家でも作れるという自家製の発酵バターに興味があったので試してみようかと思う。
なにもわざわざ手間暇かけて手作りせずとも、お手頃な価格の既製品もあるし、場合によっては材料の生クリームのほうが高価な場合すらある。
まあ、フランス産の某発酵バターや国産メーカーのこだわったもの比べるとお得だとは思うが…。
ともあれ、自家製の味を試してみたかった。そして何よりも自分で発酵バターが作れるという楽しみがある。

ビンに入った3種類の完成品

ちなみに、発酵バターを作る過程のある時点で終了してしまえばサワークリームとしても使えます。
なので沢山つくった場合、何割かはサワークリームのままにしておいて、あとの残りを発酵バターにまで加工するということも可能。
また、最終的な発酵バターにまで加工した際に出来る副産物のバターミルクですが、そのまま飲んでもでもいいし何かと割って飲んでもいい。そのほかには、このバターミルクを使ってヨーグルトを作ることも可能…。このように、色々と可能性が広がるのは手作りならではです…。

今回は、炊飯器を使ってまず[サワークリーム]を作り、そこから[発酵バター][バターミルク]、さらには[バターミルクヨーグルト]を作ってみることにする。


■発酵器の代わりに炊飯器(ジャー)を使う。

なおヨーグルトメーカーのような発酵器は持っていないので、今回は炊飯器を使用して作ってみる。

炊飯器の中に温度計

サワークリームやヨーグルトを作る際の乳酸菌を活発化させる温度は40~45℃。現在我が家で使用している炊飯器の保温モードだと、蓋を閉じた状態の庫内温度は70℃超。蓋を開けておいても釜底あたりの温度は60℃程。なのでちょっと高過ぎる感じです。そのままでは発酵バター(サワークリーム)やヨーグルトを作ることは難しい。

でも、それなりの工夫をすれば出来る場合もある。
こちら → 炊飯器は「発酵器」の代わりとして使えるのか? のページでは色々な実験をしているので興味のある場合はどうぞ…。
そのページでの実験だと最終的にヨーグルトを作るところまではいけたので、今回はその時と同じ要領で発酵バターを作ってみることにする。

ちなみに、使用する炊飯器(ジャー)や道具によっては出来ない場合もあるかもしれません…。


■生クリームに乳酸菌を加えて発酵バターに。

発酵バターの作り方には、生クリームに乳酸菌を加えて仕上げる方法と、普通のバターに乳酸菌を混ぜて発酵させる方法との2通りあるらしいが、今回は、家で作るときの一般的な方法である生クリームから作るパターンで…。

材料である紙パック入りの生クリーム
■材料

【生クリーム】… 200㏄
【ヨーグルト】… 30g

【生クリーム】は脂肪乳45%のタイプを使用。
【ヨーグルト】は無糖のプレーンタイプ。
色んなレシピを参考にしたところ、加えるヨーグルトの量は、生クリーム200㏄で換算すると15~48gまであったが、その中間あたりをとって30gとした。なお今回使用したヨーグルトは、近所で入手出来るものの中でも酸味の少ないタイプのものをセレクト。

ちなみに、この量の材料を使った場合、下記の方法で作った発酵バターの仕上がり量は100gとチョットでした。


■まずは、サワークリーム作りから。

※なお、以下で使用する道具(材料に直接触れる分)はすべて熱湯及び食用アルコールで殺菌しておく。

生クリームにヨーグルトを加える

.生クリームに、ヨーグルト(種菌)を加えてよく混ぜる。

ガラスやプラスチックの容器に生クリームを移し替えてその中で作ってもいいのですが、この方が楽だし、何よりも雑菌の混入する機会が少なくなるので紙パックの中でそのまま作ることにした。

炊飯器に材料をセット

.発酵器(炊飯器)にセット。

紙パックの上部をクリップで留めて閉じ、発酵器(炊飯器)にセットして発酵を開始します。
発酵は6~8時間くらいで…。
今回に関しては、このあと8時間発酵させました。

