「温熱乾燥と温燻の出来る そこそこ大きい箱型の燻製器」を製作し、それでスモークベーコンを作ろうかと以前から思ってはいたものの、そのための資材やパーツなどを揃えたりするのがなかなか面倒でずっと作らずじまいでいた。

ちなみに、フライパンとボウルと焼き網を使って簡単にスモークするベーコンは以前に試してみたことはあるが、それだと温度調節が難しいので、どうしても高温で短時間にスモークする「熱燻」になってしまう…。
まあ、それはそれでジューシーで全然美味しいんだけど、やはり、本格的なスモークベーコンの場合は、じっくり「温熱乾燥」のあとじっくり「温燻」だろうと思い、それが出来る燻製器が欲しかった。

でも、発想を変えてみたらフライパンとボウルでも「温燻」が出来るかもしれないと思い簡単なテストしてみたところ、そこそこ出来ることがわかった。
その簡単な方法だと、じっくりと時間をかけて作る「温熱乾燥&温燻」も出来るし、もちろんフライパンを使うので短時間で簡単にジューシーなスモークベーコンが作れる「熱燻」も可能。
そして簡単なパーツで製作することが出来る。

そこで、その両方が出来る燻製器(スモーカー)を、すぐに使えるキッチン道具としてちゃんとかたちにしておくことにした。
常備しておけば“くんたま”や“スモークチーズ”なども気軽に作れるようになると思うし…。


■手持ちのフライパンと簡単な材料で燻製器(スモーカー)を作る。

燻製器の資材やパーツたち
■材料

【鉄フライパン】深めのタイプ
【ステンレスボウル】フライパンと同じ径で
【温度計】
【焼き網】
【ステンレスパイプ】
【ステンレス板】ここでは厚さ0.3mmの板
【チェーン】分解出来るタイプ
【金属製取っ手】ここではアルミ製
【ボルト】金属製取っ手の取付け用
【細い鉄の丸棒】ここでは太さ2mmの棒
【細いボルト・ナット】窓蓋の取付け用
【プランタースタンド】高さ15cmのタイプ

【フライパン】特に熱燻法では空焼き状態になる場合もあるので、鉄フライパンなどのように金属素材そのままで表面加工がされていないもののほうがいいかもしれない。
【ステンレスパイプ】今回は、手元に偶然あった径10mmのパイプを使用したが、もう少し太くてもいいかも…。

■作り方


ボウルの底に貼った図面

.ボウルの底に開ける穴の位置を決める。

取っ手取り付け用の穴 2カ所
中心の大きな窓 1カ所
窓蓋の軸用の穴 1カ所
温度計差し込み用の穴 1カ所

センターポンチの打ち方

穴を開けるところにはセンターポンチを使って跡を付けておく。
この時、ボウルの下(内側)には木のブロックを置いて、ボウルがグニャと変形するのを防止。

なお、このあとドリルで穴を開ける時も、同じようにブロックを置いた状態のままにしておく。

ドリルで開ける穴位置

.ボウルの底に穴を開ける。

4箇所の小さい穴は…
センターポンチで付けた跡にドリルの先をあてて、そのまま普通に開けるだけ。

中心の大きい穴は…
まずセンターポンチで付けた跡を中心にして、開けたい大きさの円をケガキコンパスなどで罫書く。
その円の内側に連続してセンターポンチで跡を付け、そこにドリルで小さい穴を開けていく。

つながった部分をニッパーでカット

そして、その連続して開けた穴どうしの間のつながった部分をニッパーでカットして大きな穴にする。

穴内側のギザギザを削ったキレイな円

次に、電動ドリルの先に軸付砥石を取り付け、その回転させた砥石で穴内側のギザギザを削ってキレイな円にします。
そのあと、砥石で削った部分のバリを、サンドペーパーやダイヤモンドヤスリなどを使って除去し、最後に目の細かいサンドペーパーで磨いて穴の内側をツルツルにしておく。
もしバリが残っていると、洗う時に手が触れたらケガをする恐れがあるので、とにかくツルッツルにしておく。

金切りばさみでアウトライン通りにカット

.窓用の蓋を作る。

ボウルの底(燻製器にしたときは最上部)の中心に開けた穴(窓)用の蓋を作ります。

まず、金切りばさみを使って、製図したアウトライン通りにカット。
そのあと、テーブルなどの上に目の粗いサンドペーパーを置き、そこにカットしたガタガタな外周を押し当てながら削っていってアウトラインをキレイに修正します。
最後にバリを取って、目の細かいサンドペーパーでツルツルに外周を磨いておく。

