前回、革製の手帳型スマホケース(手帳型カバー)を手作りしましたが、その際にはプラスチック製スマホケースをカバーの内側に貼り付けました。今回はその時の備忘録です。

手で捻っているスマホケース

ところでそのプラスチック製スマホケースですが、一般的には大きく分けて2種類のタイプに分かれます。「ソフトタイプ」と「ハードタイプ」です。
ちなみに、2色成形やインサート成形によって側面部がソフトで底面部がハードという中間タイプも多くありますが、ここはあくまでも1つの材料で成型されているケースでの話です…。

まず、軟らかくて多少伸びるという材質の特性上「ソフトタイプ」のほうは「無理抜き」と言う方法を用いて金型から抜くことが可能なので、「スマホの側面部全周をすべてをくるむような形状」のケースに成形することが可能となります。なので一般的にはそのようなデザインのものが多く見られます。
その一方「ハードタイプ」のほうは、硬くて伸びないという材質の特性上、上記と同じ形状のものを金型から「無理抜き」すると製品が伸びずに割れてしまうという恐れがあります。また金型から簡単に抜けないということは、もし仮にそのようなスマホケースがあったとすると、そこに無理やりスマホを押し込んで嵌めた場合、そのスマホは取れなくなってしまうということになるので、製品にするということ自体に無理があるということになります。
そのため「ハードタイプ」のほうは、ケース側面の一部が欠けていて、その部分が微妙に広がることによってスマホの出し入れが可能となるようなものが多くなっています。つまり、スマホの側面すべてが囲まれているのではなく「一部が剥き出しになってしまうケース」ということになります。

自分的にはスマホの周囲がすべて囲まれているデザインのほうが安心できるので、手作りした手帳型スマホケースには、スマホ側面を完全にガードできる構造の「ソフトタイプケース」を使いました。

使用したのは、ソフトタイプの中でも多く見受けられるTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)製のスマホケース。
ただ、接着性が比較的良くないというのは難点…。
そこで、どうやったら革製のカバーにしっかりと貼り付けることが出来るのかと色々考えてみた…。

けっして最高の方法ではないとは思うが、自分なりにこれでも良いのでは…と言う方法が出来たのでそれで貼り付けてみることにした。


■接着性の良くない「TPU製スマホケース」を革に貼り付ける方法。

組立前の手帳型カバーとスマホケース

今回は、革製の手帳型カバー内側にTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)製スマホケースを如何にしてしっかりと固定させようかということですが、まずTPUというプラスチック素材は接着剤との相性が割と良くありません。
ただ、まったく接着出来ないというわけでもありませんし、専用の接着剤でなくてもちゃんと脱脂さえすればそこそこ貼り付いた状態でいてくれる接着剤もあります。
とは言え、ハードタイプのスマホケース(硬質のプラスチック)の場合よりも比較的接着させにくいというのは確かです。

ちなみに、接着剤以外でしっかりと固定させておくとなると「カシメで留める」や「お互いを縫い合わせる」などという方法もあります…。
ただそうなると、手帳型カバーを作る方法や作る手順などを少し変更する必要があるし、また今回の場合だと最初から作り直しにもなってしまうので、ここはあくまでも「接着して貼り付ける」という方法で進めます。

貼り付ける方法としては「両面テープで留める」という方法もありますが、それだけではちょっと心もとない…。
皮革もOKな「TPU専用接着剤」もあるらしいのでそれで貼り付けようかとも思ったけど調べた限りではちょっと高価過ぎ。今回の一台のためだけに高い接着剤を買うのはちょっともったいない…。
ということで、手軽に安価で買える「専用ではない接着剤」でも、相性の良い素材のように貼り付けが出来る方法はないかと考えてみた。その方法は下記にて…。
ただし、「普通にベタ貼り」するよりも手間と時間がかかるので多少面倒ではありますが…。