なお今回使用する発酵器は、上記の■発酵器の代わりに炊飯器を使う。の項にもあるように、それなりの工夫を加えた「炊飯器(ジャー)」です。
工夫を加えたといっても改造をするという事ではなく、手持ちの道具と合わせただけ…。
同じように行ったからといって、絶対に上手くいくという訳でもないかもしれませんが、ある程度の温度調整方法は、とりあえず上記の項からリンクしているページにて説明しています。ご参考までに…。

8時間後の紙パックの中

.8時間後。

紙パックの角を持って少し潰すようにすると、端部分が容器の内側から剥がれるくらいにまで固まっていました。これがサワークリームです。

このサワークリームの時点で終了にするという場合は、粗熱が取れたらそのまま冷蔵庫に入れ、1~2日間くらい熟成させたら完成…。

なお、冷蔵庫に入れておく際にはしっかりと密閉させておく。
今回は、紙パックの上部を閉じたあと、さらに上からラップで覆い、上部が開かないようにクリップでしっかりと留めてから冷蔵庫に入れておきましたが、もし、サワークリームで完成にしておくという場合は、殺菌した密閉容器にこの時点で移し替えておいてもいいかもしれない。


ボウルに入れるサワークリーム

1~2日間熟成させたあと。

今回は発酵バターにまで加工するので、1日半ほど熟成させたら冷蔵庫から出し、ボウルに移して下記の作業へと進みました。

ちなみにサワークリームの状態はというと、紙パックから出してもほぼ塊のままで、タラーっと流れるという事もないくらいしっかりとした固さです。


■ここから発酵バターに。

なおこの作業では、バターを作った際の副産物である「バターミルク」も同時に出来ます。

サワークリームを泡立て器で撹拌

.サワークリームを撹拌。

上記の方法で出来たサワークリームを泡立て器などを使って撹拌します。

材料が分離した状態

.分離したら撹拌終了。

泡立て器で衝撃を与え続けると、このように固形(発酵バター)と液体(バターミルク)とに分離します。

撹拌作業にかかった時間は計り忘れたので何となくにはなりますが、画像のように分離するまで十数分かかったと思います。

ボウルを傾けた状態

固形(発酵バター)の部分だけを一方に寄せ、ボウルを反対側に傾けると液体(バターミルク)がけっこう出てきます。

容器に分けるバターミルク

※今回のバターミルクは再利用するので、この時点で取り分けておいた。

ところで、分離したこのバターミルクですが、
ヨーグルトやサワークリームを作る時の種菌として再利用することが出来ます。つまり工程1でのヨーグルトの代わりです。

ということで今回は、この時点のバターミルクをスプーンですくい取り、茶漉しで濾して40gほど取り分けておきました。あとでヨーグルトを作る際の種菌として使う予定なので…。
取り分けたものは容器に入れて一旦冷蔵保存しておきます。
この時点で取り分けておいた理由は、このあとの工程6ではさらしなどの布でバターミルクを濾すことにしますが、そうすると、布の繊維に浸透している目に見えない何かのカスや成分などが混ざる可能性もあるかなと思ったので…。
このバターミルクを種菌として再利用した時にヨーグルト作りが失敗(腐敗)しないよう、雑菌が混入しやすそうなイメージのある方法はとりあえず避けておいただけです。さらしで濾したら絶対にダメという訳ではなく、あくまでも念の為…。
もちろんここで使用した道具や容器は直前に殺菌してあります。

※濾したバターミルクを種菌として使わないのであれば、この取り分けておく作業は飛ばして、いきなり下記工程6のさらしで濾して絞る作業へ…。

バターミルクをさらしで濾して絞る

.バターミルクをさらし(又はガーゼ)で濾して絞る。

ザルなどの上でさらし(又はガーゼ)を広げ、その中に分離した材料を全部を入れて液体(バターミルク)を濾します。
そのあと、さらしを巾着のように束ねてギュ~ッと絞り、完全に水分(バターミルク)を切ります。
※ここで使用したさらしは、熱湯で茹でて殺菌してから片付けておいたものです。

なお工程5においては、あとで種菌として使用するバターミルクをさらしに通すのは念の為避けておきましたが、すぐに飲んでしまうのであれば、このようにさらしで絞ってあったとしても問題はない。
例えると、さらしで絞った野菜や果物などのジュースと同じようなレベル…。というか、こうやって食品を濾すのはさらし本来の使い方でもあるので…。

