最近ではスティック型掃除機が主流。キャニスター型の掃除機よりも小さくて出し入れするのに比較的億劫さも感じず、サッと取り出してササッと掃除が出来るのでとても便利である。

とは言え、場合によってはやはりデカい…。
机の上でのちょっとした作業で出てくるゴミや消しゴムのカスなどを掃除したり、食卓テーブルの上のパンくずなどをきれいにするには取り回しが悪い。
アタッチメントを交換してハンディタイプに出来るものや充電式の卓上クリーナーなどもあるにはあるが食卓で使うには風情がない。
また、スティック型掃除機も卓上クリーナーも充電が切れていたらすぐには使えない場合もある。

ちなみにうちでは某メーカーのスティック型掃除機も使っているが、すぐにフィルターの目が詰まり、シュポ~ンシュポ~ンといって吸引出来なくなってしまう。そのたびにメンテナンスが必要。さらにどうしても目詰まりが直らないなら交換することになるが、これが結構高い…。
だけど、ほうきとちりとりではそのメンテナンスも不要。これはある意味で最先端なのかもしれない。
あと、確実に静かなのはうれしい…。

ということで、卓上で使うための取り回しのし易い小さい「ちりとり」を作ることにした。


■古くから使われてきた「はりみ」。

まず「はりみ(貼箕)」と言う名のちりとりがある。昔ながらの技法で作るとなると、基本の材料は和紙、それらを貼り合わせるためには乾燥すると強度と耐水性が得れるこんにゃく糊、そして補強のための外枠として竹、さらに防水・防腐性や硬さを得るための塗料としてベンガラを混ぜた柿渋、というようにオール天然素材となる…。見た目的には赤茶色いものが多いが中には黒色のベンガラで着色したものもある。

上記の材料をすべて揃えてはりみを1個だけ作るとなるとそこそこ高額になってしまうので、もしフルスペックの材料で作られたものが欲しいのなら完成品を買った方が断然安いような感じである(メーカーにもよるとは思うが)。またなによりもすべて揃えるのは面倒だし、材料が中途半端に残ったら勿体ない。
なので今回は材料にはこだわらず、とりあえず手軽に揃えられる物だけで「はりみ風」に作ることにした。

ということで今回作る「はりみ風の紙製ちりとり」は、古くからある「はりみ」とはデザインや作り方が違います。ただ、シルエットは「はりみ」と同じにしておいた。ちなみに、紙を貼り合わせて作った箕(み)であるというところだけで言うと「貼箕」ではあるが…。 まあそれでも竹枠が無いのでやっぱり「はりみ風」…。

アウトラインの図面
■材料

【紙】
【木工用の白いボンド】
【カシメ】
【ハトメ】

【紙】●一般的な張りのある紙だったら何でもいいと思うが今回は黒色のボール紙を使います。
あともう一つ、未晒のクラフト紙でも作ってみた。
この紙は漂白されていないため強度がある。ショッピング袋や段ボールの材料としてよく使われているあの茶色い紙で、所々に繊維の形が見られるところにナチュラルな雰囲気を感じる…。
●紙の厚さは、大体0.1~0.4mm位のものを用意する。とうぜん薄いほうが重ねる枚数は多くなる。
なお、薄い紙を使用したほうがベコベコになりやすかったりするので作るのは難しい…。
●紙のサイズは、厚い紙の場合は図面よりも縦横各10~20mmくらい大きいサイズで準備しておく。
薄い紙の場合は、貼り合わせて乾燥させると周囲がベコベコになるので、その部分を切り捨てるためさらに大きいサイズで準備しておくと良い。特に吊り下げて乾燥させたときに最下部になる40mmくらいは乾きにくくてベコベコするかも。
●必要な枚数は、ボンドで貼り合わせて最終的に0.8mm~1.0mmほどになるくらいの枚数で。なお、貼り合わせる枚数が多いほどボンドの分は厚くなるのでそれは考慮する。

ところで、はりみのメーカーは何社もあるが、調べてみたらメーカーによって材料は異なるような感じである…。中には和紙ではなくボール紙などの洋紙を使っているメーカーもあったし、また厚紙とだけ書いてあって和紙か洋紙か詳しく分からない場合もあった。ひょっとすると使っている糊や塗料もメーカーによって多少の違いはあるかもしれない。
先ほど、昔ながらの技法で1個だけ作るとなると材料代が高額になると書いたが、材料のグレードを下げて買うと、1個だけ作るとしても安くできたのかもしれない…。
でも今回はあくまでも身近にある材料だけで作る。