なお、上の画像内にある「革製の手帳型カバー」の作り方は、「革製の「手帳型スマホケース」と「ストラップ」を手作り」のページにて紹介。


■「TPU製スマホケース」を革製手帳型カバーの内側に留める2つの方法。

今回2パターンのやり方を考えました。基本的な考え方はイラストの通りです。

AとBの2パターンの断面図

2パターンとも、基本的にはスマホケースを手帳型カバーの内側に接着するという考えではなく、どちらかというとスマホケースを手帳型カバーの内側に留めておくという考え方です。

[A]のパターンは…
接着剤部分を介して革製手帳型カバーとプラスチックシートを一体化させ、そのプラスチックシート部分でスマホケースを押さえて留めるというもの。
イメージとしては、「カシメや鋲などの平たい頭部分」で板状のものを押さえておくという感じです。
詳しくは、このあとの作業工程にて…。

[B]のパターンは…
スマホケースの底板部分に「上に向かって広がっている穴(上部が面取りされている穴)」を開け、その穴に、硬化すれば硬いプラスチックのようになる接着剤を注入して接着剤と革製手帳型カバーと一体化させ、その硬化した接着剤部分でスマホケースを押さえて留めるという感じ。
イメージとしては、「上部を面取りしたネジ穴」の開いている板があったとすると、そこに皿ネジを刺し、その「頭のテーパー部分」で板を押さえておくという感じです。
その硬化する接着剤としては「2液性エポキシ接着剤」や「ホットメルト」がいいのではないかと…。
なお、2液性エポキシ接着剤もホットメルトも色々なタイプがあるのですべてのものがいいかどうかは分かりません。

そして今回の取り付け方法は、「点で留める」という上記の[A]パターン、もしくは[B]パターンいずれかの方法に加え、さらに「面で接着して貼り付ける」という固定方法も同時併用しておきます。
つまり、普通に「面で接着して貼り付ける」方法だけでは心もとないので、上記の2パターンいずれかの固定方法も併用させてそれで補完できればいいなという考え方です。


■今回はプラスチックシートを使うほうで…。

上記の[A]か[B]どちらのパターンでもよかったのですが、今回はとりあえず、プラスチックシートを使用する[A]パターンのほうで貼り付けます。

プラスチックシートと接着剤
■用意するもの

【プラスチックシート】
【接着剤】

【プラスチックシート】は、0.1~0.2mm厚くらいのものでピンと張りのある(ヘナヘナしない)材質のものを使用…。但し使用するスマホケースによってはこの方法自体が無理な場合もあるかもしれません。とりあえず作業する前にはスマホケースの底部分に0.2mm厚くらいの何か薄い物を敷き、そこにスマホを入れて窮屈具合を試してみる。
今回はPP(ポリプロピレン)製のクリアファイルホルダーをカットして使うことにしました。
さらに詳しくは下記の工程7にて…。
【接着剤】 まず「皮革」と相性が良いというのが基本。そのうえで使用するプラスチックシートの材質との相性が良いものを用意します。
今回使用する接着剤は、パッケージにプラスチック用と書かれたGPクリアーという接着剤です。
ちなみにプラスチック用とはいっても、用途の欄にTPUとは記載されていないので、今回使用するスマホケース(TPU製)との相性が良いのか悪いのかは分かりません。少なくとも相性の良いほうに記載されてはいませんでした。
ただ、今回の方法で重要なのは、この接着剤が「皮革」及び、使用するプラスチックシートである「ポリプロピレン」がOKだという点です。
あと、硬化するとパリパリと割れるタイプではなく弾力性があるタイプなのも良い。
パリパリと割れるタイプだと衝撃に弱いので…。

なお、ありとあらゆるパターンを試したわけではないので分りませんが、ひょっとすると、もっと条件のいいシートや接着剤はあるかもしれません。
ただ、今回のテーマは「手軽で安価に入手できる材料を使用」です…。

ちなみに、比較的安価で「皮革が接着出来る」と言えば酢酸ビニル系で白い色をした木工用ボンドもありますが、この場合、プラスチックシートの代わりに、表面が紙になっているプラスチック障子紙のようなものでヘナヘナしていない硬めの薄いシートがあれば、やり方次第ではいけるような気もする。
まあ、そんシートがあるかどうかは分かりませんが…。

