前回は簡易的な卓上手織り機を2種類作りましたが、今回はその手織り機を使って簡単なコースターと長尺物であるマフラーを織ります。
2つとも基本的な平織(ひらおり)で、織り方は一般的な卓上織り機とほぼ同じです。
使用する手織り機は「綜絖(そうこう)」という装置が無い簡易的なタイプで、「杼(ひ)」や「織り針」などの道具を“なみ縫い”するときのように動かしながらタテ糸一本一本を上下交互に広げてゆき、その上下に広げたタテ糸の間にヨコ糸を通していくといものです。
なお今回、長尺物であるマフラーを織り進めるときには、綜絖の代わりに「糸の持ち上げバー」を使用するので、すべてを“なみ縫い”のようにして織るよりも多少は楽です。
※「綜絖(そうこう)」とは、タテ(経)糸を交互に上下に開いてヨコ(緯)糸を通すための隙間をつくる装置で「ヘルド」ともいう。
※「杼(ひ)」とは、タテ糸の間にヨコ糸を通す道具で「シャトル」ともいう。
●今回使用する「手織り機」の作り方は…
簡易的な「卓上手織り機」を“2種類”手作りする
のページにて紹介。
■まずは、基本的な織り方でコースターを作る。
使用するのは、“糸掛け”があるだけのすごく単純な構造の「卓上手織り機」です。
1.織り機にタテ糸を張って、そこにヨコ糸を織り込ませてゆく。
まず最初に、織り機にタテ糸を張ります。
そして、ヨコ糸を取り付けた織り針を用いて、“なみ縫い”のようにしながらタテ糸を一本一本交互に上下に広げ、そこにヨコ糸を織り込ませてゆきます。
なお、ヨコ糸は長すぎると扱いにくいし、短すぎるとつなぎ目が多くなる。今回は3メートルにカットした。
ちなみにスタート地点には、下記のマフラーを織る項目の工程5にて説明するようなヨコ糸のズレ防止を施しておいてもよい。そうすると作業がしやすくはなる。
2.まずは、後ろの端を3~4cmほど外に残してヨコ糸を織り込みます。
3.残した糸の端の始末をします。
残したヨコ糸の端の始末はイラストの通りで、タテ糸の進行方向側に織り込みます。
4.ヨコ糸を織り進めてゆきます。
タテ糸に通したあとのヨコ糸は山なりにします。
そして、山なり状態のヨコ糸を“くし”を使ってトントンと詰めてゆきます。
この時、ピンピンに引っ張ってから“くし”でトントンと詰めると、織り進めてゆくにつれて布の幅が段々と狭くなっていきます。
ですので、ヨコ糸は必ず“山なり状態”もしくは“ユルユル状態”でトントンする。
このように、くしを使ってトントンと詰める。
なお、綿や毛の場合、洗濯したら糸が縮んで目が詰まるのであまりカチカチに詰め過ぎる必要もない。
但し、弱過ぎないように…。
5.織り終わったら、糸の端の始末をします。
●ヨコ糸の織り終わりは、3~4cmほどタテ糸に織り込ませてからカットする。
●タテ糸の上下の端は、まず房(フリンジ)の長さを決め、その長さよりも少し長めにカットする。
6.タテ糸の端を結んで房(フリンジ)を作ったら完成。
タテ糸の端を数本まとめて結び、端をカットして長さを揃えたら完成です。
■(応用)途中で糸をつなぐ場合と、色を変える場合。
途中で糸をつなぐ場合。
赤い部分が先に織り込んだ糸の終わり部分で、黄色い部分が新しくつないだ糸の始まり部分です。
イラストのようにほんの少しだけ重ね、そのあと普通に織り始めます。
途中で糸の色を変える場合。
先の色の糸は、上記で織った時と同じように終わらせて。
次の色の糸は、上記の織り始めと同じように織り始めます。
■次は、長尺物であるマフラーを織る。
使用する織り機は、前後に設置された「糸掛けを兼ねた巻き取り棒」がクルクルと回り、そしてネジで締めると固定出来るタイプです。
なお、織り機の使い方は多少異なりますが、布の織り方は上記と同じです。
