以前、海外の料理動画を見ていたら“持ち手が木製のちょっとレトロっぽいデザインの泡立て器”が登場してくるシーンがあった。
その時は“あれいいな~”と思いながら見ているだけだったが、今回、泡立て器を新調しようかということになり、せっかくなのでそのようなデザインの物がないか探してみることにした…。

検索してすぐ見つかると思っていたが意外と見つからない。海外のサイトではたまにヒットするが、国内のショップにはなかなかない。
たまに“持ち手が木”のものは出てはくるがイメージとは違う。もっと真剣に探せばどこかにあるとは思うがさすがに面倒になってきた。

ということでそれっぽいものを探すのはあきらめて、その代わり業務用で探すことに…。
業務用だと高いやつから安いものまで沢山ある。当然と言えば当然だがフツーのデザインが多い。まあシンプルなフツーのタイプがほしかったのでそこそこ求めていたイメージには合う。なのでそれでも全然いいのだが、やはり何となく物足りない。
なので買うのもやめた…。

かといって新調するのをやめたわけではない。作ることにした。


■飽きのこなそうなデザインの「泡立て器」を作る。

木製グリップの泡立て器とボウル

あえて作るからといって他にはないような斬新なデザインにするわけでわなく、ごくごくフツーのデザインにした…。
ただグリップが木製なので、経年変化でだんだんと味わい深くなってゆき、使用していくほどに愛着が増していくことは間違いない…。
昔ながらの暮らしの道具といった感じ…。

これから使う材料
■材料

【木の丸棒】… グリップ用
【ステンレス棒】… 泡立て部分用
【ステンレス針金】… 泡立て部分の固定用

【木の丸棒】今回は太さ20mmの丸棒を用意。
【ステンレス棒】太さ1.5mmを使用。用意する本数はお好みで…。一般的には少なくて5本、多くて10本くらい。とりあえず今回は8本使用する。
なお、この棒が手に入りにくい場合は、不要な泡立て器を分解して使うのもありだとおもう。
【ステンレス針金】0.5~0.7mmほどの太さで…。
最初に0.9mmを使ってみたがちょっと硬くて扱い難かった。巻けることは巻けるが最後の細かい始末をするところでちょっと扱い難い。
ということで途中で0.55mmに変更した。

■作り方


作図した紙と木の丸棒

.「木の丸棒にステンレス棒を取り付ける位置を製図した紙」を作る。

今回はステンレス棒を8本使います。なのでその取り付け箇所は8×2で16箇所となります。
ということで、木の丸棒の周囲にステンレス棒16本が均等な間隔で取り付け出来るように、その位置を製図した紙を作ります。

製図の説明をすると…
丸棒の直径が20mmなので、20mm×3.14の幅に16本分均等にアタリを付けてあります。
なお両端部分は、端と端が合わさった時に1本分となるように0.5本分となっています。
横に線が1本引いてありますが、ここは16箇所の穴を開ける位置です。

ちなみに、ここではイラストレーターで作図してプリントアウトしたものを貼りましたが、無地の紙にものさしで製図したものを貼っても良い。

木の丸棒の先に作図した紙を貼る

.木の棒の先の周囲に、製図した紙を貼り付ける。

最後にこの紙は剥がすので、水溶性の糊で貼り付けました。

木の丸棒を彫刻刀で彫っている様子

.16箇所の穴を掘って、そこから棒の端まで溝を掘る。

横に引いた線上に16箇所の穴を掘って、そこから棒の端まで溝を掘ります。
穴は、径1.5mmのドリルで掘りました。
そして溝は、まず彫刻刀で筋を掘り、その筋をさらに先の細いビットを取り付けたリューターでなぞりながら削って丸底状の溝にしました。

溝はステンレス棒が均等に位置されるためのところとなり、穴はズレ防止のストッパーとなります。

穴の深さは5㎜程。溝も穴も太さ1.5㎜のステンレス棒がはまるように掘ります。

ステンレス棒をU字状に曲げる

.ステンレス棒の中心部分を丸く曲げてU字状にする。

今回、丸い部分はガラス瓶に巻きつけて作りました。ステンレス棒は跳ね返って元に戻ろうとするので、作りたい希望の丸の大きさよりも小さい大きさの瓶(丸)が良い。

なお、この泡立ての部分のサイズ(長さ)はこのあと作りながら決めていくつもりだし、先の部分が不揃いにもなるので、長めのステンレス棒を使って作業を始める。

U字状に曲げた棒を重ねて固定する

.U字状に曲げた棒を縦に重ねて固定する。

通常、泡立て器のメイン部分の“U字状の棒”たちはキレイに重なるように外側(上)から順に内側(下)に向かって短くなっています。
なので画像のように縦に重ねた状態にし、長さにグラデーションをつけておきます。
そしてこのあと、その状態のまま加工するために3箇所で固定しておきます。
今回はカットした2本の割りばしで挟み、その両端を輪ゴムで留めておきました。

はんだで固定する

.ズレないように“はんだ”で固定。

この工程は特にあっても無くても良いですが、下記の加工中に位置がズレると嫌なので、しっかりと固定しておいた。
なお、はんだの代わりとして、ボンドを盛って固めるのも良い。

