生成りの綿シーチングを用いていくつかの布小物を作った時のこと。生成り1色だけだと何だか物足りない感じがしたので手染めもしてみることにした。
以前から柿渋染めはしていたので、とりあえず柿渋で!と思ったが、あいにくその時は柿渋液が無い。
ということで、直ぐに手に入れることが可能なコーヒーで染めてみようかと…。
結果的にはそれが結構いい感じで、綿100%のシーチングのはずが、まるで麻でも含まれているかのような味のある雰囲気の布に。
そして今回、さらにほかの小物も作りたくなったので、あらためて布を手染めしようと思う。
用いる染料は、またもコーヒー。あと紅茶も…。
■まずは、コーヒー染め。
使う生地は、未晒(みさらし)で生成り色の「綿(コットン)100%のシーチング」です。
表面にブツブツと植物の破片が見られ、ただでさえ最初からナチュラル感の漂う生地なのに、コーヒーで手染めすることでさらに味わい深く。
なお、コーヒーを用いた布と、紅茶を用いた布とで染まり具合を比較してみた場合、紅茶を用いた布のほうが少し赤みを帯びた感じになっています。
人それぞれの好みがあるので何とも言えませんが、個人的にはコーヒーを用いた布のほうが好みの色でした。

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【生地】… 綿シーチング(生成り)
【コーヒー】… 適宜(今回の量は下記にて)
【ミョウバン】… 適宜(今回の量は下記にて)
【生地】は、90×70㎝で、重さ105gでした。
【ミョウバン】は色止め剤として使用。
今回は“焼きミョウバン”を使います。 スーパーや薬局などでは食品添加物として安いものでは100円程度で売られています。
なお、ミョウバンが無い場合は【塩】でも良い。
この他には、綿や麻などの食物性繊維の場合、着色しやすくするために【豆乳】や【牛乳】【豆汁】に浸してタンパク処理という下処理をする場合も…。
例えば毛(ウール)や絹(シルク)は、綿(コットン)よりも着色しやすいのですが。 その理由は、毛や絹(動物性繊維)の主成分はタンパク質であり、そのタンパク質成分が着色しやすいから。ということのようです。
一方、綿の主成分はセルロースであり、タンパク繊維よりも着色がしにくい。そこで、生地に豆乳や牛乳などを染み込ませてタンパク質を含有させ、より着色し易くしてやるという方法。
しかし、上手くやらないと色むらが出来てしまうという欠点もあるし。また、前回はタンパク処理をしなくても、染める回数を重ねることでそれなりに気に入った色にすることが出来たので、今回はタンパク質での下処理はしません。
但し、タンパク処理が上手く出来ると、色は確実に濃くはなります。 もし「タンパク処理」をするのなら、下記の[工程1]と[工程2]の間で行うことに…。
―タンパク処理の方法は―
●水で2倍に伸ばした【豆乳】や【牛乳】、または【豆汁】の中に、生地を20~30分間くらい浸しておきます。
●つぎに、洗濯機で“しっかり”と脱水して、そのまま乾燥させる(手で中途半端に搾ると色むらに)。出来ればこれを数回行う。
●そのあと、染めるまで数日空ける(寝かせる)。
■染め方

1.まず、生地の糊を洗い落とす。
新品の生地のままだと、糊が付いていて染まりにくいので、まず糊を洗い落としておきます。
特に、綿(コットン)には蝋(ロウ)質も含まれているので、できれば中性洗剤も使ってお湯でしっかりと洗っておいたほうが良いです。 ここでは、熱めのお風呂ぐらいのお湯を使いました。
ちなみに、本格的に落とすときは、鍋に水(お湯)と洗剤を入れてその中で煮る場合も…。
例えば、新品の綿タオルだと少し水をはじく感じがするけど、何度か使用したタオルだと水の吸収力がすごく良いですよね。
なるべくそれに近い状態にするということです。
洗った後は、泡が出なくなるまでしっかりと濯ぎ(すすぎ)洗いをします。
●もし「タンパク処理」をするのなら…
今回はしませんが、上記で説明したタンパク処理をするのならこの時点。(工程1の後、工程2の前)

