鍵と言えばスマートキーというクルマが最近多い。それらのスマートキーはカバンやポケットなどからいちいち取り出さなくてもクルマを始動させることが出来るのでとても便利。

そんなスマートキーですが、つくりとしてはプラスチックの部分が大半を占めているものが多く、使用していくうちにけっこう細かいキズが付いてくることもある。
最初キレイだったものがだんだんとキズだらけになっていくのはちょっと悲しいもの。それを防止するため、様々なメーカーから色々な種類の専用ケースが販売されている…。
それらの中には「スマートキーを革でピッタリとした状態で包み込むタイプのケース」もあって以前から欲しかったもの…。
今回はそのタイプのスマートキーケースをレザークラフトの技術で手作りしてみることに…。

なおキズ防止以外には、落下時の衝撃から守るための役目も多少はあるし、あとイメージチェンジのためもある…。


■「スマートキーケース」を手縫いで作る。

クルマのメーカーによってスマートキーの形状はとうぜん異なる。なのでそれを入れるためのケースの作り方も細部で多少異なってくるとは思うが、基本的な作り方はどこのメーカーのスマートキーであってもおおむね同じだと思う…。まあ、すべてを確認したわけではないので何とも言えませんが…。
なおここでは、ホンダのスマートキーに合わせて作ります…。

今回使用する革の色は黒…。最初はキャメルやナチュラル色のほうがいいかなとも思ったが、傷だらけになった場合のメンテナンスのしやすさを考えると黒のほうが良いかなと…。

材料の革と糸とトコノール
■材料

【革(タンニンなめし)】… 1.5mm厚
【糸】… 今回は、エスコード中細
【コバ処理剤】… 今回は、トコノール
【ボンド】… 今回は、白ボンド

パーツ
【組ネジ】… 9×6mm(真鍮製)
【二重リング】… 外径29mm(真鍮製)
■今回使用した道具

【PPシート】… 1mm厚
【ボールペンの芯】
【食品用ラップ】
【カッター】
【別たち】
【ターンクリップ(ダブルクリップ)】
【菱目打ち】
【ポンチ】
【サンドペーパー】… 320番
【デバイダー】
【縫い針】
【菱ギリ】
【コバ磨き】
 その他、下記の文中にて記載。

■作り方


PPシートで作った型枠

.PPシートを用いて“革絞り用の型枠”を作る。

まず、スマートキーの大きさに合わせてカットしたPPシートを2枚用意する。
※PPシートの大きさは、下記の工程5・工程6の画像を参考に…。周囲をターンクリップで挟んだ時、ターンクリップの先が奥まで位置することが出来る大きさ。

●次に、PPシートの中心にスマートキーを置いてその周りをなぞって形を写します。
その写す形は、スマートキーの外径から2mm外側に大きくなるようにする。(つまり縦横の大きさがスマートキーよりも4mm大きいということ。)
その方法は、まずボールペンの芯だけを用意し、その芯にテープをグルグルと巻き付けて直径を4mmの太さにする。その径4mmの芯で外周をなぞるとスマートキーの外径より2mm外側に大きくなった線が引ける。

●そして、その写した形をカッターなどでくり抜きます。ガタガタになっている場合はサンドペーパーで滑らかに…。

スマートキーに合わせてカットした革

.革を裁断する。

スマートキーの上下左右に15~20mm余裕を持たせたくらいの大きさで革を裁断する。

食品ラップで包んだスマートキー

.スマートキーをラップで包む。

このあとの作業で中に水や湿気が浸入しないようにスマートキーを食品ラップで包みます。
なお包む前には中の電池を外しておく。

水に浸して軟らかくしている革

.15分ほど革を水に浸す。

革を軟らかくするため水に一旦浸します。
15分くらい経つと水分を吸収して軟らかくなっているはずです。
※なお、革によっては結構な時間水に浸す必要がある場合も…。
もういいかなという目安は、●革が水の底に沈むようになるまで。●革の銀面(オモテ面)が水を弾かなくなるまで。

そして、革が軟らかくなったら取り出して、オモテ面とウラ面の水をふき取る。

型枠をクリップで押さえる

.スマートキーを中心にし、革、型枠と上下に重ねて革を絞る。

●まず、ラップに包んだスマートキーが中心となるように その上下を軟らかくなった革で挟み、その端部をPPシートで作った型枠で挟んで革がスマートキーの形になるように絞る。
この時、革が大き過ぎてPPシートからはみ出す場合は、クリップが奥まで届くようにカットする。
●そして数個のクリップで周囲を押さえる。
このとき、横から様子を見て、中に設置したスマートキーが丁度センターに来るように調整してから押さえるように。