■貼付け方法


底部分に穴を開けたスマホケース

.スマホケースの底部分に穴を開ける。

まず、TPU製スマホケースの底部分に複数個の穴を開けます。今回は直径12mmの穴を画像のように8カ所開けました。
この穴の大きさと穴の数は任意で…。
なお、穴を小さくした場合は接着面積が小さくなるので、その場合は穴の数を増やすといいかも…。

※画像のものは木工用ドリルで穴を開けましたが、TPUはゴムっぽい材質なので、使い古しのTPU製スマホケースを使ったテストでは穴あけポンチで開ける事も普通に可能でした。
だだポンチの種類によっては、刃が持つかどうかは分かりません。

革の手帳内側に穴の位置を写す

.上記で開けた穴の位置を、革の手帳内側に写す。

革の手帳内側にスマホケースをのせ、固定させる位置を決めたら穴の場所を写すように罫書きます。

ちなみに、手帳の外側面にはパーツが付いているので、平たい所に置いて上から力を加えると手帳カバーは曲がったりガタガタしたりします。
なのでこれ以降の工程では、画像のようにそのパーツ部分が納まるようにくり抜いたダンポールの台を作り、その上にのせて作業をしています。

穴の位置を写したところを荒らす

.銀面を荒らす。

穴の位置を写したところを荒らします。
銀面は接着力が弱いので、表面を荒らして(足付けして)接着力をアップさせます。

画像のようにカッターの先でガリガリと表面を剥がして起毛させ、ヌバック状態にしてしまいます。

中性洗剤で洗って脱脂

.プラスチックケースを脱脂する。

貼り合わせる前にプラスチックケースの裏面を脱脂します。

TPU製のケースはもともと弱い接着性なのに、さらに手脂まで付いていたらもっと弱くなるので、ケース裏面は確実に脱脂しておく。
脱脂方法は、溶剤を使ってしっかりと拭くか、中性洗剤でよく洗ってそのあとしっかりと乾燥させる。
今回は中性洗剤のほうで脱脂しました。

革製カバーにプラスチックケースを貼り付け

.革製カバーにプラスチックケースを貼り付ける。

この工程は、「接着剤」もしくは「両面テープ」のいずれかを使って、革製カバーにプラスチックケースを貼り付ける作業となります。
今回に関しては、以下のように接着剤(GPクリアー)を使用することにしました。
なお、両面テープを使う場合はこのままでいいですが、接着剤を使う場合は、上記工程3で丸く荒らしたところ以外(この時点で接着させる銀面部分)も荒らしておくといい。

●まず、革製カバー内側とプラスチックケース裏面が合わさる部分に接着剤を塗ります。ここでは革製カバー側だけに塗ります。
この時、上記の工程3で銀面を荒らした丸いところ以外の部分に塗ります(イラストでは黄色の部分)。
なお、塗り過ぎると横からはみ出しますので、全体に面で塗るというよりもイラスト(a)のように数カ所に点でのせるというようにするといいかも。
特にケース外側やカメラレンズの窓からはみ出すと完成度が低くなるのでそれは避けたい。
●そして、接着剤が乾く前の軟らかい状態の間に最終的な位置に合わせてすばやく貼り付けます。
なお、接着剤を盛る量次第ではありますが、イラスト(a)のように小さい面積(点)でのせても、そこそこの高さで盛ると、イラスト(b)のようにかなりビロ~ンと広がるはずです。
※このイラストは、ケース裏面での接着剤が広がる様子をイメージしやすいようにプラスチックケースを半透明化して描いてあります。

単行本をのせて重しに

●貼り付けたあとは、接着剤が乾燥するまでの間、ケースが浮かないように何か適当な重さのもので軽く均一に押さえておく、重すぎると逆に底部分が反ってしまう恐れもあるのであくまでも軽~くです。
ここでは単行本をのせておきました。
この際には、上記工程2・3でも使用したダンボール台の上に置いて、手帳カバーをフラットな状態にしてあります。