折り曲げ用の窪みを付ける

.サイズ(長さ)を決めたら、曲げるための窪みを作る。

まず、“U字状に曲げたステンレス棒”を“木の丸棒(グリップ)”に当ててみて、全体をイメージしながら泡立て部分のサイズ(長さ)を決めます。

泡立て部分のサイズ(長さ)が決まったら、U字状に曲げたステンレス棒の内側にあたる部分に、そのステンレス棒を直角に曲げるための窪みを設けます。
※下記工程9の画像を参照。
なお直角に曲げる位置は、U字状に曲げた丸い部分を先端として、そこから「泡立て部分の長さ」+「丸棒の16箇所の溝の長さ(固定する部分)」のところとなります。
※下記工程12の画像を参照。

窪みを作る道具としては、リューターなどを使って削っても良いが、勢い余って削り過ぎてしまわないように今回ダイヤモンドやすりで削りました。

ステンレス棒をカットする

.棒をカットします。

この先の工程では、上記工程にて削った窪み部分で直角に折り曲げ、その端を“木の丸棒に掘った穴”に差し込むこととなるが、その穴に丁度良くはまる長さとなるように棒をカットします。
今回は、窪みから4mmくらいのところでカット。

※“木の丸棒に掘った穴”とは、工程3で掘った深さ5mmの穴のこと。

ステンレス棒の先を直角に曲げる

.窪みを内側にしてステンレス棒の端部分を直角に折り曲げる。

材質によっては曲げるチャンスは1回。
1度曲げたものを元に伸ばすと折れる場合がある。
なお、バーナーで炙りながらだと大丈夫かも。
とりあえず今回はそのままで…。

貫通穴の図面

10.U字状に曲げたステンレス棒を木の丸棒(グリップ)に取り付けるための準備をします。

●まず、工程3で掘った“16箇所の溝”の端から5mmほど離れたところに径1.5mmのドリルで貫通の穴をあけます。
●そして、その穴を起点に木の丸棒の先に向かって0.55mmのステンレスの針金が嵌る溝を掘ります。

この貫通穴と溝の目的は…
この先の工程では、U字状に曲げたステンレス棒の先を木の丸棒の先に掘った“16箇所の溝”に設置し、それを固定するためにその周囲を針金でグルグル巻きにしますが、その針金の先を留めておくところとなります。※下記の工程12を参照。

木の丸棒の先にオイルを塗る

11.木の丸棒の先にオイルを塗っておきます。

泡立て器として使用したときに、木の部分に食材の汁などが浸み込まないようにあらかじめオイルを塗っておきました。
塗るオイルは食用の乾性油です。今回はエゴマ油を塗りますが、アマニ油やクルミ油などでも良い。

※乾性油については 乾性油と、木や鉄のメンテナンスのこと のページで詳しく説明しています。

針金を巻いて固定していく

12.U字状のステンレス棒を16箇所の溝と穴に嵌め、その周りを針金でグルグル巻きにしてゆきます。

まず、U字状のステンレス棒8本の先16箇所を木の丸棒に掘った16箇所の溝と穴に嵌めて固定してゆきます。なお、このステンレス棒を溝と穴に嵌める際は長さに注意。よく確認して短いものから順番に嵌めてゆくこと。
そして8本(16箇所)とも溝と穴に嵌めたら、このあとの作業の途中で外れないように粘着テープなどで束ねて仮止めしておきます。

そして、“工程10で開けた貫通穴と溝”で針金の先を留め、そこを起点にして針金をグルグルと巻き付けて、U字状のステンレス棒8本(16箇所)を固定してゆきます。

針金の先始末をする

13.針金の先を始末する。

木の棒の先が針金で隠れるまで巻いたら、16箇所ある内のいずれかのステンレス棒に針金を巻きつけて固定します。
その固定方法は、任意のステンレス棒に針金をクルクルと小さく螺旋状に巻き付け、そのクルクル部分を“はんだ”でちょんと固定し、そのあと、はみ出した余分な針金はニッパーなどでカットしておく。

もちろん使用する“はんだ”は食品衛生法に従って鉛フリー(無鉛)のものを。
今回は、錫(スズ)99%で残りの1%が銀と銅で出来たタイプのはんだを使用。

完成した木製グリップの泡立て器

14.木の棒を任意の長さにカット。

泡立て部分が出来上がったら、全体のバランスを見て木の棒(グリップ)をカットし、最後にサンドペーパーで磨いたらたら完成です。

最後に、あらためて木の部分にオイルを塗っておきます。それで汚れやシミの防止にもなります。

今回作った泡立て器のサイズ…
・全長:285mm
・泡立て部分幅:65mm
・グリップ(針金を巻いた部分含む):125mm


以上のように泡立て器を自作してみた。
我流ではあるがそこそこ使えるものは出来たと思う。というかけっこうお気に入り…。
このあと使い込んでいくとより深みが増して味のある道具になってくれそう…。この先がちょっと楽しみです…。

なお今回は、材料をゼロから揃えて作ったが、もし中途半端に古くなってあまり好きではなくなったデザインの不要な泡立て器があったら、それをリメイクして再生させるのも「持続可能な社会」に一役立つのでは?…。


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