料理のスパイスとして毎日使ったとしても、永遠に無くならないくらいに次々と伸びてくる庭のローズマリー…。

庭に生えているローズマリー

そのまま伸ばし放題にしておくと体裁も悪くなるので年に1~2回はサッパリと剪定しているが、その時に出る大量の枝や葉はもったいないとは思いながらもほとんどは捨ててしまっている。
なお、剪定した分はドライにして瓶詰め保存しておいたり、ハーブスワッグとして飾ることなどもあるが、それでもほんの一部。とにかく5本も植えてあるので剪定した時に出てくる量は半端ではない…。
調子に乗ってちょっと植え過ぎたかもしれない…。

そこで、これらの捨てている分を活かす方法はないかと考えたところ、精油(エッセンシャルオイル)だったら…ということで、水蒸気蒸留法を用いて抽出してみることにした。

一般的な水蒸気蒸留法は、蒸気を発生させる装置とその蒸気を冷却させる装置とが別々になっている場合が多いが、今回は鍋一つだけでその両方の機能をもたせる簡易的な方法を試してみる。

品種や蒸留する状況によって変わってくるとは思うが、ローズマリーの場合、独立した冷却装置を備える一般的な蒸留システムを用いると、100gあたりからどうやら0.8ml前後の精油が取れるらしい。
ということで、以下の方法でもそれくらい採れてくれればラッキーなのだが…。
まあ、色々と効率が悪くなるのでおそらく無理だとは思うが、物は試しです。


■精油とハーブウオーターを「鍋一つ」で抽出する簡易的な方法。

茎から葉をそぎ取っている
■原料

【ローズマリー】… 400g
【水】… 1500㏄(状況によって異なる)

精油の蓄えられている部位は「花・葉・根・茎・果実・果皮・樹皮・種子・樹脂」などと、植物によって異なるようである。
【ローズマリー】の場合は「花・葉・茎」から抽出されるらしいので茎ごと原料として使ってもいいのですが、今回は茎から葉をこそげ落としてその葉だけを使うことにした。理由は、なんとなくです。
【水】の量はその状況によって異なるはず。
今回は、事前に本番と同じ状況で1時間の加熱テストをし、その水の減り具合を確認した上で最初に入れる水の量を決めました。とにかく空焚きになってしまわないような量は必要。
上記の決めた量は、鍋の中の水が絶対に空にならず、かといって多過ぎでもない、蒸留の終了時には鍋底に2~3cm程度残る量です。この量は、使用する鍋やコンロなどによっても変わるはず。

使用する主な道具
■使用する主な道具

【深鍋】
【オイルセパレーター】
【三脚台】
【脚付き網】
【漏斗】

【オイルセパレーター】は自作で、加工したガラス瓶とビーカーとを組み合わせたものです。これを作った時の様子は次回にでも…。
【漏斗】の作り方は、このページ下部の「円錐形の漏斗を作る」にて。

蒸留する際のセッティングの図

蒸留する際のセッティング。

●各道具は、鍋の中央部分にイラスト(断面図)のような感じで配置します。
●鍋蓋は逆さまにして、下側にたわんでいる状態で置いてあります。

各部の役割としては、鍋の下部は蒸気発生部。鍋蓋は冷却部。オイルセパレーターは精油とハーブウオーターを受けて分離させる装置となる。

なお、本来はもっと深さのある鍋を使用し、底に置いてある「脚付き網」の天面の位置はもっと高く、さらにその面積も広くして、鍋の中に入れるハーブが水に浸からないような状況を作って蒸気だけでハーブを加熱したかったのですが、今回のセッティングでは、鍋の下あたりに位置するハーブは水に浸かってしまいます。
でも、水蒸気蒸留法を調べると「植物を蒸気または水で加熱」とあったし「煮出し蒸留」と言う言葉もあったので今回はOKとしておく。

■精油の抽出方法


鍋の中に配置したオイルセパレーターなど

.鍋の中にオイルセパレーターなどを設置。

まず、鍋の中に【脚付き網】【三脚台】【オイルセパレーター】を設置します。
【脚付き網】を底に敷いたのは、中に入れるローズマリーを鍋底から少しでも浮かせておくためです。また、底の平たいビーカー(オイルセパレーター)を直接鍋底に置いてしまうと、お湯が沸いた時の泡でビーカーが踊ってしまうかもしれないので、その防止のためでもある。

鍋に水を入れている

.鍋に水を入れる。

鍋に、水もしくはお湯を入れます。
その入れる量は、少な過ぎて空焚きにならないように、ある程度余裕があるくらい。
かと言って、あまり入れ過ぎない。入れ過ぎるとビーカーが浮かんでしまいます。今回は前もってテストをし、最適な量を探しておいた。
※とにかく、加熱中の鍋の中には常に水(お湯)が入っていることは絶対。空焚き状態になるのはNG。

