素朴でナチュラルなテイストの木製家具や建材などを、仕上げたり、メンテナンスしたりする際によく使用されている「蜜蝋ワックス」は、簡単に手作りすることが出来るというのはご存知でしょうか。
まず、木の製品には、家具・建材・食器・雑貨などと様々なものがありますが、それらの表面を保護するための塗装としては、「合成樹脂塗料」によるものと、「自然素材が主体の塗料」である「オイル」によるものとがあります。
後者の、「オイル」で表面を仕上げる方法は、いわゆる「オイルフィニッシュ」と言われているもので、「合成樹脂塗料」で仕上げるような強度のある塗膜は張りませが、木の質感や雰囲気を少しでも残したい人達には人気の仕上げ方です。
今回は、その「オイル」よりもさらに「撥水性」の高い「蜜蝋ワックス」を手作りします。
なお、「蜜蝋ワックス」で仕上げた場合に、それを「オイルフィニッシュ」と言えるのかどうかは分りませんが、一般的に「蜜蝋ワックス」は、原料の90%ほどがオイルであるモノが多いので、オイルフィニッシュのひとつだと考えます。
ちなみに、「蜜蝋ワックス」で塗装出来るのは、「無塗装」もしくは「オイルフィニッシュ」タイプの木製品の場合です。
すでにウレタン塗装やラッカー塗装、ニスやその他の合成樹脂塗料が塗られているものには不可です。
また木製品以外には、皮革製品の保護や、鉄のサビ止めにも使えます。
効果としては…。
「蜜蝋ワックス」で木の製品を塗装すると、オイルで塗装した場合よりも水を弾く効果があります。
なので、テーブルの天面や床板(フローリング)に蜜蝋ワックスを塗っておくと、その上に醤油やコーヒーなどをこぼしたとしても、オイルで塗装してある場合よりもシミや汚れは付き難くくなります。
ただし、樹脂塗装ほど完全ではありませんが…。
また、木の製品はコーティングされていると、乾燥し難くなります。
乾燥は、反りや割れの原因にもなりますので、無垢の木の場合、蜜蝋ワックスを塗っておくと、多少は保護になるかもしれません。
そして、蜜蝋ワックスは乾性油が主な材料なので、塗ったあと、木の色が早く焼け色になります。
白木が好きな方にはデメリットかもしれませんが、経年変化で色の濃くなった様が好きな方にとっては、それが味わい深いものとなってゆくでしょう。
蜜蝋ワックスを手作りする方法と、その使い方。
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【蜜蝋】… 蜂の巣から精製したロウ。
【乾性油】… 市販の食用のもので良い。
それぞれの用意する比率は、
蜜蝋:乾性油が、1:9(重量で)。
つまり、蜜蝋の割合は10%です。
もう少しくらいなら蜜蝋の割合を増やしても良いですが、あまり多く入れ過ぎると塗装品の手触りがネットリとなります。
●乾性油とは、簡単に言うと、酸化して硬化する油です。
種類としては、亜麻仁(アマニ)・エゴマ・紅花・クルミ・紫蘇・ヒマワリ・芥子・その他、色々とあります。
どの乾性油でもいいですが、入手のし易さなどを考慮すると、エゴマか亜麻仁がおすすめです。
この場合、エゴマでも亜麻仁でも良いですが、エゴマのほうが比較的速く乾燥します。
ちなみに、エゴマとゴマは似た言葉ですが、それぞれは別物ですし性質も違います。
コーン・ゴマ・大豆などの油は「半乾性油」、
オリーブ・椿・菜種などの油は「不乾性油」というもので、これらは酸化しても固まらずにネバネバのままです。
なお、食用の乾性油を使う場合は、純度100%のものを使用します。
例えば、商品名が亜麻仁油と記してあっても、固まらない油とブレンドされているものもありますし、また、酸化防止剤が入っている場合もあります。
乾性油は酸化して固まるの油なので、酸化防止剤が入っていると固まり難いです。
■作り方
1.材料を湯煎で溶かすだけ。
作り方は簡単。
湯煎の準備をして、内側に設置した鍋やボウルや金属容器に、オイル(乾性油)と蜜蝋を入れて、ただ蜜蝋を溶かすだけです。
今回は、蜜蝋10gとエゴマ油90gを入れました。
蜜蝋の融点は65度程なので、結構早く溶けますよ。
溶けたら、それぞれが均一に混ざるように、混ぜ棒で少しかき混ぜます。
なお、今回は湯煎で溶かしましたが、底の形状が安定している鍋を使用して直火で溶かしてもOKです。
ただし、直火の場合は、加熱し過ぎると高温になり過ぎて発火する恐れがあるため、十分に注意が必要です。
かといって、湯煎の場合でも、火にかけたままその場から離れないように。
まあ、蜜蝋の融点が65度程なので、普通に溶かすだけならあまりおおげさに心配することでもありませんが…。
とにかく、いずれにしても蜜蝋が溶けたら直ぐに火を止めてしまうといいだけです。
2.熱いうちに、保存容器に入れて完成です。
溶けた材料が熱い液体状態のうちに保存容器へ流し込みます。
冷めてくると白っぽい固体になり、蜜蝋ワックスの完成となります。
ちなみに、湯煎した鍋やボウルから材料(蜜蝋ワックス)を保存容器に移してゆくと、鍋やボウル内の材料はとうぜん少なくなってゆきますが、それと同時に鍋やボウルはだんだんと冷めてきます。
すると、最後のほうでは、残りわずかな材料も冷めてしまって鍋やボウルの内側にこびりついてしまい、保存容器に流し込めなくなります。
その場合は、鍋やボウルの外側にドライヤーの温風を当てて、その熱で溶かしながら最後のこびり付いた分を保存容器に流し込むと良いです。
なお、上記の作り方以外には…。
上記では、鍋やボウルなどに材料を入れてから湯煎にかけて、その溶けたもの(蜜蝋ワックス)を保存する容器に流し込む作り方でした。
しかし、
画像Bの作り方は、缶(保存容器)に材料を直接入れて湯銭をする方法です。
この方法だと、上記の方法のような鍋やボウルなどは必要としません。
ということは、作り終えたあとに、「鍋やボウルにこびり付いた汚れ(蜜蝋ワックス)をキレイに取り除く」という手間が要らないので楽です。
とにかく、保存したい容器や状況に応じて作り方を変えると良いかもしれません。
■保存するときは?