なお、紙を貼り合わせるために「でんぷん糊」と「PVA糊」でも試作してみた。
「でんぷん糊」は乾燥したら粘りがなくなるので、ちりとり状に成形する(曲げる)時に糊が割れてしまい、貼り付けた紙がパリパリと剥がれてしまう。
「PVA糊」では、薄いクラフト紙を使用した場合、紙の表面にシミが出来やすい。
なのでここでは、以上のような問題が比較的起こりにくい木工用の白ボンドを使うことにした…。 ちなみに商品として売られている「はりみ」にはでんぷん糊を使っているメーカーもある。

■作り方


木工用ボンドをハケで塗っている

.紙にボンドを塗る。

ハケを使って薄く均一に木工用の白ボンドを塗る。
ポイントは、紙全体(中心から端部分まで)に隙間なく塗ること。
もし塗っていないところがあると、紙の伸縮にムラが出来て紙がゆがんでしまいます。

なお、厚い紙の場合はそのまま塗っても大丈夫。
しかし、薄い紙の場合はそのままボンドを塗ると、このあとの工程でシワシワになることもある。
そうならないためには、貼り合わせるすべての紙を一旦水で濡らし、そのあとタオルなどでポンポンと水をふき取って、かすかに湿った状態にしてから塗っていくとよい。

紙を貼り合わせる

.紙を貼り合わせる。

貼り合わせる枚数は、薄い紙では多くし、厚い紙ではもちろん少なくする。
画像の黒いボール紙は厚かったので2枚重ねにし、この他に作ったクラフト紙では6枚重ねにした。
その結果、ボール紙で作ったものは約0.9mm厚の板になり、クラフト紙で作ったものは約0.8mm厚の板になった。

※クラフト紙で作ったバージョンの画像はページ下部にて。

ローラーで空気を追い出している

.空気を出す。

貼ったあとは、紙と紙の間に空気(気泡)が残らないようにすること。
中心から外の方に向かって空気を押し出す。ローラーがあればそれで、なければバレンで、それもなければバレンのようなもを適当に作ってそれで…。

吊り下げて乾燥

.乾燥させる。

ボンドや糊が乾くまで自然乾燥させる。

ちなみに早く乾燥させようと思って、あともう少しという半乾きの時にアイロンをかけてみたら大失敗。紙がシワシワになってしまってボツに…。
そのあと作り直して温風で乾燥させたらそれも微妙にシワになった。
特に薄い紙で作った場合はそうなりやすい。とにかくあせらず自然に乾燥させるのがいいようです。

なお、薄い紙を数枚重ねてある場合、乾燥したら表面にシミが出来ることがある…。
シミが嫌な場合、この数枚重ねて乾燥させたものを芯にして、その上下に濡らしていない薄い紙をあらためて貼り付けておくとシミは隠せる。ただ手間ではあるしその分厚くはなるが…。

カットしたアウトライン

.紙にアウトラインを書いてカットする。

図面通りのアウトラインを紙に直接書いて、その線に沿ってカッターやハサミなどを使ってカットします。

硬いもので角を丸める

.カットした端を丸める。

カットした端は鋭い角になっています。
そのままだと手を切ったりする可能性があって危ないので、硬いものを押し付けながら擦って角を丸めておきます。
なお、強く押し付け過ぎると端がビロビロになってしまうかもしれないので、様子を見ながら程よい力で…。

ポンチで下穴を開ける

.カシメ用とハトメ用の下穴をあける。

上記の図面で示す通りに、カシメ用の2箇所とハトメ用1箇所の下穴をポンチを使って開けます。

霧吹きで水を吹きかける

.霧吹きで水をかけて曲がりやすくする。

乾燥した状態でボール紙を曲げると、所々にシワ(折れ線)が発生してキレイに仕上がらないので、まず曲げる前に霧吹きで水をかける。(曲げる箇所だけ)
このとき、ほどよく湿らす程度にする。
ビッショリと芯まで濡らしてしまうと、紙を貼り合わせた時のボンドが水で溶けてしまうかもしれないので…。

なおボール紙は、水でふやけると表面がボコボコになってしまうこともありますが、乾燥したら元のピンピンに戻るはずです…。ちなみにここではキレイに戻りました。

ペンで穴を写す

.ちりとりの形に整えて、上記で開けたポンチの穴を写します。

まずは、手でクネクネとさせながらちりとりの形に整えていきます。
イラストでの点線部分はほぼ直角に折り曲げ、あとはゆるいカーブで曲げながらある程度ちりとりっぽい形に成形します。

そして、イラストで示すAとA、BとBを合わせるようにして重ね、上記の工程7で開けたカシメ用の穴にペンなどを差し込んで重なるところにその穴の位置を写します。イラストでは赤丸が写した位置。