1.まず、2ヶ所ある内のどちらか一方の“巻き取り棒(糸掛け)”を取り外す。
2.本体、そして巻き取り棒(糸掛け)をテーブルに固定する。
まず、本体とテーブルをクランプで固定する。
次に、取り外したほうの“巻き取り棒(糸掛け)”を、織る物の長さの分だけ離した所に置き、クランプでテーブルに留める。
そのあと、2ヶ所の“巻き取り棒(糸掛け)”に糸を掛ける。
今回はタテ糸の長さを165cmにしました。
タテ糸を掛ける方法はイラストの通りです。
まず最初に、糸の端に輪っかを作りその輪っかを糸掛けにひっかけます。
それから、2つの糸掛けに交互にひっかけてゆきます。
なお糸を掛けるときは、すべて同じテンションでピンピンな状態にして掛けます。
3.タテ糸を掛け終えたら、巻き取り棒にそのタテ糸を巻いてゆきます。
まず巻き取る前には、巻き取り棒を正面から手で持ってキュキュと数回引っ張り、すべての糸のテンションを均一にします。
そして、巻き取るときには、糸掛け部分の溝にタテ糸が入り込まないようにするため、紙や布などを挟んで巻いてゆきます。
なお、タテ糸が長い場合は、所々で紙や布などを挟みながら巻いていくと糸は安定します。
4.巻き終えたら、本体の枠に巻き取り棒をセットします。
作業しやすいように、織り機とテーブルはクランプで固定したままにしておきました。
5.ヨコ糸のズレ防止を施しておきます。
スタート地点の手前に薄い帯状のシートを数枚織り込んでおくと、タテ糸の間隔を均一にすることが出来ます。
さらに、織り始めの時点では、くしでトントンと詰めた時のヨコ糸のズレ防止にもなります。
なおここは、“捨て織り”でもいいが、今回は面倒なのでその代わりに画像のような帯状のシートを織り込んでおいた。
※捨て織りとは、織り終えた布を織り機から取り外す時などに、端の部分を解けにくくする為の手段であって、要らない糸で2~3cmほど織り込んでおくこと。これもヨコ糸のズレ防止となります。
なお捨て織りの場合は、巻き取り棒に巻き取っていくが、今回、巻き取っていく時に帯状シートは外しておいた。
ちなみに、巻き取り棒と同じ長さにして一緒に巻き取っても良い。
6.織り針や杼(ひ)を使ってヨコ糸を通していきます。
今回は長尺物であるマフラーを織るので長いヨコ糸が必要です。なので主に杼(ひ)を使いました。
杼(ひ)の場合、その両側に8の字状に糸を巻くと高さを抑えて沢山巻くことが出来ます。
なお、所々で入れるアクセントカラーの部分は、距離が短かければ、杼を使わずに織り針を使います。
※画像右が杼(ひ)。これはシャトルとも言う。
7.“糸の持ち上げバー”を使ってヨコ糸を通していくと楽です。
まずは“糸の持ち上げバー”を、タテ糸に交互に織り込むように差し込んで設置する。設置する場所は奥のほう…。なおこれは、最後まで差しっ放しにしておく。
そしてヨコ糸を通すときは…
●左側画像のように“糸の持ち上げバー”を立てた状態の時には、上下に開いたタテ糸の隙間に杼(ひ)や織り針をサーッと通す。
●右側画像のように寝かせた状態の時には、複数本のタテ糸一本一本の間を“なみ縫い”のようにして杼(ひ)や織り針を通していく。
この二つの作業をを交互に繰り返しながら織り進めていくことになる。
今回使用する織り機には「綜絖」が装備されていないので、基本的には“なみ縫い”のようにしてタテ糸を上下に広げながらヨコ糸を織り込ませてゆくこととなりますが、さすがに右左両側からなみ縫いのようにするのはきついので、せめて片方だけでも「綜絖」付きの織り機のように杼(ひ)をサーッと入れれるようにするため“糸の持ち上げバー”を設置しておこうということです。
なお、利き手が右の場合、右側からは針や杼(ひ)でなみ縫いのようにして織り込ませ、左側からは「綜絖」付きの織り機の場合と同じように針や杼(ひ)をサーッと入れるだけにするとやりやすいかも…。