ボタンの跡を付ける

.“ボタン”と“ベルト通し用の穴”の位置を革に写しておく。

“ボタン”と“ベルト通し用の穴”があるところの上を何か固いもので押さえつけて、それらの位置を革に写しておく。
今回は、手元にあった鉛筆用のキャップの先で押さえました。

そしてこのあと、革が乾燥するまで約1日放置しておきます。

型枠から外した状態

.革が乾燥したら型枠から外します。

24時間ほど経って革が乾燥したらクリップを外して型枠を外します。

取り出した革はその可塑性によって、型から外してもそのままの形がキープされています。
今回はタンニンなめしの革を使っているのでハリがあってしっかりとしています。

※ちなみに、タンニンなめしのほうがクロムなめしの革よりも可塑性は高いです。
可塑性とは、力を加えて形を変えた場合、その力を取り除いても形を変えたままの状態になっている性質のこと。

ポンチとカッターでボタン用の穴を開ける

.ボタン用とベルト通し用の穴を開ける。

●まず、スマートキーの形を写し取った2つの内の片方にはボタン用の穴を開ける。
●次に2つとも、上部にはベルト通し用の穴を開ける。
なお穴を開ける位置は、工程6にてそれぞれの形を写してあるのでそれを目安にする。

開け方
●ボタン用の穴は、まず穴あけポンチで4隅に穴を開け、その穴同士の端をつなげるようにカッターなどでカットして四角い穴にする。
●ベルト通し用の穴は、まず端部となる2カ所に穴をあけ、上記同様その穴をつなげるようにカットして長穴にする。
ちなみに、カットする際には革の下に適当にカットした小さな木を敷いています。

革の余分な箇所を切り取る

.上部の余分な箇所を切り取ります。

好きなデザインで線を引き、その線でカットして上部の余分な箇所を取り除きます。

サンドペーパーでコバを削る

10.コバ(裁断面)をサンドペーパーできれいに整えます。

上記の工程8・工程9でカットしたコバ(裁断面)をさらに滑らかな線にするためサンドペーパーできれいに整えます。
使用したサンドペーパーの粗さは320番です。

コバにトコノールを塗って磨く

11.コバの仕上げをします。

サンド―ペーパーで削った部分にコバ処理剤を塗ってコバ磨きで磨きます。
今回は、トコノールを塗ったあとコーンスリッカーで擦って磨きました。

菱目打ちで穴を開ける

12.“菱目打ち”を使って、手縫い用の穴を開けます。

菱目打ちを使って、革を絞った際に付いた型枠の跡ギリギリ(跡から1mm位)のところに手縫い用の穴を開けます。
この時、縫い始めと縫い終わりとなる2箇所だけは菱目打ちではなく、丸ギリで穴を開けておきます。

なお、この工程で手縫い用の穴を開けるのは、スマートキーの形を写し取った2つの内のいずれか1つだけにしておきます。ここではボタン用の穴が開いているほうの革だけ。
もう1つの革は、このあとの[工程14]で2つが重なって接着されている時点で穴を開けます。

ボンドで貼り合わせる

13.2つの革を貼り合わせます。

●まず、菱目打ちで開けた穴のギリギリにボンドを塗り、ヘラなどで薄~く拡げます。
●そして、位置決めをする為に間にスマートキーを入れてから2つの革を貼り合わせ、クリップで固定してボンドを乾燥させます。

もう1つの革に穴を写す

14.穴が開いていないほうの革に、菱ギリで穴を写します。

上記の[工程12]で開けた“菱目打ち”の穴に“菱ギリ”を刺して、穴の開いていない側の革に菱目打ちの穴の位置を写すように貫通させます。
なお、縫い始めと縫い終わりとなる2箇所の穴は[工程12]と同じように丸ギリで写す…。

この時、菱ギリや丸ギリは常に垂直に差し込ませることが大事。あっちこっちに傾いて差し込ませると、裏から見た時縫い目がガタガタになります。

ちなみにここでは、刺しやすいという理由で菱ギリを使いましたが、菱ギリでも1本菱目打ちでもどちらを使ってもいい。

針と糸で平縫いをする

15.手縫い用の針2本と糸で平縫いをします。

今回使用した糸は黒色のエスコード中細です。
このエスコードは麻製なので毛羽立ちや切れ防止のために蝋引き(ロウ引き)してから使います。

なお黒い糸の場合、縫い終えたあとに縫い目(糸)を見たら、蝋がパリパリと細かく割れるせいで多少白っぽく見える場合があります。
その場合は、ドライヤーの温風を縫い目(糸)にあてて蝋を溶かし馴染ませます。そうすると多少は黒くはなります。
これは黒以外の濃い色の糸も同様です、