固まった発酵バター

ちなみにこのあと「取り出したバターを氷水に浸けて、その中でネリネリしながら中に残留しているバターミルクを洗い出す。」というレシピもあったので氷水を用意しておきましたが、余計なものに触れさせるのもなんとなく嫌だったので直前でやめました。
水で洗って乳清の酸味を落とすというような感じだったのですが、酸味の少ない部類のヨーグルトを種菌として使ったせいか、出来たバターの味見をした限りではほぼ酸味もなかったし…。しかもせっかく発酵させたのだから…。

ペーパーで水分を吸い取っておく

.さらに水分を吸い取っておく。

水分量が多いと腐敗しやすくなるらしいので、キッチンペーパーに挟んでギュッと押し潰し、染み出してくる水分はとりあえず吸い取っておきました。

なお、有塩バターにしたい場合はこのあとすぐに塩を混ぜてネリネリする。
この時点だとまだ柔らかいので混ぜやすいです。

でも今回は、無塩で完成としておくことに…。

密閉容器に入った発酵バター

.密閉の出来る容器などに入れて1~2日間熟成。

冷蔵庫内で1~2日間熟成させると完成。

なお、冷蔵庫に入れておく際には、密閉の出来る容器に入れるかラップに包むかなどしておく。

発酵バターを塗ったトースト

ちゃんとバターでした。

とりあえず自宅てバターが作れました。
そのまま舐めてみると、ほんのりとヨーグルト風味のある普通に美味しいバターでした。

なお、上記の工程では塩を混ぜなかったので塩味はありませんが、トーストに塗った時に塩味が欲しいという場合は、パンに塗る時にほんの少しだけ塩をのせてパンの上で混ぜながら伸ばすといいかも。

ところで、今回は生クリームからバターを作りましたが牛乳からでも作れるらしい。ただしノンホモ牛乳が必要となる。
本当は、最初からノンホモ牛乳を材料にして作ってみたかったんだけど、近所にはなかったしネット購入だと割に合わないので今回はやめておいた…。
ちなみにノンホモ牛乳とは上に固形物が浮いてくるタイプのやつ。固形物といっても怪しいものではなく生クリームです。
以前、牧場から買ってきて飲んだ時は美味しすぎて感動でした。


■バターミルク。

このバターミルクは、発酵させて作ったサワークリームからとれたものなので、発酵した際に増えた乳酸菌も入っています。
今回取り出した量は下記の通りで、40+55gの【合計95g】となっています。

密閉容器に入ったバターミルク

殺菌した密閉容器に入れて冷蔵庫内で保存しておくと、直近であれば、発酵バター(サワークリーム)やヨーグルトを作るための種菌(ヨーグルトの代わり)として再利用することが出来ます。

なお画像のバターミルクは、上記工程5の時点で取り分けておいた40gの分。
今回はすぐに発酵バターを作るつもりはないですが、このあとすぐに「バターミルクヨーグルト」を作るのでそのために使います。

長期保存はきかないので、すぐに使わない場合は速攻で飲んでしまうか、お菓子作りや料理などに使うなどする。

計量カップに入っているバターミルク

そしてこの計量カップに入っているものは、上記の40gのバターミルクを取り分けたあと、さらに工程6にてさらしで濾したバターミルクです。
まあまあな量(測ってみると55g程)があったので、このあと容器に移して冷蔵庫に入れておきました。
さらし本来の使い方で絞ったものなので、飲んでも大丈夫です。

ヨーグルトの乳清が混ざっているのでそこそこ酸っぱいのかなと思っていたのですが、あとで飲んでみたところ、ほんの少しの酸味がある程度で、思ったほどではなかったです。なおこの酸味の強弱は種菌に使用するヨーグルトによっても違うとは思う。

ともあれ、このあと種菌として再利用するにしても飲むにしても、上記の工程3までの発酵が成功している(腐敗していない)ことが前提です…。


■バターミルクヨーグルトを作る。

さらしで濾してないほうのバターミルク(上記の工程5で最初に取り分けておいた分)」を種菌として用いてヨーグルトを作ってみます。
材料は【牛乳400㏄】【バターミルク40㏄】

ちなみにここで使用する牛乳は、ミルク感が濃くてお気に入りのパスチャライズド牛乳です。ただし低温保持殺菌(63~65℃で30分間)のほうではなく高温保持殺菌(75℃で15分間)タイプのほう。とは言えパスチャライズド牛乳ではあるので固まるのかが心配…。
最も一般的な超高温瞬間殺菌(120~150°Cで1~3秒間)とは違い、低温殺菌牛乳(パスチャライズド牛乳)では固まりにくいので一旦90℃以上に加熱する必要があると何かで見たので…。
しかも、種菌として使うのがヨーグルトではなくバターミルクだし…。でも、とりあえずやってみる!