ちなみに、“糸の持ち上げバー”を2本使用する方法もある。
その場合の使い方は…
まず基本的に、1本目は上記と同じように最後まで設置したままにしておく。
●そして、2本目は先を薄くしたものを用意し、それを左側画像のように“なみ縫い”みたいな感じでタテ糸に差し込んでいく。
●すべて通したら、右側画像のようにクルンと立てて隙間を作り、杼(ひ)や織り針をサーッと通す。
そしてこの2本目の持ち上げバーはヨコ糸を通した後には抜きとります。
●そのあと、設置したままの1本目の持ち上げバーをクルンと立てて杼(ひ)や織り針をサーッと通します。(とにかく1本目は最後まで抜かない。)
これらの作業を交互に繰り返して織り進めます。
この“糸の持ち上げバー”を2本使用する方法は、杼(ひ)に沢山の糸を巻いて結構太くなってしまった時に向いています。
とにかく、“糸の持ち上げバー”を使用すると、一方からはちょっと面倒だけど、もう一方からは楽に糸を通せるようになります。
「綜絖」付きの織り機よりも不便ではあるけど、全部なみ縫いのようにするよりは圧倒的に楽です。
8.あとはだだひたすら織り進めてゆきます。
平織での織り方と糸の始末の方法は、上記のコースターの場合と同じなのでそちらを参考に…。
なお、ここでは長尺物のマフラーを作るので、それ用の機能も使います。
●まず、ある程度の距離を織り進めたら、巻き取り棒を固定している蝶ネジを緩め(前後2本とも)、織った分を手前の巻き取り棒(画像では左側)に巻き付けてゆく。
●ある程度巻き付けたら蝶ネジを締めて巻き取り棒を固定し、再度織り始める。この時タテ糸のテンション(張り具合)はピンピンにしておく。
この繰り返しで長尺物を仕上げていく。
以上で織り終わり。
画像のように左側の巻き取り棒には、織った部分の大半が巻きとられています。
今回は普通の太さの糸を使用しているし、タテ糸の全長を165cmにしたのでそこそこ小さいロールになっていますが、もっと太い糸を使ってもっと長くするともっと太いロールになっていく。
9.織り機から外して、房(フリンジ)を作ったら完成。
今回は、タテ糸を3本ずつ結んで房(フリンジ)を作りました。
そして、端をカットして揃えたら完成です。
■織物の幅が段々と細くなっていく原因と対処法は…。
ちなみに、織り進んでいくと布の幅が段々と細くなっていくことがあります。
その原因としては…。
●タテ糸のテンション(張り具合)が弱い。
●ヨコ糸を“くし”を使ってトントンと詰める前に、そのヨコ糸を“山なり状態”もしくは“ユルユル状態”にしなかった。
※上記コースターの項の工程4にて説明。
●ヨコ糸を引っ張り過ぎ。布の両サイドをキレイにしようとし過ぎると、ついつい引っ張り過ぎになってしまいがちです。
●糸の太さに対してタテ糸の間隔が広すぎると、段々と詰まってくる。
などが考えられます。
また、糸の種類によってはこの現象が出にくかったり出やすかったりします。ヨコ糸が柔らかいと出にくいし伸びやすいヨコ糸でも出にくいです。
とにかくヨコ糸を、タテ糸の上下に“余裕を持たせてウエーブさせる”と細くなりにくくなります。
対処法としては…。
●まず、上記の条件を確認する。
●始めから狭くなる前提でサイズを考える。
●そもそも気にしない。手作りの味だと思う。
また、同じテンションで織っているのにもかかわらず段々と狭くなっていく場合は、織り機から外したとたんに広い部分が縮まって、けっこう平行に(細い部分の幅で)なるものである。
とにかく作業途中は気になるかもしれないが、実はそこそこうまくいってるという場合もある。
以上、簡易的な卓上手織り機を使って、簡単なコースターと長尺物であるマフラーを織る方法でした。