そして、細いボルトをさし込んでおくための小さい穴をあけます。ここにさし込むその細いボルトは、この蓋を開閉する際の回転軸となります。

ステンレスパイプをカット

.スペーサーを作る。

ステンレスパイプをカットして、温度計の高さを決めるためのスペーサーを作ります。

揃ったパーツたち
スペーサーに温度計の棒を穴に差し込む

.パーツが揃ったら組み立てる。

取っ手は、取り付け用のボルトを2つ使って固定します。

窓用の蓋は、まず軸となる穴の位置を合わせ、そこに回転軸となる細いボルトを差し込み、裏からナットで留めておきます。

温度計は、まず高さを決めるためのスペーサーを穴の上に置いてから、温度計の棒の先を穴に差し込みます。

鉄の丸棒とチェーン

.鉄の丸棒を加工。そしてチェーンをばらす。

鉄の丸棒を画像のようにコの字状に加工し、両端をくるっと曲げておく。

そして、ペンチなどを使ってチェーンのコマを開いて、4コマ分をバラバラに分解しておく。

完成した焼き網置き

.焼き網置きを作る。

コの字状に加工した丸棒を横に3つならべ、先のくるっと丸めたところに、ばらしたチェーンのコマを引っ掛けて3連に連結させる。
そのあと画像のようにコマを閉じて(元の形の小判型に戻して)おく。
なお、3連に連結した最両端のそれぞれにもチェーンのコマを1つずつ取り付けてあるが、そのうちの1コマは元の形(小判型)に戻し、もう1コマはフック状にしてある。
以上で焼き網置きの完成です。

焼き網置きの取り付け方

.フライパンに焼き網置きを取り付ける。

まず画像のように、焼き網置きをフライパンの周囲に這わせるようにする。
そして、3連の両端に設けたフック状のコマを小判状のコマに引っ掛けて固定させる。

取り付けた様子のフライパン

フライパン上部に張られた3本の丸棒の上が、焼き網を置いておく所となります。

バーナーで塗装を焼き切る

.プランタースタンドの塗装を焼き切る。

今回は、高さ15cmのプランタースタンドを三脚台として使用することにした。

なお、ガスコンロで加熱中に塗装が焼けて臭くなるのは避けたいので、使用する前に表面の塗装は焼き切っておく。

塗装を焼き切ったプランタースタンド

そして、表面に焼け残った塗装のカスはワイヤーブラシなどで擦って除去しておく。

完成した1セット

■以上で1セットとなります。

画像のように、
・焼き網置きを取り付けたフライパンと焼き網。
・温度計などを取り付けたドーム(ボウル)。
・三脚台(プランタースタンド)。
以上の3つで構成されます。


■「熱燻法」も「温燻法」も出来るスモーカー(燻製器)。

2パターンの燻製方法

●左が熱燻法の時のセッティング
三脚台は不使用

●右が温燻法や温熱乾燥の時のセッティング
三脚台を使用


■まずは「熱燻法」を行う際の構成と準備。

熱燻法のセッティング

【熱燻する際の構成】 ガスコンロ・燻製器
使用する時は、フライパン(燻製器)をガスコンロの五徳にそのまま直接のせる。(三脚台は不使用)
【庫内温度】 弱火でも120℃以上になると思う。我が家のガスコンロで試したらとろ火~弱火で140℃くらいになりました。
※室温20℃位で試した場合。

袋に入ったスモークチップ

【準備する燻煙材】
熱燻法の場合は、燻煙材としてスモークチップが向いています。

【スモークを発生させる方法】
一握りほどのスモークチップを、フライパンの鍋底に直接のせるか、もしくは鍋底にアルミホイルを敷いてその上にのせる。
スモークチップに直接火は付けないで、フライパンの鍋底の熱で焦がしてスモークを発生させる感じ。
※方法によっては直接火を付けることもあるが、この燻製器の場合は直接付けない。


■次に「温燻法」を行う際の構成と準備。

温燻する際の構成

【温燻する際の構成】 ガスコンロ・燻製器・三脚台
使用する時は、フライパン(燻製器)とガスコンロの間に高さ15cmの三脚台を設置。

【庫内温度】
●燻煙材を使用しないで「ガスコンロのとろ火~弱火」だけにすると50~60℃位に保つことも可能。
この、燻煙材(けむり)を使わない50~60℃位だと温熱乾燥に最適。
●「燻煙材」と「ガスコンロのとろ火~弱火」を同時に使用すると65℃~80℃に保つことも可能。
ちょうど温燻に最適な温度です。
※いずれも室温20℃位で試した場合。