※紙を曲げる際には…
直角に折り曲げる点線部分は特にゆ~っくりと曲げます。なお、折り目をキッチリと付けようとして完全にピタッと折り畳んでしまうと、重ねる厚さや紙質によっては折り曲げた外側の部分にヒビが入ってしまうことがあるので、完全に折り畳んでしまわないようにすること。
もしヒビが入ってしまった場合は、ヒビの奥にでんぷん糊をすり込んで、その上から硬いもので擦りながら押さえておくと多少は目立たなくはなる。

写した所に穴を開ける

10.上記工程で写した場所にカシメ用の穴を開けます。

上記工程でペンなどを差し込んで写した場所(イラストでは赤丸)に、ポンチを使ってカシメ用の下穴を開けます。

ボンドで貼り合わせる

11.重なる部分にボンドを塗って貼り合わせます。

上記の工程7と工程10で開けたカシメ用の下穴同士を合わせ、その重なる部分にボンドを塗って貼り合わせます。

貼り合わせたら、固まるまでのしばらくの間クリップなどでつまんで固定しておきます。
なおその時、本体にクリップの跡が付かないように、本体をボール紙の切れ端などで挟んでその上からクリップでつまむといいかも。

カシメとハトメを打ち付けたところ

12.カシメとハトメを打ち付ける。

合わせた穴にカシメを通して打ち付け、さらにハトメも打ち付けたら完成です。


先端をサンドペーパーで薄くする

なお、以上のままでも十分にちりとりとして使用できますが、紙が厚いとテーブルなどに接地させたときに紙厚の分だけ段差が出来ます。
より小さい埃をはきとれるようにするためには、先端の角上部を少しでも削って薄くしておくといいかもしれない。

削り方は、画像のように先端上部の角に角度を付けてサンドペーパーを当て、その状態で左右に擦りながら削っていく。
あまり削り過ぎてペラペラにしてしまうと先が弱くなるので、ある程度の厚みは残してやめておく。
最後は、削ったところを硬いもので擦りながら毛羽立ちを押さえつけておく。

また、紙なので上記のままだと水には弱い。
もし防水性が必要ならばオイル(乾性油)か柿渋か艶消しの透明塗料(ニス)などを塗っておけばいいと思う。紙の強化にもなるし。
今回は補強のための竹ひごは使わないので、せめて紙だけでも強化しておいてもいいかもしれない。
この先使用していくうちに紙の端部分がボロボロになるのを多少防止することにもなるし。

透明塗料の場合は、たとえ艶消しのタイプを使ったとしても、使用する塗料のメーカーによってはツヤツヤになってプラスチック感が出るかもしれない。さらに水性だと青白くなってしまう場合もある。
紙の雰囲気を残したいのならオイルのほうがいいかもしれない。ただし厚塗りし過ぎるとこれもツヤツヤにはなってしまうが…。
オイルの場合は食用のアマニ油やエゴマ油でも良い。ちなみに、昔ながらの和傘には防水を目的としてアマニ油やエゴマ油が塗られています。
なおオイル(乾性油)の場合、硬化するまでにはそこそこの日にちはかかる…。


■色んな紙で作れる。

クラフト紙で作ったちりとり

今回は上記の黒いボール紙で作ったもの以外に、未晒のクラフト紙を使ったバージョンも作っている。
梱包用のまあまあ薄い紙だったので、厚いボール紙で作るよりも思うようにいかず、いくつかボツにしたがなんとか出来た。
クラフト紙で作ったナチュラルな雰囲気の本体に、にぶい金色の真鍮製ハトメとカシメを合わせてみたのが画像のもの。
真鍮は時間が経つと酸化して黒ずんでくるのでより味が出るはず。
さらにオイル(乾性油)や艶消しの透明塗料(ニス)などを塗っておけば紙はより強化される。
オイルを塗れば色が濃くなってワックスペーパーのような雰囲気になり、それはそれでいい感じになるかもしれない。

いずれにしても、紙製ちりとりは多少壊れても自分で修理可能だし、あんな紙でもこんな紙でも作れてしまう。
最近ではプラ袋が減ってクラフト紙のショッピング袋に変えるお店も増えてきたのでそれを再利用すれば格安で作れる…。
もしかすると、この紙製ちりとりはとってもサステナブルなのかもしれない。
何よりも、ほうき&ちりとりは電気を使わないし。

以上のように「はりみ風の紙製ちりとり」を手作りしてみました。
使い方は市販のはりみと同じで、先端のしなった部分をテーブルの上などの押しつけてフラットな状態にし、そこにほうきでゴミを掃き入れる。

なお今回は紙で作りましたが、張りのあるレザーで作っても味があっていいかもしれない…。


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