ローズマリーの葉が隙間なく詰め込んである

.ローズマリーの葉を入れる。

オイルセパレーターの周りにローズマリーの葉を隙間なく詰め込みます。

漏斗を設置したところ

.漏斗を設置する。

今回は手作りの漏斗を使います。

逆さまにした蓋の下に鍋

.鍋蓋を逆さまにして閉じる。

下側にたわんでいる状態となるように、逆さまにした状態で鍋蓋を置きます。

こうすると、鍋蓋本来の上面が下側(内側)になりますが、その内側で蒸留水が出来るので、この面は特にキレイに洗っておく。

蓋を閉じた様子

蓋を設置した状態。
この鍋蓋が蒸気の冷却装置となります。

鍋蓋をヘアバンドで固定

.鍋蓋のズレ防止をする。

今回使用する鍋蓋は、裏返して置くと勘合部分が無くなり、不安定な状態でただ載せてあるだけになってしまいます。なのでちょっとしたはずみでもズレてしまいます。
という訳で、横ズレ防止目的のヘアバンドを巻いて固定しておきました。

なお、ヘアバンドはすき間だらけの布地なので多少の蒸気は絶対に漏れ出るはずです。でもここはあえて漏らしておくことも大事。
このヘアバンドはあくまでも蓋の横ズレ防止で、完全にシールをして圧力鍋のようにするためのものではあません。
漏れるのがもったいないからといって完全にシールしてしまったら気圧が高くなって危ないです…。

ただ、蒸気と一緒に精油も漏らしているかもしれない…。でもそれはしかたがない…。

とろ火の様子

.とろ火で加熱。

鍋蓋の上のポリ袋に入った氷

.加熱中は鍋蓋を氷で冷却。

加熱中は氷で鍋蓋を冷却し続けます。
今回は画像のようにポリ袋に氷を入れ、それを鍋蓋の上にずっと載せておいた。
こうすることで、鍋の下のほうから上昇してきた蒸気が、冷却された鍋蓋の下面で結露し、そこでさらに大きなしずくに成長して漏斗の上に落下します。

※ちなみにこの本番前には、蒸気の発生中に鍋蓋を冷却しない(氷を置かない)とどうなるかの実験もしてみました。
結果的には、中心に置いたオイルセパレーターには蒸留水がほとんど溜まっていなかった。
加熱中は、目で見えるくらいの蒸気が蓋の隙間から大量に漏れ出ていて、1時間の加熱のあとに中を確認すると、オイルセパレーターの底に溜まっていた蒸留水は22㏄だけでした。

今回の加熱は1時間。

なおこの加熱している1時間のあいだは、氷が溶けて出来た水をコップで少しづつすくって捨てながら、その分の氷をせっせと追加し続けました。
ちなみに、この1時間という長さはあくまでも雰囲気で決めました。最適な時間なのかどうかは何度か試してみないと分かりません。

消火後はしばらく放置。

1時間の加熱が終わって火を消したあとは、さらに1時間ほど蓋を閉めたまま放置しておきました。とくに深い意味はありません。なんとなくです。
なお、この冷ましている間も最初の頃は湯気(蒸気)は上がっているので蓋の冷却はしておいた。
また、しばらく放置する別の理由としては、火を消してすぐだと、中の道具や蒸留水の入ったビーカーは熱々なので、急いで取り出してそれで火傷しても嫌なので安全の為でもある。

オイルセパレーター内に溜まった芳香蒸留水

蓋をオープン。

オイルセパレーター内は芳香蒸留水(ハーブウォーター)で満水です。
※このあとも、すぐには取り出さずに蓋を開けたまましばらく空冷させました。

横から見た精油の層の様子

ある程度冷めたことを確認し、鍋の中からオイルセパレーターを取り出しました。

画像のように、そこそこな量の精油が溜まっています。厚さ8~9mmくらいはあるでしょうか。
※精油は水よりも軽いので上部に溜まります。

スポイドとガラス瓶とオイルセパレーター

精油の取り出しにはスポイドを使用します。

スポイドで精油を吸い取るようす

精油を取り出すときは、オイルセパレーターの筒上部からスポイドを挿し込んで、上部に溜まった精油の層を吸い取ります。
なお精油と水の境目まで吸い取ろうとすると、絶対に下の水も混ざってしまうので、ギリギリ最後部分の精油はほぼ諦めました。

ちなみに、ギリギリ部分の精油も取り出そうと思えば出来ないでもない。
その方法は、まず最終的なギリギリの部分の精油を下の水ごと吸い取る。そうするとスポイドの中で自然と分離するので、その下の層の水の部分だけをピュッと吐き出せば、スポイドの中に残るのは精油だけとなる。
でもそれが限界で、最後の最後のスポイドから吐き出した微妙な量は諦めるしかない。
なお、条件によっては、オイルの部分に水分が玉状になって入り込んでしまい、うまく分離できない場合もある。

ガラス瓶の中の精油

今回採取出来た精油は1㏄強ほどでした。
ローズマリー400gから取れる量にしては少ないとは思うが、取れたのはよかった。
なお、もうちょっと加熱時間が長ければもっと取れたのか、それともこの量が今回の方法の限界なのかは今のところ分からない。


