前回は、ショルダーバックのストラップ(肩掛けベルト)を手作りしましたが、今回は帆布とレザーを用いてバックの本体部分を作ります。

なお、前回作ったストラップ(画像の物)は【バック用の「ショルダーストラップ」を手作りする】のページにて詳しく。
ちなみに、市販のショルダーストラップでイメージの合うお気に入りのものがあれば、それを使うのもいいかもしれない。
■「袋部分が帆布」で「フラップがレザー」のバックを作る。
今回作るショルダーバックの本体は、袋部分のオモテ地に帆布、フラップ(かぶせ)の部分にレザー、そして各金属パーツには真鍮製のものを用いました。

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【オモテ地】(11号カラー帆布)
【ウラ地】(オックス)
【バック用接着芯】
【ヌメ革】(2mm/1.5mm/1mm厚)
【Dカン】(内幅20mm) … 2個
【両面カシメ】(足長12.5mm) … 4セット
【両面カシメ】(足長10.5mm) … 2セット
【差込式マグネットホック】… 1セット
【ヌメ革】2mm厚はフラップ/根革用。1.5mm厚はマグネットホックのベース用。1mm厚は生地の補強用(マグネットホックの部分))
そのほかに用いたものは…
◇
【ボール紙】(型紙用)
【コバ処理剤】
【接着剤】(今回はG17)
【布用両面テープ】
【革用の手縫い針と糸】(今回の糸はビニモの5番)
【裁断道具】
【穴あけポンチ】
【目打ち】
【サンドペーパー】
【カシメの打ち具】
【ミシン】
その他…
■作り方

1.オモテ地と接着芯を荒裁ちする。
まず、オモテ地と接着芯を、裁ち方図(型紙)の寸法よりも大きめに荒裁ちしておきます。
※この裁ち方図(型紙)には1cmの縫い代が含まれています。

2.オモテ地に接着芯を貼り付け。
アイロンを当ててオモテ地の裏面に接着芯を貼り付けます。

3.生地を裁断。
「接着芯を貼り付けたオモテ地」と「ウラ地」を、裁ち方図(型紙)の寸法通りに裁断します。

4.マグネットホックを取り付ける箇所を補強する。
マグネットホックを取り付ける箇所に「何か厚手のシート」を貼り付けて生地の補強をしておきます。
今回は、適当なサイズにカットした1mm厚の革に布用両面テープを貼り、それを生地の裏側(接着芯側)に貼り付けておきました。
なお、両面テープではなく接着剤を使ってもいいのですが、接着剤の種類や塗る量によってはオモテ地の表面にまで染み出る場合もあるので、接着剤を使う場合は注意が必要。

5.マグネットホックを取り付ける。
●まず上記で補強した所に「差込式マグネットホック」の爪を差し込むための切り目を入れます。
今回は、ピッタリサイズだった平刀の彫刻刀を使って切り目を貫通させました。
●そして、生地の表側からマグネットホックの爪を差し込んで、その裏側から出た爪に座金を通したあと爪を両外方向に折り曲げます。
そのあと、木槌や金槌で軽く叩いて爪をペタンコにしておきます。

6.爪を布テープでカバー。
折り曲げた爪が裏地に直接当たらないように布テープでカバーしておきました。

7.オモテ地の両脇を縫う。
●まず両脇を縫う前に、マチ幅の印を付けておきます。今回はマチ幅6cmにしました。
●そして、オモテ地を中表にして折り曲げ、縫い代1cmで両脇を縫います。

8.マチを作る。
両端の底部の角を縫ってマチを作ります。

9.縫い代を割る。
●縫い代を左右に開き、さらにアイロンで押さえて倒しておきます。
なおアイロンをかける時は、袋の中(縫い代の下)に小さくカチカチに丸めたタオル(仕上万十の代り)を入れて上から押さえました。
●そして、マチを作るにあたって出来た余計な底の角部分は、下記(工程10)の画像のように縫い代1cmを残してカットしておく。

10.ウラ地も同じように加工。
ウラ地も上記の工程7・8・9と同じように加工しておきます。

11.ウラ地とオモテ地を合わせて縫う。
●まず、ウラ地だけを上記画像(工程10)の状態からひっくり返します。そのあとウラ地とオモテ地を中表にして合わせます。
●次に、開口部をピッタリと揃え、端部をクリップなど(まち針や両面テープでもOK)で固定。
●そして、返し口を残し、それ以外の全周を縫い代1cmで縫います。
なお、返し口はマグネットボタンの無い側に設けるようにする。

12.生地をひっくり返す。
返し口から生地をひっくり返します。

13.返し口を閉じる。
●まず、袋の開口部を整え、折り目を付けるようにアイロンをかけておきます。
●そして、返し口を閉じるのも兼ねて開口部の全周にミシンでステッチを入れます。

14.革パーツの型紙を作る。
「フラップ(かぶせ)」と「根革」と「マグネットホックのベース」の型紙を、ボール紙で作ります。

15.根革を作る。
Dカンを設置するための根革を作ります。
●まず、革に型紙を当ててアウトラインを罫書きます。さらにその状態のままカシメ用の下穴の所に穴開けポンチを差し込んで穴の位置も写します。
●次に、罫書いたアウトラインに沿って裁断。
●そして、カシメ用の下穴の所を穴開けポンチで開けます。