乾性油は、酸化して固まる(硬化する)という性質を持っていますので、空気(酸素)から遮断の出来る密閉容器に入れておきます。
さらには、光も硬化を早めますので、光も遮断出来る容器が良いでしょう。
例えば、密閉可能な金属の容器など。
また、透明なガラスビンやプラスチック容器を使う場合は、外側をアルミ箔などで包むとか。
そして、涼しい場所で保存しておくことで、多少でも長持ちさせられます。
とにかく保存の基本は、空気(酸素)から遮断をして、中の蜜蝋ワックスを硬化させないことです。
容器が密閉されていないと、酸化のしやすい表面から硬化してゆきます。
■用途は?
●木製の家具・フローリング・雑貨などの保護に。
●皮革製品にも。
●鉄製品のサビ止めとしても。
いずれも無垢のモノで、無塗装、もしくは、オイル仕上げや蜜蝋仕上げの場合にのみに使用します。
既に合成樹脂の塗料やニスが塗られている場合には無意味です。
なお、強度のある塗装ではないので、塗った後でも定期的なメンテナンスは必要です。
■木製品に塗布出来る面積は?
木の種類によっても塗布できる面積は異なります。
例えば杉のような軟らかい木の場合はワックスを多く吸収するので、とうぜん塗布の出来る面積は少なくなりますし。
広葉樹のような硬い木の場合は、杉よりも比較的吸収が少ないので、その分だけ塗布の出来る面積は多少広くなります。
しかし、面積が広くなるといっても、広葉樹も木なので結構吸収はします。あくまでも木同士で比較した場合です。
さらに、全く初めて塗る場合と、既に塗られているものをメンテナンスする場合とでは吸収する量も違います。
木の他に、鉄のサビ止めとして使用した場合は…。
鉄はワックスを吸収しないので、木製品よりもかなり広く塗ることが出来ます。
■塗り方は?
捨てても良い布などで蜜蝋ワックスをすくいとって塗りつけます。
木製品の場合は、木の表面部分の繊維の中に浸み込ませ、その繊維の中で硬化させるという感じです。
なお、表面に厚く塗りすぎると、極端に硬化が遅くなりますし、時期によってはカビ臭くなってしまう場合もあります。
塗った後、木に浸み込みきれない分が表面にベッタリと残っていたら、それは余計な分なので、スッキリと拭きとって下さい。
もし厚く塗りたいのなら、一度にベッタリと塗るよりも、少し乾燥したあとに重ね塗りしたほうが良いでしょう。
とにかく塗った直後はオイルのベタベタ感は多少ありますが、1週間程でベタベタ感はなくなります。
これは使用するオイル次第で、もっと早い場合もあれば遅い場合もあります。
ちなみにですが、完全に硬化するまでには「厳密に言うと」数ヶ月はかかるらしいです。
なお、塗布に使用した布や紙などの処分は…。
材料の乾性油は、酸化して固まる(硬化する)過程で熱が発生します。
塗布に使用した布や紙などをそのまま包めておくと、中で熱がこもって発火の恐れがありますので、それらは、水に浸した状態で捨てるか、または焼却してしまうかなどの処分をするように。
以上、自然素材の塗料である「蜜蝋ワックス」の作り方と、その使い方などでした。
ちなみに自分の場合は、木製品のメンテナンス用として使用する以外に、革靴(表革のチャッカブーツなど)の撥水用クリームとしても使用しています。
また、アイアン製品のサビ止めとしても使用中。
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なお、下記のページでは、乾性油についてや、乾性油を使って木製雑貨などをメンテナンスする方法も紹介しています。