眼鏡の購入時には その眼鏡を入れておくためのケースをサービスされることが多い。
まずいくつかのタイプを見せてもらい、中から好きなものを選ぶことになると思うが、自分の場合はしっかりと保護したいのでほぼハードケースを選んでいる。

現在メインで使用中の眼鏡を入れているケースもサービスで頂いたものでハードなタイプ。デザインが気に入ったのでそれにした。
ただ、眼鏡との相性は良くないし使い勝手も悪い。
眼鏡がちょっと大きめなせいもあって奥行が多少狭い。そのため眼鏡を無理やり押し込む感じとなってしまいヒンジの部分が変形しないか心配になる。
そのわりには厚さだけはあるし角がカクカクしているし、小さなバックに入れて持ち運ぶ際などにはけっこう邪魔に感じることがある。

ということで、眼鏡のサイズにもピッタリでバックなどにも入れておきやすいような薄めのケースをレザークラフトで作ることにする。
もっとも、ハードケースとは違って外圧には弱いのであくまでもレンズのキズ防止と多少の保護用とはなるが、とりあえず強度という点は一旦おいといて、薄さ優先のケースに取り替えてみようかと…。
あと、本革だと雰囲気もあるし…。


■カットして縫うだけの簡単なレザークラフト。

基本的には、型紙通りに革をカットして本体の両サイドを縫い合わせる構造の、簡単に作れるソフトケースです。少しでも薄くするためにと、耳に掛ける部分はケースの中に入れないデザインにしています。
※ちなみに、折りたたむと小さくなる眼鏡の場合は、ほぼ全体が入ります。

材料の牛革のハギレとギボシ
■材料

【牛革(ヌメ革)】… 1.5mm厚
【ギボシ(真鍮製)】… 頭径6.5mm
【縫い糸】… ビニモMBT5
【ボンド】… 今回はゴム糊

レザークラフトなので今回は革を使いますが、レザー以外ではちょっと厚めの羊毛フェルトやその他の硬めな不織布などで作るのもいいかもしれない…。
その場合、留め具はギボシではなくホックにするといい。

■型紙


本体の型紙

●本体の型紙
ここでは4mmピッチの縫い穴の位置も記してありますが、これは有っても無くても良い。
ただこのあと、せっかく型紙テンプレートを作るので今回は記しておいた。そのほうがあとの作業がはかどるしミスもしにくくなる。また、2個目以降も作りやすいし…。

ギボシの頭をはめる穴(図面上部)の径はギボシのくびれの径と同じにするのがいいらしいが、革の厚さ硬さ・ギボシの形状・止め外しのしやすさ、などもあるので、一旦ハギレで試してから穴の径を決めるのがいいと思う。
なお図面下部のギボシ取り付け用の穴は、軸(ネジ)の径と同じくらいで

鼻あて部分の型紙

●鼻あて部分の型紙
図面上部のパーツは鼻あて部分。
図面下部のパーツ(2個1セット)は上部パーツの補強用です。この補強用のパーツは有っても無くても良いが、あったほうが鼻あて部分の形がキレイになるし、また、ケースが完成した時に鼻あて部分が潰れにくくなり、結果的にケースの補強にもなる。
イメージは、下部の工程6~7の画像参照。

■作り方


試作をしてみたもの

まずは試作をしてみる。

レザーは比較的高価な材料なのでハギレといえども失敗するとちょっと悲しい。
そうならないためにも紙のように安価なものでいくつか試作してみるといい。
その試作したものに自分の手持ちのメガネを入れてみて、窮屈もしくはブカブカであれば、程よいサイズとなるように図面を調整する。

とりあえずは紙に型紙を描いてそれで作ってみる。このとき、方眼紙だと製図しやすいので便利。
なお、ドローソフトやCADソフトなどがあればそれで型紙を描いてプリントアウトするとより楽。

カットした型紙テンプレート

.型紙テンプレートを作る。

型紙が決まったら紙に正式に描いてそれをボール紙に貼り付ける。もしくはボール紙に直接製図をして型紙を描く。
なお、ボール紙に直接製図する場合は方眼ボール紙が便利。

そのあと、アウトラインでカット。

丸ギリを使って穴を開けてある

さらに、縫い穴を記したところに丸ギリを刺して穴を開けておく。
そしてギボシ用の2カ所は、それぞれ最適なサイズの穴あけポンチを使って穴を開けておく。

革に写した型紙のあと

.革に型紙を写す。

革に型紙テンプレートを当てて、アウトライン・縫い目の位置・ギボシ用の穴の位置を写します。

カッターで裁断中

.革を断裁。

写したアウトライン通りに革を裁断します。

アウトライン通りに革を裁断

そして、穴あけポンチを使って、2カ所あるギボシ用の穴を開けます。
上部の穴はギボシの頭をはめる用で今回は径5mmのポンチを使って、下部の穴はギボシ取り付け用で径3mmのポンチで開けてある。