2.染料液を作って、染めます。
今回は、
【水】1リットルに【インスタントコーヒー】15g混ぜたものを“染料液”とします。
もちろん、レギュラーコーヒー(焙煎された豆)から濃いめに抽出されたコーヒーでもOK。
また、とうぜんですが、コーヒーの濃度によって着色する濃さは変わります。
そして染めるときには、まず、作った染料液を鍋で一瞬だけ沸騰させます。
沸騰したら超弱火にし、その染料液の中に生地を浸して、色むらが出来ないように箸やトングなどで動かしながら均等に液を浸透させます。
30分程経ったら火を止めて、そのまましばらく浸けておきます。できれば1晩浸けておく。
なので色むら防止のため、ボウルに移し替えて、その上からさらに小さいボウルで押さえ、生地全体が液の中に完全に沈むようにしてから1晩浸けておきました。

このように入れ替えるのがめんどくさい場合は、鍋の中に入れたまま、皿や落し蓋などで生地を押さえておくのもいいかも…。
なおこれらは、あくまでも液が少なくて、生地の上部が液面からかなり出てしまう場合でのこと。
浸け終わったら、鍋の中から生地を取り出して、軽く水洗いをします。

3.媒染(色止め)する。
まず、鍋に【水】1リットル・【ミョウバン】5gを入れて媒染液(ばいせんえき)を作り、その鍋を火にかけて一瞬だけ沸かし、そのあと火を止める。
そして、媒染液が熱いうちに生地を浸し、トングや箸などで生地を動かしながら均等に染み渡らせたら、30分間浸けておく。

4.しっかりと洗う。
媒染(色止め)が終わったら、色が出なくなくなるまで水でしっかりと洗っておきます。
そのあと、形を整えて乾燥させたら終了です。
なお、乾燥したら、濡れている時よりも色は薄くなり、色味も変わります。
もっと色を濃くしたい場合は。
工程2・3・4を繰り返す。

●染める回数によっての色の違い
染める回数によって雰囲気も変わってきます。
画像の左から順に、元の生地・1回染め・3回染めとなっています。
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■つぎは、紅茶染め。
下の画像は「コーヒー染め」と「紅茶染め」との比較です。
画像左側の生地が「コーヒーを使用」で、右側の赤みを帯びた生地が「紅茶を使用」です。

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【生地】 … 綿シーチング(生成り)
【紅茶】 … 適宜
【ミョウバン】 … 適宜
今回の【染料液】は、
【水1リットル】に【紅茶の葉60g】を入れて煮出しました。
とうぜんコーヒーの時と同様に、紅茶の濃度によって着色の濃さは変わります。
【媒染液(色止め液)】は、
【ミョウバン】と【水】を、上記の工程3と同じ割合で混ぜました。
■染め方は…。
上記「コーヒー染め」の場合と同じです。

ちなみに紅茶染めでは、タンパク処理「あり・無し」の違いも試してみた。
画像左側が、タンパク処理「あり」の生地
画像右側が、タンパク処理「無し」の生地
で、それぞれ同じ紅茶液で1回染め。
結果としては、画像左側のタンパク処理「あり」のほうがあきらかに濃い色になりました。
なお、画像にはありませんが、タンパク処理「あり」の生地くらいの濃さにするために、タンパク処理「無し」の生地を2回染めしてみました。
結果的にはそこそこ近い濃さにはなりましたが、色味が多少異なります。タンパク処理「あり」のほうが少しだけ赤みが強い感じでした。
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以上、生成りの綿シーチングを、雰囲気のある布にするために、コーヒーや紅茶を使って手染めをしてみましたが、いずれもそれなりに味わいのある布に仕上がったとおもいます。
なお、自分の場合は “クシュクシュしたまま” のほうが味わいがあっていいと思うので、あえてアイロンはかけません。
但しその際は、手染めの全工程が終了して布をきれいに洗ったあと、「パン!パン!と音が出るくらいに上下左右から布を引っ張って」から干すと良い感じになります。
緩~く引っ張るだけだと、シワシワのままで乾燥されてしまいます。