唇が乾燥したり荒れたりした時などには手放せなくなるリップクリーム(リップバーム)ですが、いざ使おうといった時になかなか見つからず、カバンの中をしばらくゴソゴソとしてしまったり、家の中をあちこち探したりというようなことがたまにある…。
そこで、そのようなことを少しでも減らすようにするため、リップをどこかにぶら下げておけるケース(ホルダー)を作ってみようかと…。
これは、カバンの中や家の中で行方不明なりにくいように定位置を決めておくためのもの。
あとは、平凡な見た目のリップクリームをちょっとでも着飾らせて所有感を高めるため。
まあどちらかと言えば、後者のようにテンションを上げるためのほうが本当の目的かな…。
作るのは、スティック型の薬用リップ専用。
材料は革(レザー)にする。これだと上手く出来れば安っぽくは見えない。
ちなみに、このような類のケースは色々と市販されてはいる…。しかし、手作りした方が確実に安くつくし、なによりも完成までのワクワク感がすごく楽しい…。
■スティック型のリップクリームのための専用ケース。
ベースとなるリップは下画像のようなスティック型。底部分には中身の固形クリームを外に送り出すためのつまみがあって、先には小さいキャップが付いている構造のタイプ。よく見かけるやつである。
なお今回作るケースの場合はリップにピッタリサイズとなるので、ある任意のリップに合わせて作ったらほぼそれ専用となってしまう。なのでよく使うものに合わせて作ることが基本…。とにかく同じスティック型といっても、製品によってはリップ本体の太さや長さ、つまみ(くるくる回すところ)の形状などがそれぞれの製品によって多少異なると思うので…。
まあ、中には他の製品であっても偶然ピッタリと収まる場合もあるかもしれないが…。
◇
【革(タンニンなめし)】… 1.7mm厚
【糸】… 今回は、エスコード中細
【コバ処理剤】… 今回は、トコノール
【ボンド】… 今回は、白ボンド
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パーツ
【両面ハトメ】… 4mm穴(真鍮製)
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【リップ本体】… 画像のようなスティック型のタイプで、任意のいずれか。
【PPシート】… 1mm厚
【カッター】
【別たち】
【ターンクリップ(ダブルクリップ)】
【菱目打ち】
【ポンチ】
【サンドペーパー】… 320番
【デバイダー】
【縫い針】
【菱ギリ】
【コバ磨き】
その他、下記の文中にて記載。
■作り方
1.PPシートで型枠を作る。
厚さ1mmほどのPPシートをカットして型枠を2枚作ります。
型枠の各寸法はイラストの通りで、
内側の縦長の窓(穴)は…
縦がスティック本体の長さ+2.5mm
横はスティック本体の幅+5mm(2.5+2.5mm)
そしてその周囲の枠は…
上部と両サイドが12mm幅、下部が15mm幅以上となるようにする。
※この下部の15mm幅の部分を狭くしてしまうと、このあとこの型枠で押さえた時、革の大事な部分に型枠の跡が付いてしまうので15mm以上の幅はあったほうが安心。
2.材料の革を裁断。
今回は、両サイドと下部に少し余裕をもたせて、
50×75mmで裁断。
なおここでは1.7mm厚の革を使用するが、1.5mm厚で試作してもしっかりとした物は出来た。
3.水に浸して柔らかくする。
15分以上水に浸して革を柔らかくし、そのあと水から出して表面の水をしっかりと拭き取る。
4.端を合わせてホチキスで仮止めをする。
まず端を合わせる。そして、このあとの作業で、合わせた端がズレないようにするためにホチキスで仮止めをしておく。
5.型枠で押さえて革を絞る。
リップの本体を2枚の革の間に挟んだ状態にし、その上下からで型枠で押さえて絞る。
この時、ホチキスで留めた側の革の端を、リップのほうのキャップと本体の境目に合わせておく。
なおギューっと絞ったら、革が少し型枠に引っ張られて位置がズレる(短くなる)ので、まず最初に、キャップと本体の境目の線を革の端で1~2mmほど隠すようにして合わせると、最終的に革が短くなっていい具合の位置にくるはずです。
そして、型枠からはみ出た部分の革をカットし、周囲をクリップで固定する。
さらにその状態で約1日間乾燥させる。
6.型枠から外す。
1日ほど乾燥させて、革がリップの形になって固まったら型枠から外す。