※ちなみに今回使用するGPクリアーは、接着する面の両方に均一に塗り、5~20分ほど乾かして固まった状態にしてから「シールのように貼り合わせて」圧着する。と言うのが最良の接着方法なのですが、この工程ではそれを無視して貼り付けました。
説明書で推奨された接着方法だと、貼り付けた状態のままで横に移動することが出来ないので微妙な修正が出来ない。とにかく一発勝負で位置決めしなければいけないというのがちょっと心配なので…。
ただ、説明書を無視した方法だと、乾燥するのにすごく時間はかかります。

以上、ここまでは[A]パターンも[B]パターンもほぼ同じ。
違うのは、ケースの底に開ける穴の形状(上部が面取りされているかいないか)だけ。


■ここからは、[A]パターンの点で留める作業。

上記の作業では、TPU素材のスマホケースの裏面と革製カバーの内側を面で貼り付けて固定させました。
ところで、上記で使用したGPクリアーの説明書を見る限りでは、用途欄にTPU素材は記載されてはいませんが、端のほうから無理にペラっと捲る(めくる)ということさえしなければ思った以上に強く貼り付いてくれてはいます。
下記の工程では、上記で接着した部分の周囲を点(小さな丸い円)で留めるという作業になりますが、周囲を留めるということは端からペラっと捲れるのを防ぐということにもなるので、TPU素材が説明書に記載されてない上記の接着剤でも多少は踏ん張ってくれるようになると思う。

それでは上記からのつづきです。

接着剤を充填して凹んだ様子

.ケースの底に開けた穴に接着剤を充填して固める。

●ケースの底に開けた穴に接着剤を充填します。
その充填する具合は、イラスト左側のように穴の最上部(スマホケース底板上面部のライン)ギリギリにまで注入します。なおこの時、穴の下部の隅まで確実に充填されていること。
●そのあと、丸1日(24時間)くらい乾燥させます。
●乾燥したらイラスト右側のように凹むので、もう一度同じように穴の上部ギリギリにまで注入し乾燥させます。なお、この2回目では入れ過ぎに注意。
乾燥後に、穴の最上部から上に頭が極端にとび出していたら、ケース内にスマホが入りにくくなってしまいます。どちらかというと乾燥後は多少凹みぎみのほうがいい。
●そして2回目注入のあとも、丸1日(24時間)くらい乾燥させます。長いようにも感じますが溶剤のあらましを揮発させるためです。これくらいの時間を乾燥させてもまだまだ接着はします。接着剤の表面は「粘着シール」のようにベタベタのままです。

今回使用したGPクリアー(1液タイプ)は、硬化する際に、溶剤が揮発して肉痩せします(今回で言うと凹む)。なので2回ほど注入させる必要がありますが、もし仮に、1回目の注入が丸い穴から横方向にはみ出ない状態のままギリギリ上方向に表面張力で山盛りに出来たとして、それが凹んでフラットになるのであれば1回の注入だけでも良いかもしれません。
逆に、1回目も2回目も注入量が少な過ぎたとしたら3回目も必要かもしれません。
この注入する回数は、1回に入れる量やケース底板の厚さ次第ではあります。

穴の中に接着剤を充填

ちなみにこの画像は、1回目を注入した直後です。多少表面張力で盛り上がっていますが、このあと溶剤が揮発すれば凹みます。

なお、乾燥させている途中は、接着剤が固まったかどうかが気になるとは思うけど、それでも絶対に触らないこと。特に指で触るのは手油で粘着力が弱くなるので本当にNGです。
また、2~3時間程度しかたっていない頃だと、触ったものに接着剤が付いてビヨ~ンと伸びてしまい そこでもNG(やり直し)となってしまいます。

プラスチックシートをカット

.プラスチックシートをカット。

このプラスチックシートは[A]パターンでの要となります。
今回は画像のように「スマホケースの底面とほぼ同じサイズのシート」を1枚だけ用意することにしますが、「ケースの底に開けた穴よりも少し大きいサイズのシート」を穴の数だけ(今回で言うと8枚)用意するというのでもいい。
いずれにしてもイメージ的には、穴の中に充填した接着剤を介して手帳カバーとプラスチックシートを一体化させ、そのプラスチックシート部分でスマホケースを押さえておくという感じになります。

