これまで、缶の容器に入ったお菓子やお茶などを頂いたり購入したりしたことはなかったでしょうか。
そしてその要らなくなった空き缶を、捨てるには勿体無いということで小物入れなどとして使っているという方もいるのではないでしょうか。
もしそのように使うのであれば、アンティークショップで買ってきたかのようなブロカントな小箱に生まれ変わらせて使うのも楽しいのではないかと思います。

そこで今回いくつかの缶容器をリメイクしてみることにしました。
なおここで行うのは、形を加工したり何かを取り付けたりするするものではなく、表面の色を変えるだけの単純なリメイクです。
ちなみに、このような空き缶の多くは薄い鉄の板を材料にして作られているものが多いですが、ここでも鉄製の缶を使います。

裸の鉄の色は大きく分けて[地金の銀色][黒錆の黒色][赤錆の茶色]とがあります。
その中でも鉄が作り出す黒錆の黒色にはインダストリアルな渋い雰囲気があるので、今回は空き缶の表面をその鉄色の黒にリメイクしようと思います。
きっとヴィンテージ風で味わいのある渋い表情の缶に生まれ変わるはずです。

まず、鉄を黒くする方法は色々とあります。
我々が作っている鉄製品でも、鉄を加工した後の表面処理として色々な手法を使って黒くしています。
黒皮・黒錆・黒染め(すべて四酸化三鉄が主成分の酸化被膜)などと呼び方は違いますが、
それらの表情には、独特の味わいがあります。

中には一般的な家庭にはたぶん無いであろう道具や特殊な薬品などを使って行う方法もあるのですが。
今回はその中でも、一般的なご家庭で手軽に黒染めが出来る簡単な方法を1つご紹介します。
但し、この方法では真っ黒にはなりません。
どちらかといえば渋いガンメタ色です。なので、ヴィンテージっぽくするにはピッタリです。

それでは、その方法を用いて、味わいのあるアンティーク風に空き缶をリメイクします。


■用意するものは

加工する材料と道具

黒染めに必要な主なもの

●黒染め液の材料
【紅茶】又は、【緑茶】【コーヒー】
【クエン酸】又は、【酢】【レモン汁】
ちなみにクエン酸は、100円ほどのお掃除用のものでも十分です。
【容器】
染めたいモノ全体がスッポリと入るもの。
例えば、保存容器・バケツ・洗面器、また、ペットボトルや牛乳パックをカットしたものなど。内側が金属でなければなんでもOK。
もし手頃な大きさの容器が無ければ、ダンボールなどで箱を作り、その内側に水が漏れないようにポリ袋を被せて容器にすれば、必要なサイズのものが自由につくれます。
【缶を脱脂するもの】 下の文で説明しています。

 

リメイクの下準備(塗装剥がし)に必要なもの

【サンドペーパー】
荒取り用(180番ほど)と、仕上げ用(320番ほど)の2種類を用意。
【ワイヤーブラシ】(荒取り用)
サンドペーパーだけでもOKなのですが、ワイヤーブラシは目詰まりしないので、あると楽です。


■まずは下準備(塗装剥がし)です

缶の塗装を落としている様子
表面の塗装を剥がします

表面の塗装(印刷)を、180番ほどのサンドペーパーで荒取りし、320番ほどのサンドペーパーで仕上げ磨きをします。
荒取りの時に、もしワイヤーブラシがあれば、それを使ったほうがサンドペーパーよりも早く塗装を落とせるので楽です。
さらに、電動ドリルの先に軸付きのワイヤーブラシを取り付けて塗装を落とすと、もっと楽です。
但し、あくまでもワイヤーブラシでは荒取りです。仕上げはサンドペーパーで磨きます。

塗装を剥がす作業の際には、蓋が本体に嵌められている状態のほうが缶を持ちやすくなるので、作業もしやすくなります。
ただ、蓋に隠れる部分の塗装を落とす場合は無理なのでしかたがありませんが、
なるべく本体に蓋を嵌めておくようにすると、力を入れて擦った時に、缶の形状が変形するのを防止できます。

ちなみに、塗装を剥がすときは、ワイヤーブラシの毛が手に当たるとすごく痛いので、ワイヤーブラシを使うときには牛床革の手袋をしています。

但し、軸付きワイヤーブラシを取り付けた電動ドリルを使うときに手袋をしていると、ブラシの先に手袋が引っ掛かって巻き込まれる恐れがあるので、その場合は手袋をしないようにしています。
あくまでも、軍手や革手などの手袋をするのは手動での作業時であって、電動工具での作業時には軍手や革手はしていません。


■缶の表面を脱脂します

缶の表面を脱脂している様子
表面の油分を取り除きます

磨いた部分に油分が付着していると、染め液をはじいてしまい、染まる部分と染まらない部分が出来てしまうことがあるので、
パーツクリーナー・シンナー・ベンジン・エタノールなどの溶剤を使って缶表面の油分を取り除きます。

もし、それらの溶剤がなければ、油落ちの良い中性洗剤を使ってシッカリと洗います。
じつは、やり方次第では、溶剤よりも中性洗剤で洗い落とすほうが均一に油分が取り除けて、ムラが少なくキレイに染まることがあります。
むしろ、部屋が臭くならないので、コチラのほうが良いかもしれません。