デバイダーでけがいて耳を作る

16.デバイダーで仕上がりのアウトラインをけがき、その線でカットする。

●まず、スマートキーの形になっている周囲にデバイダーを当て、耳の幅が3~4mmほどとなるように仕上がりのアウトラインをけがく(跡を付ける)。
※デバイダーが無ければコンパスでも良い。
●そして、その線に沿ってカットします。
ここでは、切りやすいように机の端にカッターマットを置いて、その端(角)部分でカットしました。
※なお今回、カットする道具として別たち(画像右の黄色いやつ)を使用しています。普通のカッターでも全然切れますが、この部分は2枚重ねで厚くなっているので“別たち”や“革包丁”のほうが切りやすい。

耳の形を整えてヘリを落とす

17.サンドペーパーで形を整えたあと、ヘリを落とす。

●まず、カットした部分をサンドペーパーで整えて滑らかなアウトラインにする。
このとき、耳の幅も調整します。今回は少し大きい感じがしたので3mm幅になるまで削りました。
●そのあと“ヘリ落とし”を使ってコバの角(ヘリ)を落とします。

コバをコーンスリッカーで磨く

18.コバの仕上げをします。

上記の工程11と同様に、コバ(裁断面)にコバ処理剤を塗ってコバ磨きで磨きます。
ここでも、コバ処理剤を塗ったあとコーンスリッカーを使って磨きました。
なお磨くときは、ケースの中にスマートキーを入れたほうが力は入れやすい。

ちなみに、今回はコバ処理剤としてトコノールを使いますが、トコフィニッシュでもCMCでもよい。
また、コーンスリッカーで磨いてもいいが帆布で磨いてもよい。

革をカットしてベルトを作る

19.革をカットしてベルトを作ります。そしてヘリを落とし、コバを仕上げる。

●まず、革をカットしてベルトを作ります。
そのベルトを作る際には、まず紙などで試作をしてバランスが良いと思う長さを決める。幅はケース上部に開けた長穴に入るサイズで。
今回は、幅12mm・長さ105mmで革をカット。
さらに、一端はフルR(半円)、もう一端は直線に近いR(大きい円弧)に加工。
●次に、裏表すべてのヘリを“ヘリ落とし”を使って落とす。
●そして、コバ(裁断面)と床面(裏面)にトコノールを塗って磨きます。

ポンチでベルトに穴を開ける

20.組ネジで留めるための穴をベルトに開ける。

●穴を開ける位置の決め方は…。
まずベルトの両端の2箇所ともに、端から8mmの所にキリを刺して小さい穴を開けておきます。
そして、完成を想定した形状に折り曲げ、キリで開けた小さい穴同士が重なる状態にし、そのまま2箇所の穴にキリを差し込みます。
そして、その状態で一番下になっている部分にキリを刺して3箇所目の印(小さい穴)を付けます。
(以上、左側の画像参照)
●そのあとベルトを拡げ、キリで付けた3箇所の印(小さい穴)のところに穴あけポンチをあてて組ネジ用の穴を開けます。

ベルトに二重リングを通して組ネジで留める

21.組ネジで留めたら完成です。

ベルトをスマートキー上部の長穴に通し、さらに二重リングも通してベルトを折り曲げ、最後に組ネジで留めたら完成です。

真鍮製のカラビナを取り付けたスマートキーケース

今回は二重リングを介してさらに真鍮製のカラビナも取り付けて使用する予定です。※画像奥に薄っすらと見えているのがカラビナ。ちなみにこのページトップのキャッチ画像にはくっきりと映っている。

なお、ベルトに二重リングを設置せずに、ナスカンやカラビナを直接ベルトに取り付けるのもあり…。
こういったパーツには色々な種類・デザイン・サイズがあるので、その選択も組み合わせも自分の使い方や好みにあわせて自由にアレンジすればよい。


以上、レザークラフトの技術で「スマートキーケース」作ってみました。
以前からこのタイプのキーケースが欲しくてずっと作ろうとは思っていたけど何となくあと回しになっていた。
今回やっと重い腰を上げて作ることにしたが、出来具合としてはけっこう満足。プラスチック製の味気ないスマートキーが革製のおしゃれなキーホルダーのようになってちょとうれしい…。

このように、市販のパーツと組み合わせることによって。雑貨屋さんなどで売られているような雑貨や小物などが大がかりな産業用機械などが無くても作れてしまうのは、それこそレザークラフトの醍醐味ですね…。


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