なお今回使用のプラスチックシートは、PP(ポリプロピレン)製である厚さ0.15mm程のシートで出来たクリアファイルホルダーをカットしたもの。
厚すぎるとケース内が狭くなってしまうのでとにかく薄いほうがいい、ただ薄過ぎてヘナヘナしているのはNG…。
また、シート内面と接着剤表面との密着具合が見えるので透明なシートを使うと良い。もし不透明シートだった場合、完全に密着しているのかどうか中の様子が確認できないのでちょっと不安。

ちなみに、接着剤の説明書には可も不可も記載されていないPET(ポリエチレンテレフタレート)とPS(ポリスチレン)のシートでも試してみた。
まず、ペットボトルの材料でもあるPETは、PPなみにうまく接着出来ました。ただ、試したシートが厚さ0.7mmもあったので今回は使用しなかった。
次に、厚さ0.15mmの透明なPSシートでも試してみたけどこれは無理だった。どうやら今回使用した接着剤との相性は良くなかったようである。
PSはプラモデルの材料によく使用されているし溶剤で溶けるのでイケるかと思ったが、接着のシステムが違ったようである。また溶剤の種類にしてもPSを溶かさないタイプだったし…。
硬質な塩ビのシートでも試してみたかったが、GPクリアーの説明書には軟質の塩ビは接着出来ないと記載されいいたので硬質でも同じかなと思ってスルーした。なによりも手元になかったし…。

丸い部分の上を固いもので擦る

.プラスチックシートを貼り付ける。

接着剤の最後の注入から丸1日(24時間)ほど経ったら、プラスチックシートを貼り付けます。
この時、ゴム状に硬化した接着剤の量が、スマホケース底板上面部のラインとフラットもしくはそのラインから微妙に凹んでいる状態であればOKですが、はみ出している場合はやり直し。
ただ、はみ出していたとしても、そのはみ出し量が微妙な場合は、キレイに脱脂された待ち針などでチクチクと刺して中に発生している気泡を解放させてやれば、表面が沈んでフラットになる場合もある。

●まずプラスチックシートは、貼り付ける前に脱脂しておきます。ここでも中性洗剤で洗ってから乾燥させておきました。
●そして、スマホケースの底にキチンと納まるようにしてプラスチックシートを置きます。
また「穴よりも少し大きいサイズのシート」を穴の数だけ用意した場合は、それらを接着剤の丸い部分に置く。
●そのあと、「プラスチックシート下面」と「粘着シールのようになっている接着剤表面」が強く密着するように、丸い接着剤の部分をプラスチックシートの上から「何か固いもの」で擦ります。
なお、中の接着剤がすごく凹んでいる場合はシートが奥に届かないかもしれませんが、凹み具合が少ない場合だと、固いもので擦り続けているとその丸い部分のシートが皿のように下に凹んで接着剤表面に届く場合もあります。
透明シートの場合は中の様子が分かるので、丸い接着剤の表面部分を見ながら確実に接着させておく。
●このあと2~3日落ち着かせ、しっかりと貼り付いていることが確認出来たら完成です。

なお、環境によっては接着剤表面が乾燥し過ぎて貼り付かなくなる場合もあるかもしれません。
また、プラスチックシートおよび接着剤の表面に油やほこりなどが付いていた場合も貼り付きません。その場合はあきらめて、固まった接着剤をほじり出して途中からやり直すしかない。

ちなみに上記では、接着剤を固めて(溶剤を揮発させて)表面を粘着シールのようにし、そこにプラスチックシートを貼り付けることにしていますが、
テストの段階では、1回目の充填直後のまだ軟らかい状態のときにプラスチックシートを貼り付けるという方法を試みてみました。(この時はスマホケース底板上面部のラインギリギリに充填。)
その結果、接着剤がもう固まったかな…という感じになるまで1週間以上もかかりました。
つまり、容器の中に接着剤を保存したような状態となってしまうので、溶剤が揮発するのにすごく時間がかかってしまったということです。
しかも、やっと固まったと思ったら接着剤は縮んでしまい穴の中はスッカスカ状態…。
なので今回は上記のようにしました…。