コバを仕上げている

.大きい曲線部分だけ、コバを仕上げておく。

このあと両脇を縫い合わせてしまったら、この部分(特に両端)のコバ仕上げが出来なくなってしまうので、この時点で先に仕上げます。

まずヘリ落としで角を取り、そのあとコバ処理剤を塗って磨いておきます。

底部分を曲げている

.底部分を曲げておく。

このあとの工程で 鼻あて部分のパーツを本体の内側に取り付けますが、そうなると、ケース底部になるところに“曲げあと”を付けるのが難しくなってしまいます。
なのでパーツを取り付ける前に、底部となるところ全体を押さえて“曲げあと”を付けておく。特に両脇はギュッと…。

補強のパーツを貼り付けた鼻あて

.鼻あて部分の裏面に補強のパーツを貼り付ける。

鼻あて部分のパーツ裏面に補強パーツをボンドで貼り付けておく。
そうすると、組み立てた時に穴あて部分の形がキレイに出ます。
また、鼻あて部分のパーツが硬くなるため、ケースを上面から押さえた時に潰れにくくなってくれて多少は眼鏡を守ってくれるようになる。

本体内側に縫い付けた鼻あて

.本体内側に鼻あてパーツを縫い付ける。

まず、本体と鼻あてパーツを裁断する時にテンプレートを当てて写しておいた縫い穴の印のところに丸ギリを刺して穴を貫通させる。
そして、そのお互いの穴の位置を合わせ、糸で縫い付けます。

なおこの前後で、ギボシも取り付けておく。
今回使用するギボシはネジで固定するタイプです。使用しているうちにネジが緩まないように、ネジの先にボンドをちょっとだけ付けてから留めておく。

縫い合わせる所にボンドが塗ってある

.縫い合わせるところをボンドで固定。

両脇の縫い合わせるところの内側にボンドを塗り、貼り合わせて固定します。

ここではゴム糊を使いました。ゴム糊の場合は貼り合わせる両側に薄~く塗ります。
そしてある程度乾燥させたら、シールを貼るようにして合わせ、上から強く押さえて圧着します。

菱目打ちを刺して穴をあけている

.縫い穴を開ける。

型紙テンプレートで印を付けたところに菱目打ちや菱ギリなどを刺して縫い穴をあけます。

なお、イラストのように一番下の縫い穴だけは菱目打ちでは開けません。下記の工程10を参照。

丸ギリで開けている両端の穴

10.縫い始めと縫い終わりの穴は丸ギリで開ける。

縫い目の始めと終わりである両端の2カ所は丸ギリで穴を開けます。
なおその内の1カ所は、画像の様に革が2枚重なった部分の端の外側へさらに追加となる。
この穴の位置は、縫い目のピッチを見てバランスのいい所に開ける。
今回は菱目打ちのピッチが4mmなので、それに合わせて一番上に開けた菱目打ちの穴の4mm上に開けておきました。

縫い合わせている

11.縫い合わせる。

縫い始めは、まず上部の端から2個目の穴(菱目打ちで開けた一番上の穴)に針を刺します。
そこから縫い目1つ分を返し縫いし、そのあと普通に縫っていきます。この返し縫いによってこの端部分がしっかりと留まります。

なお縫い終わり部分は、糸が解けにくいように3つの縫い目を返し縫いしておきました。

サンドペーパーでコバを整えている

12.サンドペーパーなどでコバを整える。

サンドペーパーなどを使い、コバ(裁断面)のガタガタしているところや貼り合わせた部分の段違いなどを削ってキレイに整えます。

画像のサンドペーパーは、ステンレスの物差しに巻きつけてヤスリの様に使えるようにしてあります。

コバを仕上げたところ

13.コバを仕上げる。

サンドペーパーなどでコバを整えたあとは、
ヘリ落としで角を落とし、コバに仕上剤を塗って、コーンスリッカーや布などで磨きます。

ギボシ用の穴に切り込みを入れている

14.ギボシ用の穴に切り込みを入れる。

ここは両刃の刃物で開けること。
片刃の彫刻刀などで開けるとセンターがずれてしまう場合があります。

完成した革製の眼鏡ケース

以上で完成です。

眼鏡を収納する時は、画像のように耳に掛ける部分がケース外側に出るようにします。

ちなみにですが、フレームの細い手持ちの眼鏡を試しに収納してみたら、耳に掛ける部分も余裕でケース内側に入れることが可能ではありました…。


以上、牛革のハギレを用いて「眼鏡ケース」を手作りしてみました。

使用中のハードケースよりもまあまあ薄くなったので、小さくて薄いバックにも多少は入れやすくなると思う。
そしてなによりも、サービスで頂くものとは質感がまったく違うし、真鍮のパーツも雰囲気があっていい感じ。もちろん本革なので、この先使い続けていくとさらに味わいが出てくるはず…。
また、眼鏡屋さんの名前が記されていないというのは所有感がちょっと高まる気がする…。

とりあえず型紙テンプレートも作ってあることだし、次は黒のレザーでもうひとつ色違いを作ってみようかな…。おそらく黒に真鍮という組み合わせも絶対に渋いと思う…。

ただ、ソフトケースなので完全防御ではないが…。


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