型枠から外した時に、2つの革の端(開口部分)がピッタリと合っていればそのまま次の工程へ…。
もし2つの革に段差があった場合は、ホチキスを留めたままサンドペーパーで整えて段差をなくす。
ホチキスを外すと同じものが2つ出来ている。
7.つまみ用の穴を開ける。
底にあたる部分の角を斜めにカットすると、そこがつまみを回すための穴(窓)となります。
この作業は2つともに行います。
8.外形・縫い穴の位置・ハトメの位置をしるす。
※まずしるしを付けるのは、2つある革のうちのどちらか1つだけです。
●外側の線が外形で、このあとカットする位置。
●内側の線は、縫い穴を開ける位置。
●中心の点は、このあとの工程でポンチで穴を開けてハトメを留める位置のセンター。
以上を、目打ちとデバイダーを使って直接革に製図しました(イラストでは白い線と点)。
なおここのデザインは自由に…。
9.手縫い用の穴を開ける。
上記の工程で引いた内側の線に沿って“菱目打ち”を用いて縫い穴を開けます。
なお、ほとんどの穴は菱目打ちで開けますが、始めと終わりの2ヶ所の穴だけは丸ギリ開けます。
※この工程で縫い穴を開けるのは、線を引いたほうの革だけです。
10.ボンドで貼り合わせる。
縫い穴のラインギリギリ外側に5mm幅ほどの帯状でボンドを塗って2枚の革を貼り合わせます。
この時、2枚の革がピッタリと合うように、間にリップ本体を入れた状態にして型枠をはめます。
そして、ボンドが固まるまでクリップで押さえておきます。
11.もう1つの革に縫い穴を写す。
上記の工程9では、1つの革だけに縫い穴を開けましたが、その縫い穴の位置を、貼り合わせたもう1つの革に写します。
写すのは菱ギリと丸ギリにて…。
始めと終わりの穴だけは丸ギリで、あとはすべて菱ギリを使う。
12.ハトメ用の穴を開ける。
上記の工程8で付けたしるし(点)がセンターとなるように、ポンチを使ってハトメを取り付けるための穴を開けます。
13.針と糸で縫い合わせていく。
レザークラフト用の針を使って上記で開けた縫い穴に糸を通し、2つの革を縫い合わせていきます。
なお、縫い方は平縫いで…。
14.外形をカットする。
上記の工程8にて引いた外形線の通りにカットします。
15.サンドペーパーで整える。
カットしたあと、サンドペーパーでやすりながら外形を整えます。
16.コバのヘリを削ります。
“ヘリ落とし”という道具を用いてコバ(裁断面)の角(ヘリ)を削ります。
17.コバ処理剤を塗って磨く。
サンドペーパーで整えたコバ(裁断面)にはトコノールなどのコバ処理剤を塗り、そのあとコバ磨きなどで擦って磨きます。
18.ハトメを打ち付ける。
ポンチで開けた穴に両面ハトメを取り付けたらケース本体の完成。
あとは、ハトメの穴に丸カンや紐などを通し、そこに任意の留め具を取り付ける。
その留め具は、カラビナでもナスカンでもフックでもいいし、また画像のような、小さな革ベルトにホックなどを取り付けた手作りの留め具でもいい。
とにかく自分が一番使い易い方法で…。
なおこのリップケースに入れる目的が、どこかに引っ掛けておくためではなく、リップを着飾るためだけなのなら、留め具などは付けなくてもいいし、簡単に革紐などを付けておくだけでもいいかもしれない…。
そして使う時は、このリップケースに入れたまま先のキャップだけを外し、底部分に開けた半円の窓から出ているリップのつまみを回して中の固形クリームを出し入れする。
以上のように「リップケース(ホルダー)」をレザークラフトの技術で手作りしてみました。
なお、このリップケースはリップ本体をピッタリと包んで保持する構造のものなので、ほぼほぼこれを作る時に型として用いたものと同じタイプのリップ専用となります。
他の製品でちょっとだけ太いものがあって、それが入るからといって無理やり入れてしまうとケースが大きくなってしまい、次からはユルユルで使い物にならなくなってしまうこともある。なので、入れるリップの太さには注意が必要…。
仮にもしユルユルになってしまったら、革ケースの内側を少し水で濡らし、型として使ったリップを差し込んで、そのまま乾燥させるとちょっとは元に戻るかもしれない。
ただし、広がり過ぎた場合は無理かもしれない。
ちなみに、水溶性のボンドを使って2つの革を貼り合わせてある場合は、水が浸み込むとボンドがふやけることもあるので、浸水はさせないこと…。心配だったら水溶性ではない接着剤を使用するといい。