※乾燥に時間をかけたくない場合は…

ちなみに上記の方法では、接着剤を分厚くしているので乾燥するのに丸2日(48時間)くらいはかかってしまいます。早く作業を進めたいのであれば接着剤を薄くする方法で…。
なおこの方法は、上記の作業が終わってから思いついたもの。今思うとこちらの方が良かったような気がしないでもない…。まあ、試していないので分りません。今のところはあくまでも想像の段階ですので…。

入れ子を挿入する様子

その方法はイラストの通り…
ケースの底に開けた穴の中に「穴の径よりも小さめで穴の深さよりも薄いサイズの入れ子」を入れるというもの。
これだと接着剤を薄くすることが出来るので乾燥時間も短く出来るはず…。また、溶剤が揮発したときの凹む量をさほど想定する必要もない。

入れ子の作り方は、まず最適な厚さの板を用意し、その板を穴あけポンチで抜くだけ。そしてその穴の中身の丸いものを使う。
その板の材質は、使用する接着剤と相性の良いもので、例えば今回で言うと、革・木・ゴム・相性の良い各種プラスチックなど。
上記の材質の中では革かゴムが抜きやすいので、そのいずれがいいと思う。

作業手順はABCDの順で…
A.「ケースの底に開けた穴よりも少し大きいサイズのプラスチックシート」と「入れ子」を穴の数だけ用意し。接着剤でお互いを貼り合わせる。
B. 凸状のパーツが出来る。
C. 凸状のパーツの凸部を下に向けた状態で穴に挿入し、穴の奥(手帳カバー内側)に接着する。
D. がその断面図。

※なお、入れ子だけを先に穴に入れてしまって、そのあと上記でのように1枚の大きいシートを貼る方法でも良い。

以上が[A]パターンでした。


■[B]パターンの方は…。

ちなみに、上記の[A]パターンよりもっと単純にしたいのであれば[B]パターンの方がいいかも…。ただこちらの方法も面倒ではあります…。

なお、[B]パターンでも[A]パターンでも上記の工程1~5まではすべて同じです。
だだ、スマホケース底板部分に開ける丸穴を「上に向かって広がっている穴(上部が面取りされている穴)」にする。というところは[B]パターンでの重要な必須条件で、そこだけは異なります。

※[B]パターンの方は、スマホケース底板部分の厚さが薄いと無理です。ある程度の厚さは必要です。
また、スマホケースの材質が柔らかすぎる場合でも[B]パターンは不向きです。

2液性のエポキシ系接着剤とホットメルト

この[B]パターンでは、プラスチックシートを使わずに、肉痩せのしない「2液性のエポキシ系接着剤」もしくは「ホットメルト接着剤」のいずれか1つをメインの材料として使います。
そして、このいずれかをスマホケース底板部分に開けた穴に充填することとなります。

なおこの[B]パターンでも、[A]パターンでの工程5のように「接着剤もしくは強力な両面テープで、革製カバーにスマホケースを貼り付ける。」という作業は同じように行いますが、
その際に接着剤をチョイスするという場合は、[A]パターンの時と同じように「GPクリアー」などを使うと良い。
「エポキシ系接着剤」だとTPU製スマホケースに全然付きません。

■上記接着剤の充填方法は…


接着剤がとび出してNGな様子

●「2液性のエポキシ系接着剤」の場合は、2液を混ぜたらすぐに穴に垂らして入れていく。
●「ホットメルト接着剤」の場合も基本的には穴に入れるだけ。下記にて詳しく。

なお、そのいずれの場合でも大事になることは、
まず上記[A]パターンでの工程3のように、革製手帳カバー内側の丸く穴を写した部分の銀面を荒らして(足付けして)おくということは必須です。
次に、穴の中に注入した接着剤が、周囲のテーパー部分全体に確実にかかっていること。かかっていないと何の効果もありません。そして穴の下部の隅まで完全に充填(接着)されていることも大事です。
さらに、穴の最上部(ケース底板上面)のラインから上に接着剤をとび出させないということです。
もしイラストのように穴の最上部から上にとび出していたら、スマホがケースに入りにくくNGになってしまいます。
とび出してしまったという場合は、とにかく何かを使い、がんばって修正するしかない。
ただ、低くすぎる(接着剤の量が少ない)というのもNGです。低いと耐える力が弱くなります。