容器に牛乳を入れる

.容器に牛乳を入れる。

まずは、容器やスプーンなどの道具を殺菌しておきます。殺菌方法は煮沸でも食用アルコールでもやり易いほうで…。
そして、その容器に【牛乳400㏄】を入れます。

牛乳にバターミルクを混ぜる

.牛乳にバターミルクを混ぜる。

牛乳に【バターミルク40㏄】を加えてよく混ぜておきます。

材料を炊飯器で発酵

.6~8時間発酵させる。

もちろん、ここでも炊飯器を発酵器として使用しました。
発酵中は1時間おきに温度を確認しましたが、大体39~45℃の間を行ったり来たりで超順調でした。
なお、この日の室温は23℃。室温によっては温度が低かったり逆に高かったりするはず。その時は道具を使って温度調節を…。
その方法はこの前のページにて…。

ちなみに、今回発酵させたのは7時間。
6時間くらいあたりから固まってきているような感じがしたので、そこから1時間で終了にしてみた。

完成したバターミルクヨーグルト

.発酵が終了したあとは、冷蔵庫で保存。

発酵が終了したら粗熱を取り、そのあと密閉の出来る蓋をして冷蔵庫内で保存します。

バターミルクヨーグルトをすくう

バターミルクヨーグルトの完成。

冷蔵庫から出して翌日試食。

種菌として使ったのがヨーグルトではなくバターミルクで、しかも材料がパスチャライズド牛乳だったので心配していたけど、ちゃんと固まってくれてよかった…。目的は達成です…。

ただ、完成したヨーグルトの表面(上部)には、バターが少しだけポツポツと浮いた状態で固まっていました。さらに表面は薄っすらとバター色…。
どうやらバターミルクを茶漉しで濾す過程において、細かいバターが完全に濾しきれていなかったようです…。
でもそのおかげで、最初にスプーンですくった表面のあたりが最も美味しかったような気がする…。
少しのバターが口の中で溶けて、そのコクが広がる感じです。
今回は意図せずに入ってしまいましたが、少しであればあえてバターを入れてもいいのかな…。(表面で薄い層になるかもしれない。)
なお、その下にある多くの部分においても、ヨーグルトにしてはミルキーでとっても美味しかった…。

ちなみに今回発酵させたのは7時間でしたが、ちょっと柔らかめだったのでもう少し長めの8時間でも良かったかもしれない。
あと、牛乳400gに対してのバターミルクの量を、今回の40gから50~60g程に増やしても良いかもしれない…。
かと言って今回の分も普通に美味しいのですが…。


以上、炊飯器(ジャー)を使って「サワークリーム」を作り、そこから「発酵バター」「バターミルク」そして「バターミルクヨーグルト」を作ってみた。

なお、これらの消費期限は詳しく分かりませんが、手作りで防腐剤などが入っていないため数日以内には消費してしまう予定…。
ただこれは上手くいった場合であって、雑菌が入って腐敗したような感じになってしまった(変な臭いになった、変な見た目になった、そのほかにも何かしらの違和感がある)という場合はもちろん最初から消費はしない。
もったいないですけど廃棄が原則です。腐敗と発酵は紙一重なので十分な注意は必要…。
まあこれに限らず、食べ物すべての常識ですが…。

何はともあれ、今回のように炊飯器を発酵器として使う方法の欠点は、数時間もかかる発酵中には本来の目的であるご飯が炊けないこと…。
ヨーグルトメーカーは必要ないと言おうとしたが、発酵の楽しさを体感してしまって発酵食品を作る機会が増えてきたら、逆にヨーグルトメーカーのような器具が欲しくなるかもしれない…。


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