分だけを作ると良い。
この画像のそれぞれのセットは、30mm・24mm・20mm・12mmの高さに加工…。つまり、4枚切り・5枚切り・6枚切り・10枚切りの厚さにスライス出来ようにするための4セット。
よく使う厚さのトースト用とサンドイッチ用です。8枚切りは作るのを忘れた…。

なお、磁石がはめられている面の裏面には、数字の30・24・20・12。もしくは、4・5・6・10のように、それぞれの厚さや切り枚数などをスタンプや刻印または焼き印などでしるしておけば、パッと見てわかりやすいので使い易いはず。

なお、上記までのような木の加工が難しい場合は…

以上は木を加工して作るタイプでしたが、それ以外の材料でも作れないことはない。
例えば、エポキシパテのような「硬化するとプラスチックのようになる粘土状の樹脂」で好きな形を作るのもありかもしれない…。
エポキシパテは、ホームセンターなどで普通に販売されている。ひょっとしたら100均にも…。
さらにエポキシパテの場合は、ドリルでの穴あけ作業はせずに、パテが軟らかいうちに直接磁石を押し込むだけでもいいかも…。

シートを重ねて立体にする

また、このイラストのように、任意の形状にカットしたそこそこ厚目のシートを重ねて貼り合わせながら立体にするのもありかもしれない…。
磁石をはめる部分は、それぞれを重ねる前に、磁石が入る分だけ1枚1枚“穴あけポンチ”で開ける。そうすればドリルでの穴あけ作業はいらない。
そして重ねたあとの側面の仕上げはサンドペーパーなどに当てて削るとフラットな面になる…。
使用するシートとしては、例えばそこそこ厚目のボール紙やレザー(革)・ビニールシートなど…。その他にも何かポンチで穴を開けることが可能なものがあればそれで…。
そして、それぞれの材質に合わせて、糊や接着剤を使って貼り合わせていけばいいと思う。
磁石の付け方は、上記の工程4・5・6のように…。

ただ、この作り方の場合は上記の丸いタイプと同じように、4枚切り・5枚切り・6枚切り・・・などと欲しい高さの分だけ作る必要がある。

なお以上では磁石を穴に埋め込ませるというのが前提となっていますが、その磁石を埋めるための穴は無理に開けないで、任意の高さの物に接着剤などでそのまま貼り付け、磁石をとび出したままにいておいても別にいい。
とにかく同じ高さのものが2つ用意出来れば目的は達成出来るので…。
ただその場合、完成度が多少低く見えてしまうし、磁石がむき出しになるので吸着物にキズが付きやすくはなるかもしれない…。


以上、食パンをカットする時のガイドである「簡易パンスライサー(スライス補助具)」を作りました。

とにかく、本体と磁石が確実に接着剤で固定されていること。ここは重要。
磁石を嵌める穴を磁石と丁度同じ径で開けた場合は、簡単に取れないくらいピタッと嵌ります。
しかし、ピタッと嵌るからといって接着剤を使わないで嵌め殺しのままだといつか外れるので接着剤は必ず塗ること。しかも磁石の裏面全体と穴の奥全体に確実に付くようにすることが大事です…。
小さい磁石なので無くなったら探すのが大変だし、もし食べ物に混入すると危ないので…。

あと完成した後に使用する時は、たとえ接着剤で付けたとしても使用中もしくは使用後は磁石がちゃんとついているか必ず確認する。

磁石の取れるのが心配な場合はネジで留めれるタイプの磁石(中心に丸形皿ねじ穴が開いているタイプ)を使い、さらに接着剤と併用すると確実性は高まる。その場合、磁石は大きいモノになるが、そのように作れば良い。


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