経(タテ)糸と緯(ヨコ)糸とを互い違いに重ねながら織り上げてゆくと1枚の布になる。
それを自宅でも簡単に作れるようにしたのが卓上の手織り機です…。

卓上の手織り機と言えば、紙で作られたようなチープて単純な構造なものから、木製やプラスチック製のそこそこ複雑な構造のものまで色々と市販されていて、どれを使ってもちゃんと布は出来上がる。

それら卓上の手織り機で織られた布には、工業的に量産された布には出せない素朴な味わいが感じられるし、なによりも自分だけの一点物が作れるのはすごく楽しい。

今回は、その手織り機を作ってみようかと…。
作るのは2種類。
●すごく単純な構造のタイプ。
●そこそこ単純ではあるけど、長尺物を織ることも可能なタイプ。
いわば織物の入門機といったところで、2種類とも「綜絖」という“経(タテ)糸を上下に開いて緯(ヨコ)糸が通る隙間をつくる装置”が無いタイプです。
なお、●その他、必要な道具 も合わせて作っておきました。


■まずは、すごく単純な構造の「卓上手織り機」を作る。

コースターやちょっとした小物などの小さな織物が織れる簡易的な卓上手織り機…。
両サイドがフルオープンで、手に干渉するものが何も無い織りやすい構造です。

単純な構造の織り機の材料
■材料

【木の平板】… 小2本・大1本
【竹ひご】… 太さ4mm

【木の平板】 小は、幅30×長225×厚16mmに、
大は、幅45×長340×厚16mmに加工する。

その他、用意するもの。
【木工用ボンド】
【木ダボ(細い丸棒)】今回は使用するが、使っても使わなくてもどちらでもよい。

■作り方


.竹ひごを、20mmの長さにカットする(今回は43本)。

竹ひごを差し込むための穴を開ける位置

.小さい平板に、竹ひごを差し込むための穴を開ける。

ここでは、二つの小さい平板に竹ひごを差し込む穴を等間隔で一列に開けますが、一つには22ヶ所、もう一つには21ヶ所開けてある。
その理由は、穴の数を偶数と奇数にすることによって、竹ひごの位置が交互となるようにするため。

今回はすべて10mm間隔で、穴の大きさは竹ひごと同じ4mm、深さは5~6mmに…。

カットした竹ひごを穴に差し込む

.それぞれの穴に、カットした竹ひごを差し込む。

差し込む際には、竹ひごの差し込む部分をカッターナイフなどで適当に面取りします。そうすると穴に入りやすいので…。

木槌などで叩いて竹ひごを差し込む場合は、竹ひごの頭に“当て木”を置いて叩くと竹ひごの頭は割れにくくなります。

大きい平板に小さい平板2本を貼り付ける

.大きい平板の端に、小さい平板2本をボンドで貼り付ける。

なお、してもしなくても良いが、画像のようにボンドで貼り合わせた部分にさらに後ろから穴を開けて木ダボ(丸棒)を差し込んでおくとより強固になる。
このとき、大きい平板の穴は貫通、小さい平板は板厚の半分ほどの深さにしておく。

※ちなみに今回は、すべてのパーツをボンドで固定させたが、中心の大きい平板(縦の棒)を長めに作っておき、その上で小さい平板をスライドさせて長さの調節が出来るような構造(フリーサイズ)にするのも面白い。
そのようにすると、大きい平板の長さに合わせた織物が自由に作れる。

ボンドが乾いたら完成

ボンドが乾いたら完成…。

なお、下部のベースとなる大きい平板は2本にしたほうが安定するかもしれないが、できるだけ手に干渉しないようにと、今回は、センターに大きい平板が1本だけある構造にした。
1本なのでちょっと不安定なように見えるが、意外と安定している。ちなみに使用した木は比較的重たいケヤキです。
ただ絶対に動かないというわけではないので、どうしても固定させておきたいという場合は、テーブルの端に大きい平板部分をクランプで止めておくとよい。


■次は、長尺物を織ることも可能な「卓上手織り機」を作る。

このタイプは、基本的に小さな織物を織るための簡易的な卓上手織り機ですが、マフラー・ベルト・長めのタペストリーなど、ある程度の長さがある布を織ることも可能です。

長尺物を織ることも可能な卓上手織り機の材料
■材料

【木の角棒】30mm角×250mm(2本)
【木の板】 今回は6mm厚のMDF材
【寸切ボルト】 M6×約290mm(2本)
【蝶ナット】 M6(4個)
【座金(ワッシャー)】 M6(4個)

【木の角棒】は、このあとの工程1で、27mm角・長さ240mmに加工します。
なお加工が面倒な場合は、最初から25mm角ほどの角棒をつかっても全然良い。
もしくは、厚さ10mm幅25mm程度の平板を組み合わせる方法でも良い。詳しくは工程1にて…。

■作り方


巻き取り棒のサイズのイラスト

.“巻き取り棒”も兼ねた“糸掛け”を作る。

●まず、角棒をカンナを使って27mm角にし、ノコギリなどで長さ240mmに加工する。
●任意の面に、縦方向で幅6mm・深さ16.5mmの溝を掘る。
なお、この深さは角棒を27mm角にした場合です。
このあと(工程4参照)角棒の中心にM6のボルトを置きますが、このボルトが丁度27mmの中心にくる深さです。
ちなみに、この溝はトリマーで掘りました。
●そのあと、棒の角はすべて面取りしておいた。

※トリマーが無い場合は、10mm程度の平板を凹状になるようにボンドで張り合わせて角棒のようなものを作っても良い。(この棒の断面は絶対に正方形である必要はない。)