ちなみに「2液性のエポキシ系接着剤」と「ホットメルト接着剤」のどちらが強いかは、それらのメーカーやグレード、また作業の具合によって違うかもしれませんが、自分の使用した接着剤でのテストではホットメルトのほうが革から剥がしやすかった。

ホットメルトを充填させた断面図

ホットメルトの充填方法…

イラストのように、とび出しているところと凹んでいるところが出来るように高低差を付けてホットメルトを穴に充填させます。

その入れ方は…。
グルーガンの先を革に押し付けるようにしながら溶けたホットメルトを穴に充填していくのですが、
まず中心部分に低く注入し、そこから「のの字」を描くように丸い穴の内側に沿ってドーナツの様に丸く高く注入していく。

そのあと、ホットメルトが熱々で柔らかいうちに、「下部の平たい金属」を使ってホットメルトの高い部分を押さえます。下記のイラスト参照。
そうすることで、その高い部分が低い所へなだれこんでいき、ホットメルトが穴の中に納まるように充填されます。それと同時にホットメルトの上面は平たくなります。

ホットメルトを押したときの様子

なおホットメルトを注入する量は、「金属」で押したときに穴からはみ出さないような量で…。

もし仮にはみだしたとしても、そのはみだした分が少なく、金属で押したときに高さ0.2mm以下くらいに出来るのであれば穴からはみ出ても全然大丈夫ではあります。
このホットメルトを注入する時の見極めは、職人のようなカンが必要かも…。

●左側イラストは理想です。これは、ホットメルトの注入量が満タンよりもちょっと少なめ位かなという状態で上から押したときの断面図。上部の中心あたりに空洞があります。
●右側イラストは、満タンよりもちょっとだけ多かったかなという状態で上から押したときの断面図。はみだした分の直径が小さくて高さを0.2mm以下に押すことが出来れば全然大丈夫。(但し、使用するスマホケースにもよります…。とりあえず作業する前には、スマホケースの底部分に0.2mm厚くらいの何か薄い物を敷き、そこにスマホを入れて窮屈具合を試してみるといい。)

とにかく大事なのは、ホットメルトが完全に溶けている状態で使用すること。溶け始めのまだちょっと硬めの状態では接着力は弱いはずです。
また、押さえるもの(底の平たいもの)は鉄などの金属で…。木やプラスチックだとホットメルトにくっ付いてしまう恐れがあるのでNGです。

ちなみに、上記の[A]パターンでは、ダンボールの台を使って革製カバーの平坦を保っていますが、ここでもその状態にすることは必要です。
ただダンボールの台だと、上から金属で押したときに潰れて凹んでしまうかもしれません。
なので、この[B]パターンでは、ダンボールではなくボール紙を使って台を作り、上からの圧に耐えれるようにした方がいいかも…。


ぶら下げた手帳型スマホケース

以上のように、あまり接着性の良くない「ソフトタイプ」のスマホケースを、革製の手帳型カバーに貼り付けてみました。

なお今回、手帳型カバーはスマホ1台分しか作っていないので1つのパターンでしか本番を実施していません。それが上記の[A]パターンでした。
[B]パターンに関しては、要らなくなったスマホケースと皮の端切れとでのテストではまあまあ出来たので、なんとかなるとは思います。
ただ、どちらが強いのかは分かりません。

ともあれ、まだまだ改良の余地はあると思うし完璧だとは思っていませんが、とりあえず今回作った分に関してはしばらく使ってみることにする。
まあ、接着剤が同じだった場合のただのベタ貼りよりも少しはましだと思うが…。
ちなみに、あたりまえではありますが、絶対に剥がれないというものではなく、無理な力が加わったり無理に引っ張って剥がそうとした場合は確実に剥がれるはずです。

いずれにしても、上記の方法で本番作業を行う前には、使用を考えている接着剤と、革製カバー・プラスチックシート・スマホケースとの相性はいいのかというのを、端切れや予備品などを使ってテストをしてみるということは必須。


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