ちなみに、我が家で使用のガスコンロに新品のカセットガスを使用した場合「とろ火~弱火」だと、その1本で6時間は余裕で持ちました。

五徳と三脚台を針金で固定

ガスコンロの五徳と三脚台(プランタースタンド)の大きさや形状によっては、のせた時にサイズギリギリになる場合もあります。
その場合は、何かの拍子でずれ落ちたりしないように、針金などでしっかりと固定しておく。

スモークウッド

【準備する燻煙材】
温燻法の場合は、燻煙材としてブロック状のスモークウッドが向いています。

【スモークを発生させる方法】
上記の熱燻法ではスモークチップをフライパンの熱で焦がしたが、ここでは直接火をつける。
それを、フライパンの鍋底に直接のせるか、アルミホイルを敷いてその上にのせる。
場合によっては、フライパンの鍋底に低い網台を置いてその上にのせる。下部参照。


■「温燻法」での庫内温度の調整方法は…。

温燻法では、50~80℃の温度で食材をスモークするとされているので、以下の方法でその温度になるように調整します。
なお、燻煙材を使わないで(けむりを発生させないで)温熱乾燥をするだけの場合は、下記の「温度調整方法その2・その3」以外の方法で…。

ガスコンロの弱火

温度調整方法その1

状況に応じてガスコンロに点火(とろ火~弱火)したり消火したりして庫内温度を調整します。

【ガスコンロに、点火(とろ火~弱火)】する時は…
・温熱乾燥の時。(燻煙材不使用の時)
・スモークウッド(燻煙材)を使用しても、目的の温度に達成しない時。

【ガスコンロを、消火】する時は…
・スモークウッド(燻煙材)の火力だけでも十分に温度が高い時。

フライパンの中のスモークウッド

温度調整方法その2

スモークウッドの個数・サイズ・燃やす箇所(燃焼部分の面積)の違いによっても火力は変わってきます。

網台にのせた場合とのせない場合

温度調整方法その3

スモークウッド使用の場合。
ガスコンロの使用・不使用にかかわらず、燃えているスモークウッドを網台にのせると、下に降ろしている場合よりも比較的燃えやすくなるため火力も強くなって庫内温度は上がります。

※燃えているスモークウッドを網台にのせた場合にガスコンロの火も併用すると、庫内温度は軽く80℃を超えて熱燻になってしまう場合もあるのでそこは様子を見ながら…。
なお、庫内温度を下げる時は…、ガスコンロの火を消す。スモークウッドを網台から降ろす。スモークウッドのサイズを検討してみる。

アルミホイルで覆った様子

温度調整方法その4

少しでも庫内温度を上げたくない場合は…
前もってフライパンの内側をアルミホイルで覆っておく。この時アルミホイルは、フライパンの内側にあまりピタピタには貼り付けない。

このようにすると、フライパン表面からの輻射熱が多少遮られて温度上昇を若干減らせます。
また、内側をアルミホイルで覆うことによって、フライパンに燻煙の臭いが付着するのを防止する効果も得られます。
※なおこの作業は、必ずフライパンが冷たい状態の時に行う。

上の窓蓋を開けた様子

温度調整方法その5

調理中に庫内温度を下げたい場合は…
・右画像のように、上の窓蓋を開ける。
・左画像のように、ドーム(ボウル)自身を少し横にずらす。
・ドーム(ボウル)を一旦持ち上げて数秒ほど完全に外してみる。
・一旦ガスコンロを消火する。

なおスモークウッドを燃焼中の場合、ドーム自身を横にずらすとその時は庫内温度は多少下がりますが、逆に酸素が供給されてスモークウッドの火力が上がり、庫内温度も上がる場合もあります。
この現象をうまく使って庫内温度を上げ下げすることも出来ます。

以上、その場所の気温や室温などを鑑みながら、上記5つの方法を併用して庫内温度を調整することになります。


今回は、熱燻も温燻も出来る燻製器(スモーカー)を自作してみました。

そんなに馬鹿でかくもないので普通にキッチン内のどこかに常備させておくのもいいかも…。
そうすると、思いついたらすぐスモーク(燻製)ということも簡単になって、ベーコン作りに限らず、卵やチーズやソーセージその他いろいろな食材の燻製を比較的気軽に楽しむことが容易に…。
ただ大きな箱型の燻製器のように大量にはスモーク出来ませんが…。

ともあれ、キッチン道具が1つ増えた感じでちょっとうれしいかも…。
ただ煙はちょっと臭いけど…。
とにかくキッチンでするなら換気扇の真下。もちろん強で!… あと、窓は開けておくといい…。


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