●ヤスリやサンドペーパーなどを使ってコバ(裁断面)のアウトラインを整えます。
●次に、ヘリ落としを使って銀面側のヘリ(角)をグルリと1周落とします。
●最後に、コバ仕上げ剤をコバに塗り、そのあと帆布などで磨いたら根革の完成。
なお今回の根革は、ある程度の厚さがある硬い革を使用しているし、まあまあ幅もある。さらに作るバックは小さいし重い物を入れない予定なので、床面(裏面)には補強テープ(伸び止めテープ)を貼らなかった。でも、薄くて柔らかい革を使う場合は補強テープを貼った方が安心かもしれない。
ただ今回の構造では、カシメや縫い糸などの固定手段で根革と補強テープを固定させることが出来ないので、根革が伸びてしまうような力が加わるとテープの粘着力だけでは剥がれてしまう恐れもある。そうなると補強の効果がなくなってしまう。
なので補強テープを貼る場合、床面には「用途に皮革と記してある合成ゴム系の接着剤」を薄く塗って、補強テープを剥がれにくくしておくといい。
まあ完璧ではないですが…。

16.マグネットホックのベースを作る。
マグネットホックをフラップに縫い付ける際にベースとなる革のパーツを作ります。
●アウトラインの裁断から仕上げまでの手順は上記の根革とほぼ同じで、革に型紙を写し、その通りに裁断してコバ処理をする。
●そして、四隅には縫い穴の始点と終点(位置決め用も兼ねる)の点穴を写して貫通させ、中心部にはマグネットホックの爪を差し込むための切り目を貫通させておきます。

17.フラップを裁断する前に、曲がる部分を柔らかくしておく。
フラップ(かぶせ)がバックの全面にテロンと垂れるようにするため、曲がる部分に丸みを付けておきます。それと同時に、ハリのある硬いヌメ革を柔らかくもしておきます。
その方法は、「フラップ用に荒裁ちした革」を画像のようにビニールマットの上で銀面(表面)を外側にしてU字状に曲げ、上から軽く押さえるようにしながら手でコロコロと前後にスライドさせて革の繊維をほぐしていくというもの。
特に、完成するとバックの上部に位置するあたり(曲がるところ)を念入りに行いました。
ちなみに、下に敷いたビニールマットと手に付けているゴム手袋は革が滑らないようにするためです。
また革が汚れないように、ゴム手袋は新品で、ビニールマットはアルコールで汚れを拭いて表面をキレイにしてあります。
なお、床面(裏面)に仕上げ剤を塗って乾燥させると革が少し硬くなるので、仕上げ剤を塗る場合はこの「ほぐす作業」の前に行うといい。
今回は、トコノール(仕上げ剤)を床面に塗ってガラス板で毛羽立ちを抑えたあと完全乾燥させてから革をほぐしました。仮に、ほぐしてから仕上げ剤を塗った場合は、完全乾燥した後にもう一度軽くほぐすと良いかも知れない。

18.フラップを裁断して仕上げる。
フラップの場合も上記の革パーツとほぼ同じで、革に型紙を当てて「アウトライン」「カシメの下穴」「縫い穴の始点と終点(位置決め用も兼ねる)」の位置を写し、その通りに裁断・穴開けをする。
そのあと、ヤスリやサンドペーパーでアウトラインを整え、ヘリを落とし、コバ仕上げ剤を塗ってコバを磨くなどのコバ処理を一通りしておく。

19.フラップの床面側にマグネットホックを取り付ける。
●まずは、上記で作っておいた「マグネットホックのベース」の切り目にマグネットホックの爪を差し込んだあと、床面側から出たその爪に座金を嵌め、爪を開いた(倒した)あと木槌や金槌などで爪を潰しておきます。
●次に、ベースの四隅に開けてある位置決め用の穴(縫い穴の始点と終点)にプッシュピンを挿し、その状態で、同じようにフラップに開けておいた位置決め用の穴(縫い穴の始点と終点)にもプッシュピンの先を挿して固定させます。
そのあと「先の丸いケガキペン」でベースのアウトラインを軽~くなぞって、フラップの床面側にアウトラインの跡を弱~く付けます。(※罫書く時に付けるような、引っかいたようなキズ跡ではない。)

●そして、ベースを一旦取り外し、跡を付けたアウトラインの内側に画像のような足付けをします(カッターナイフの先やヤスリなどで表面を荒らす)。
●次に、フラップの足付した部分、そしてその足付けした部分に相対するベースの床面側に接着剤を塗り、接着剤がある程度乾燥したら、再度上記と同じようにプッシュピンで位置を合わせた状態にして貼り合わせます。

●接着剤が固まったら、フラップの表側から「菱目打ち(始点と終点だけは丸ギリ)」を刺して、マグネットホックを取り付けてあるベースにまで縫い穴を貫通させます。
●そのあと、ベースとフラップを平縫いで縫い合わせることでマグネットホックを固定させます。