■上記の方法での反省点。

今回は、上記の作業中に漏斗の中心とオイルセパレーターの中心とがズレることは偶然なかったけど、もし万が一ズレていたとしたらその作業はすべてがパーで、オイルセパレーターには精油が溜まりません。
そうならないようにするために「少しだけ下に長い漏斗を作る」か「三脚台の脚を短くカットする」か「オイルセパレーターの下に敷いている網を高くする」などのいずれかで、漏斗の先部をオイルセパレーターの口に置ける(挿せる)状況を作り、絶対にズレないような状態にしておけばよかった。そこは反省点。

横から見た漏斗とオイルセパレーター

なお、せっかくここまで用意したので次回もこのまま使うと思うが、でもその時は、オイルセパレーターの筒が多少横ずれしたとしても漏斗から落ちる水滴をしっかりとキャッチ出来るようにするため、画像のような超小さい漏斗をオイルセパレーター筒部の上に設置して(挿して)おくつもり。


■円錐形の漏斗を作る。

丸くカットしたPPシート

まず、漏斗の材料であるシートは、耐熱120℃のPP製を使用。
当初は、耐熱温度が高いアルミやステンレスなどの薄い金属板で作ろうかとも思ったけど、PPシートのほうが圧倒的に作業が簡単だったので試しに作ってみた。
本当は張りの有るシリコンシートなどがあれば良かったが、あくまでもテスト的なものなので…。

なお、このPP製の漏斗を使用する際は、鍋の中が100℃を超えないように蒸留中(加熱中)は常に水(お湯)が入っていることは絶対。とにかく空焚きはNGです。

円錐形になった様子

円錐形にする方法。

●切り目の前後を重ね合わせる。
●任意のところに穴を開ける。
●その穴にカシメを通して留めておく。


■上記以外の方法も。

今回の主な目的は精油を採取することなので上記ではオイルセパレーターを設置しましたが、ハーブウォーターだけしか要らないのであればオイルセパレーターのところは単なる容器でもOK。
また、上記のような三脚台は使わず、ビーカーの上部に漏斗を置くだけでもOK。

市販の漏斗とビーカー

ちなみに、画像左側のような「ビーカーに市販の漏斗をただ挿してあるだけのもの」でも、漏斗の中に精油は溜まるので、原理的にはオイルセパレーターにはなります。
だだ画像のように、ビーカーの高さよりも漏斗の筒部分が短い場合だと、その筒部分の下はガラ空き状態になるので何割かの精油は採り損ねてしまう…。
ただ、ハーブウォーターの濃度が薄まってもいいのであれば、漏斗(筒部分)の先よりも上の位置(穴を覆う位置)にまであらかじめ水を入れておくと良い。そうすると漏斗の先から精油が漏れ出ることはなくなるので、精油の採取率は高くなって何割かの精油を取り損ねることは少なくなる。

なお、精油の抽出率を高くし、そのうえ“濃いハーブウォーター”も獲得したいというのであれば、画像右側のように、漏斗の筒部分にシリコンチューブなどをしっかりと嵌め、そのチューブの下部をビーカーの底ギリギリとなるようにしておけば両方とも獲得可能なオイルセパレーターにはなる。※その際は、チューブ下部とビーカー底面は密着しないように(水が少しずつ漏れるように)しておく。

また、いずれの場合も漏斗は透明であること、さらには耐熱温度120℃は欲しい。
そして、ビーカーの上部には水の逃げ道は必要である。この画像の組み合わせではビーカーの注ぎ口が水の逃げ道に相当する。

もとより、道具を用意するという点では、この「ビーカーと漏斗だけを使う方法」のほうが「今回上記で行った色々な道具を使用する方法」よりも手軽である。しかも、漏斗自体がオイルセパレーターになるので何かと何かがズレるという心配もいらない。
ただ、漏斗の平面積が小さくなると、その分だけ滴下してくる精油や蒸留水の回収能力は下がるかもしれない。
また、この「ビーカーと漏斗のセット」の中に水を入れてみたところ、出来てくる精油の量が少ないと、その精油は筒部分には溜まらずに上部の広い部分に溜まるような感じになることが予想されるので、スポイドで吸い取る時は漏斗を少しだけ持ち上げて、精油を筒の中に誘導せせる必要はある。
※画像と同じビーカーと漏斗を使用した場合。


ビンに入れたハーブウオーター

ハーブウオーター(芳香蒸留水)も…。

今回は精油を抽出することが目的でしたが、ハーブウオーター(芳香蒸留水)も同時に採れるので、それもビンに入れておいた。


以上のように今回は、簡易な蒸留方法を使って庭のローズマリーから精油(エッセンシャルオイル)を抽出してみました。

感想としては、ちゃんと精油が採取出来たのは良かった。でもちょと少なめかなと言う感じ。
また、氷を大量に準備しておくというのは面倒ではある。さらには、氷が解けたらその水を捨て、次々と新しい氷を追加しなければいけないというのも面倒である。
以上を鑑みると、やはり独立した冷却器のある水蒸気蒸留装置があればと思ってしまう。


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