■次に、黒染め液を作ります

紅茶を作っている様子
濃い紅茶を作ります

まず、【紅茶】又は、【緑茶】か【コーヒー】を濃い目(苦め)に抽出し、用意しておいた容器に入れます。
今回は、【紅茶】を使うことにします。

自分の作り方は、
鍋にお湯を沸かし、その中に紅茶の葉を直接入れて煮出します。
3分ほど経ったら火を止めて、さらに10分ほどそのまま置いて成分を抽出します。
今回は、鍋に入れたお水の量は2400ccで、それに対する紅茶葉の分量ですが、大体40グラム以上は入れました。
これは、通常の飲む場合よりもかなり苦いです。

そして、抽出し終えたら、ザルや茶漉しなどで葉を濾しながら、用意しておいた容器に紅茶を入れてゆきます。
今回は、その容器として、プラスチック製の大き目な保存容器を使用しました。

容器の中に必要な紅茶の量は、染めるモノ全体が浸かる位です。
もし足りなければ、さらに紅茶を作って追加するか、容器の形状や大きさを変更します。

クエン酸を入れている様子
クエン酸などを加えます

そして、その容器の中の紅茶に、
【クエン酸】又は、【酢】か【レモン汁】を加えます。
割合は、
紅茶【100cc】に対し、クエン酸【0.5グラム】
もしくは、
紅茶【8】に対し、酢、又は、レモン汁を【2】
ほどを加えます。

今回は、せっかく作った紅茶の濃度を薄めたくはないので、【クエン酸】を加えることにします。
割合は、出来上がった紅茶の量が約2000ccほどなので、クエン酸を10グラム加えました。

※最初に鍋に入れた水の量は2400ccなのですが、紅茶の葉に吸われる分と、煮出し中に蒸発する分とで400ccほど減るため、出来上がりの紅茶の量は2000ccほどになります。


■それでは缶を黒く染めてゆきます

蓋を黒染め液に沈める様子
液に沈めます
缶を黒染めしている途中の様子
1時間ほど置きます

染める方法は、
上記の黒染め液の中に、あらかじめ脱脂しておいた空き缶を沈めておくだけです。

1時間ほど経ったら空き缶を取り出して、その表面に付着している汚れを、布やスポンジなどで軽く擦りながら落とし、水で洗い流します。
そして、布などで水分をシッカリと拭き取ったら黒染め終了です。

水分を拭き取った後、そのまま空気に触れさせておくと、少し色が濃くなってきます。
この時に、少しでも水分が残っていると、その部分に赤錆が発生することがあります。

 

黒くならない時は…

もし、失敗したかな(黒くならない)という時は、
作った黒染め液と 染めたいモノ(缶)を一緒に鍋の中に入れて煮ると、黒くなることもあります。

※(ただその場合、鉄やステンレスの鍋に入れて煮るのは避けましょう。
基本的にはステンレスは染まらないのですが、ものによっては薄く輪染みが出来ることがありますし、鉄の鍋ならば染まってしまいます。
そしてその場合、缶を染める力は多少弱くなってしまいます。
ですが、鉄でも内側にホーローなどの表面加工がされていたら大丈夫です。)

しかし、色の濃さには限界があります。
何度やっても、色が変化しなかったら、その濃さがその条件での上限です。
そもそも、塗装やメッキのように真っ黒にはなりません。 あくまでも鉄の色で、どちらかといえばガンメタ色です。

また、色は付いたけれど、少しムラムラになてしまったら、
缶の表面に付着している汚れを水で洗い流し、その後、水分を拭き取ってから、もう一度黒染め液に浸ける。 そうすれば、少しはムラが少なくなるかもしれません。
但し、脱脂が不十分で、染め液をはじいている場合は別です。

なお、染める液は何度かは使えますが、液の色が黒っぽくなってきていたら染める力は弱くなってきています。

そして、なにをしても全く色が変わらないようであれば何かが間違っていますので、違う材料で試してみたほうが良いでしょう。
ちなみに、麦茶のようなタンニン(カテキン)が含まれていないお茶では、黒染めをすることは出来ません。
また、同じ鉄系でも、ステンレスにおいては基本的には染まりません。

リメイクが完成した様子

なぜ缶が黒くなるのか

黒くなるのは鉄の缶の場合です。その表面部分が、紅茶・緑茶・コーヒーなどに含まれているタンニンと結合するためです。

今回は紅茶を使いましたが、タンニンを含むものならどれでも可能です。
但し、紅茶・お茶・コーヒー、さらにはメーカーや種類、そして淹れ方によって、タンニンの濃度は違います。
ということは結果(色の濃さも)違います。
また、タンニンの濃度が薄いと赤錆になることもあります。

仕上げに防錆処理をします

黒染めをすると、塗装を剥がして鉄がむき出しになっている状態よりも、少しは錆び難くはなっていますが、錆びないわけではありませんので、仕上げに防錆処理をしています。

防錆仕上げの方法は、
空き缶を食品入れ等として使用するならば、食用の乾性油等のオイルを塗って防錆します。
また、工具入れ等として使用するならば、クレ5-56などの防錆剤を塗ってもよいでしょう。

それでも、錆びなくなるわけではありません。メンテナンスが面倒な場合は、透明な塗料を塗っても良いでしょう。
ただし、オイル仕上げの方が、鉄の風合いやアンティーク感はあります。


以上、クッキーやキャンディー・チョコレート・お煎餅などのお菓子、また、お茶や海苔などの食品が入っていた空き缶を、アンティーク風にリメイクする方法でした。
この方法はらば、塗料も使わず、一般家庭にあるものだけで簡単に出来ます。

ちなみに、リメイクではありませんが、我が家では古い鉄瓶をメンテナンスするときに、この黒染め液を使っています。

また以上の方法で、空き缶以外にもジャム瓶の蓋などをアンティーク風にリメイクしても味わいがあってオシャレです。


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