糸を掛けるための溝を掘る

.糸を掛けるための溝を、横方向に掘る。

上記の工程1で溝を掘った反対側の面に、幅1.8mm程度・深さ8㎜の溝を、横方向に8mm間隔で複数本掘る。ここでは、電動ノコギリで29本の溝を掘りました。

ちなみに、電動ノコギリの刃の厚さは1.3mmのものを使用。刃が多少ブレるので幅1.8mm程度の溝になりました。
※なお、電動ノコギリが無い場合は手動の糸ノコで溝を掘ってもよい。

側面にV字状の溝を掘る

.側面にV字状の溝を掘ります。

糸が引っかかり易くなるよう、側面にV字状の溝を掘ります。ここではトリマーで掘りました。

※なおトリマーが無い場合、ここは彫刻刀を使ってもよい。彫刻刀で掘っても最後にサンドペーパーで整えるときれいになるはず。

溝にボルト押さえの木を付ける

.溝の両端に“ボルト押さえ”の木を付ける。

●まず、溝の奥にボルトを設置する。
●ボルトを押さえるように厚さ6mmの木を溝の両端に差し込み、ボンドでその木を固定する。
※あとでボルトを抜きたいので、ボルトにはボンドが付かないようにする…。
●ボンドが固まったら、はみ出している要らない部分の木はカットし、サンドペーパーできれいに削って角棒の面と面一(つらいち)にする。

枠と桟のサイズ

.“枠”と“桟(サン)”を作る。

●まず、厚さ6mmのMDF板2枚をボンドで貼り合わせて厚さ12mmの板にする。
●そして、任意の形状の“枠”2個と、“桟(サン)”1個を作る。
【枠】のサイズは400×60mm。
上部のラインはイラストのように下に向かって湾曲させてある(真ん中部分を窪ませた形状)です。
その理由は、織る作業をするときに、糸を設置した“針”や“杼(ひ)”をタテ糸の横から入れやすいようにするため。
【桟】のサイズは240×55mm。
イラストのようにサイドを窪ませてあるのは特に機能的な理由は無く、あくまでもデザインです。
なお、両方とも周囲の角は面取りしておく。
●さらに、2個の“枠”の両端には、ボルトを通す6mmの穴を開けておく。なお、この6mm穴の所は下記のように横長の溝にしても良い。

穴と横長の溝の比較

穴でも、横長の溝でも良い…

長尺物を織る場合には“巻き取り棒”を脱着させることになりますが、そのときの使い勝手という点では、イラスト下側のように、6mm穴のところを横長の溝にしておいた方がボルトごと巻き取り棒を(蝶ナットも一緒に)脱着させることができるので作業はし易い。
しかし、アウトラインをスッキリとさせたかったので、今回はイラスト上側のように溝の無い6mm穴だけのデザインにした。ただし、ボルトや蝶ナットを抜き差しする手間が多くなり少しだけ面倒ではあるが…。
まあ途中で変更することも出来るし。とりあえずはこの6mm穴のままで使ってみようと思う。

ここはあくまでも好みです。とにかくどちらにしても長尺物は織れます。

完成した全パーツ

.以上で全パーツの完成。

上から
●“巻き取り棒”を兼ねた“糸掛け”
●蝶ナット・座金(ワッシャー)
●寸切りボルト
●枠
●桟(サン)

固定した枠と桟

.枠と桟(サン)を固定する。

2つの枠を桟(サン)でつなげるようにボンドで固定します。

巻き取り棒を設置すると卓上織り機の完成

.“巻き取り棒”兼“糸掛け”を設置すると完成。

“巻き取り棒”兼“糸掛け”の中心に寸切りボルトを通して枠に設置し、両端を蝶ナットで締めて固定したら完成です。

テーブルの端に固定して使用する方法

このようにすると…

画像のようにクランプなどを用いてテーブルの端に固定して使用する方法もある。
このように設置すると、手前が空中に浮いている状態になるので、そこそこ厚目の長い物を織っても大丈夫。
例えば厚目に作った長尺物をロール状に巻きつけていった場合そのロールは結構太くなるが、そのロール状に巻いた織物がテブールに干渉することはない。


■その他、必要な道具。

手作りした道具たち

織り機を使うために“必要な道具たち”も作っておいた。

左から
【持ち上げバー】【杼(ひ)】【織り針・大】【織り針・小】【くし】

【持ち上げバー】は、タテ(経)糸を交互に上下に分けてヨコ(緯)糸を通すための隙間をつくる時に使う。綜絖(そうこう)という道具の代わり。
【杼(ひ)】はシャトルとも言うが、ヨコ糸を右や左へと行ったり来たりさせるために使う。
【織り針】は、タテ糸を一本一本交互に縫うように(なみ縫いのように)しながら、ヨコ糸を右や左へと行ったり来たりさせるために使う。
画像の織り針は、木の棒をただひたすらサンドペーパーで削り、糸を通す穴をドリルで開けたもの。
【くし】は、ヨコ糸をトントンと手前によせて、布の締まりを良くするための道具。
画像のくしは、厚さ10mmほどの木の平板に等間隔で穴を開け、そこに短くカットした竹串を差しておいたもの。なおヘアケア用のくしや、フォークを使っても良い。


以上のように、簡易的な「卓上手織り機」を2種類作ってみました。

手作業で布を織るのはちょっと面倒なようではありますが、完成した布を想像しながらの作業は結構楽しいものである。
なお、今回作ったタイプよりも機能の多いタイプで、“綜絖”という装置のある織り機を使えばもっと効率よく布を織ることが出来るが、今回はこれで良しとしておこう。

ちなみに、今回作ったタイプは最も基本的な作りになっているので子供の知育にも最適ですね…。
もちろん大人でも十分に楽しめます…。

ところで、今回作った手織り機の使い方ですが、
それは 「卓上手織り機」を使って布を織る方法 のページにて…。


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