20.袋口の両端にDカンを取り付ける。
※なおこの工程は、下記の工程23のあと(一番最後)のほうが良かったかもしれない。
●まず、目打ちを使って、袋の左右両端の上部にカシメ用の下穴を2つずつ開けます。
●そしてその場所に、「Dカンを通した根革」を、片側2セットの両面カシメで固定します。
なお、生地が厚くて用意したカシメの足(軸)の先が少ししか出ない場合は、生地の重なった部分を木槌で叩いて薄くしてみるといい。
ちなみに、カシメ以外にも「組ネジ」や「リベット」などと、留める手段は色々とあるので状況に合わせて変更するのもいい。組ネジを使った場合は、ネジ部に接着剤を塗ったうえでキッチリ奥まで締めて緩まないようにしておく。

21.袋部にフラップを貼り付ける。
ミシンもしくは手縫いでフラップと袋部を縫い合わせます。なお今回は手縫いを前提にして進めます。
●まず、菱目打ち(始点と終点だけは丸ギリ)を使って、フラップの付根側に縫い穴のライン(縫い線)を2本設けます。
●相方の袋側には、フラップを縫い付ける位置を決めて印を付けます。ここでは「フラップの端の位置・カシメ用の下穴の所」に、熱で消えるインクのペンで印を付けました。
※なお、このあとのすべての作業が終わったら、見える部分の印は熱くしたアイロンの先を当てて消しておく。

●フラップに開けた2本の縫い線の間に布用の強力両面テープを貼ります。貼るのは床面側です。
なおここは、ゴム系接着剤を塗ってもいいです。その場合、袋側にも同じ接着剤を塗ります。
※但し、布地に接着剤を塗ると、その裏面にまで接着剤がにじみ出る場合があるのでそこは要注意。接着剤を使う前には、同じ布のハギレでテストをして大丈夫かどうか必ず確認する。
※ちなみに画像では、端から端まで両面テープが貼られていますが、実はこのあと、両面テープを一旦剥がし、両端の3cm位にだけ接着剤を塗って、その間の部分だけ両面テープを貼る方法に変えました。手縫いする時に端から剥がれ気味だったので…。
ちなみに、接着剤のにじみテストはOKでした。
なお両面テープはフラップ側だけに貼り、接着剤(G17)を塗ったのはフラップ側と布側の両方です。
●そのあと、袋部に付けた印に合わせるようにしてフラップを貼り付けます。

22.フラップと袋部を手縫いする。
●まず、フラップの表面側から縫い穴に丸ギリを刺して袋側にも穴を貫通させます。この時バックの中(フラップの下側)にはコルク板を差し込んでおきました。
※なおここでは「菱目打ち」は使わずに「丸ギリ」を使います。菱目打ちの先は刃物なので、織布に菱目打ちを使うとその部分の糸が切れてほつれの原因となってしまいます。
●そして「平縫い」というレザークラフトの技法を用いてフラップと袋部を縫い合わせます。
※ちなみに、革と革を平縫いで縫うのは比較的簡単ですが、布と革を平縫いで縫うのは難易度がちょっと上がります。なぜかと言うと、布側から縫い針を刺そうとすると、上記で開けたはずの縫い穴が塞がっていて見え難くなっていることがあるからです。そうなると、一針ごとに革側や布側から丸ギリや縫い針などを差して塞がった穴を広げてやる手間が必要となります。
なお平縫いする時は、必ずレザークラフト用の縫い針(先が丸くなっている)を使うこと。布用の針(先が尖っている)を使うと、布側から針を刺すたびにその針先が革のどこかに引っ掛かって縫い穴を上手く探すことが出来ません。また、どのタイミングで針先が手に刺さるか分からないのでとても危険です。

23.縫い線の両端を両面カシメで補強。
●最後に、縫い線の両端部分を両面カシメで留めて補強しておきました。
●なお、あってもなくても別にかまわないですが、今回はカシメで留めるついでに、画像のような「Dカンを付けた根革」を作り、両面カシメの足に通して(バック内側に)一緒に留めておきました。
このDカンの用途は、バックの内側に何かを引っ掛けておくためのもの。例えばキーホルダーとか…。

Dカンにショルダーストラップを取り付たら完成。
別途用意してあるショルダーストラップ(両端がナスカンになっているタイプ)を、バック両脇のDカンにカチッと取り付たらショルダーバックの完成です。
なおここでは、長いショルダーストラップを取り付けてショルダーバックとしますが、短いハンドルを作って取り付けるとハンドバックとなります。
例えば、フラップと同じ革を使い、幅1~1.5cmくらいで両端のナスカンを含む長さが40~50cmくらいのハンドルを作って取り付けるなど…。
以上のように、今回は帆布とレザーを用いて「ショルダーバック」の本体を手作りしてみました。
基本的には帆布のバックではありますが、フラップをレザーにしたので、帆布でフラップを作るオール帆布のバックよりもちょっとだけグレードが高く見えるかも…。